13TH

NETFLIXのドキュメンタリーが面白い。

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今日見たのは「13TH 憲法修正第13条」というアメリカの黒人差別を描いたドキュメンタリー映画だ。

冒頭に驚くべき数字を知らされる。世界中で拘束されている受刑者の25%がアメリカ国内にいるという。最初聞いた時には意味がよく分からなかった。

キング牧師の公民権運動により、アメリカの黒人差別は基本的には撤廃され、だから時折起きる白人警官による黒人射殺事件が大きなニュースになるのだと思っていた。なんと言っても黒人大統領が誕生した時代だ。しかし、実態は違うのだということがこの映画を観て初めて理解できた。

現在、アメリカの刑務所に収監されている受刑者の数は、なんと230万人もいるという。

その理由となっているのが、憲法修正第13条なのだというのだ。この条項は人種差別を撤廃するために作られたもので、すべての国民の人権を保障するものだ。

しかし条項には、「犯罪者はのぞく」という一文が入っている。そのため、黒人男性の1/3が生涯の間に一度以上刑務所に入れられる。白人の場合は17人に1人の割合だ。

アメリカの受刑者が増え始めたのはニクソン時代。ニクソンは「法と秩序」を訴え、多くの黒人を逮捕した。続いてはレーガン時代。麻薬戦争を政権の重要政策に掲げ、この時代に受刑者の数も急増する。

そして意外なのはクリントンだ。「犯罪者に甘い」というそれまでの民主党の弱点を克服して大統領になったクリントンは、3回犯罪を犯すと終身刑という新たな法律を作る。これにより受刑者たちの刑期は大幅に延び、全国に新たな刑務所が作られた。そして受刑者200万人時代を迎える。

さらに興味深いのは、アメリカの刑務所は民間企業によって運営されていることだ。

受刑者の増加により、刑務所関連ビジネスは急成長し、政治家たちに多額の献金がされている。刑務所ビジネスにとっては、受刑者の増加、刑期の長期化はビジネスの安定成長につながる仕組みだ。貧しい黒人やヒスパニックは些細な罪や時には無罪の罪で逮捕され、刑務所ビジネスを支える。

同時に受刑者たちは賃金の要らない労働力としても様々な企業で働いている。「現代の奴隷制度」だと作品は訴える。

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トランプ旋風や銃社会アメリカも同じ文脈の中にある。ちなみに、ウォルマートは世界最大の銃販売企業で、弾丸の収益だけでも莫大だという情報も興味深い。

最近になって、刑務所の肥大化が問題となり、GPSをつけて囚人を地域社会に戻す試みが始まっている。ここにも新たなビジネスが絡んでいるらしい。

資本主義の行き着いた先の真実。中国に「人権問題」の解決を迫るアメリカの姿に戦慄を覚えた。

日本で世界に通用するドキュメンタリーを作るとすると、テーマは「世界一の超高齢社会の真実」だろうか?

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