英国EU離脱

世界中が注目したイギリスの国民投票。結果は予想を裏切り、EU離脱派が勝利した。

最終結果は、離脱1741万742票(51.89%)、残留1614万1241票(48.11%)。投票直後に行われた世論調査ははずれ、市場は大混乱となった。安全資産とされる円が急騰、一時1ドル=99円台を記録。日経平均株価の終値は前日比1286円安の大幅な下げとなった。

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イギリス国民は、EC時代を含め43年に渡るEU加盟に終止符を打つ歴史的な判断を下した。

これを受けてキャメロン首相は辞意を表明した。キャメロン首相は2013年、国民投票の実施を公約していたが、離脱という結論は予想していなかった。

それだけ多くのイギリス国民にとって、移民問題が深刻な脅威になっているということが、今回の投票で表明されたのだ。東ヨーロッパから流入する移民によって職が奪われる労働者階級ほど、その脅威は看過できないものとなっていたのだろう。

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第二次大戦のあまりに大きな犠牲が産んだEUという共同体。

それはまさに人類の「理性」の賜物だった。国のエゴを控え、より大きなヨーロッパという枠組みを「理性」の力によって作り出そうとした壮大な実験だった。

長年敵対してきた独仏が中心となって始まった実験に、イギリスは最初から少し距離を置いていた。大陸から離れた島国という地理的な要因。それにより独自の文化と強いプライドが育まれた。通貨統合にも消極的で、ポンドへのこだわりを捨てなかった。そしてついにイギリスはEUからの離脱を決めた。

離脱派の代表格としてメディアに連日登場したジョンソン前ロンドン市長は、トランプ氏に風貌が似ている。イギリスの利益をすべてに優先する「イギリス・ファースト」の考え方。トランプ氏のアメリカ優先主義に似ている。

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各国が、己のエゴをむき出しにする世界。力で他国を支配する帝国主義の時代に逆戻りするのか。共産主義陣営が崩壊し、「理性」によって封じ込められていた宗教や民族主義が解き放たれた社会。戦後70年、ついにパンドラの箱が開けられようとしているのか。

理性によって自らを律する、他者の立場に立って考える、弱者を慮る、隣人と仲良くする。そうした戦後の国際社会が苦労して生み出してきた理想主義が、今あっさりと消え去ろうとしているように見える。

イギリスは今後、2年間の交渉期間を経てEUを離脱することになる。これはEUという壮大な実験の「終わりの始まり」になるのか。世界は再び先の見えない「エゴの時代」を迎えるのか。嫌な予感がする。

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