<吉祥寺残日録>今年最大のテーマは草刈り? #200520

岡山への帰省2日目。

義母は無事に退院し、思いのほか元気で、杖をつきながらスタスタと歩けるようになった。2ヶ月ぶりに自宅に戻り、嬉しそうだ。

妻は終日受け入れ準備に勤しみ、ようやく役に立てたことで、東京にいる時よりもはつらつとして見える。

人間、誰からの役に立つということが、生きる力の源泉になるとつくづく感じる。

私はと言えば、義母のお手伝いは特にすることもないので、朝からレンタカーを走らせて、伯母の農地を見に行った。

ぶどう畑にはすでにビニールのトンネルが作られていた。

温室やビニールハウスほどお金をかけず、露地でブドウを栽培する時、このトンネルを使う。

今は近所の人にやってもらっているらしいが、今年89歳になる伯母はつい数年前までこの作業を一人でやっていた。

トンネルの下では、もうすでにブドウの赤ちゃんができている。

でも、今回のテーマはブドウではない。

ぶどう畑から丘を少し上がると、桃の木が少し植えられた小さな畑がある。

伯母はもうこの畑まで世話する気がなく、放置されたまま、雑草が伸びている。

お墓の周囲にある小さな畑は、草が刈られていた。

一昨日、伯母が鎌で刈ったらしく、「肩が痛い」と漏らした。

数年前まで「スーパーおばあちゃん」だった伯母も、最近ではすっかり体力が衰え、以前のようにシャキシャキとは働けなくなった。

そして、去年伯母がぶどう作りをやめた畑。

一面の雑草に覆われていた。

「月一農業」を称して、去年私が大根などのタネを蒔いた極小の畑は、あっという間に見る影もなく雑草の海に飲み込まれていた。

「月一農業」の方は、コロナのせいで収穫前に中断してしまった。

育った大根は伯母が収穫して干してくれたらしい。

畦道に立って、雑草に覆われた畑を眺めていたら、隣の畑で作業していたおばさんが声をかけてくれた。

挨拶をすると、子供の頃の私を知っているという。

帰ってから伯母に確認すると、どうやら私が小学校で同級生だった男の子のお母さんだったようだ。

私は「ぶどうを作るのは無理でも、草ぐらいは刈らないと皆さんにご迷惑をかけるので」と話すと、母親と一緒に作業していた私の同級生の弟と思われる男性が草刈機について教えてくれた。

最近は肩にかける草刈機ではなく、耕運機のように押すタイプの草刈機を使っている人もいるという。私も以前、農業関係の展示会で見たことがある。

「50万ぐらい払えば、自分が乗って走らせる草刈機もあるよ」

私はそんな大それたことは考えていない。できれば軽い、電動式の草刈機が欲しいなと思っていた。

「草は刈ってもすぐに伸びるから、除草剤を使う方が楽だ。でも畦道の土手に薬をかけると、土手が崩れるからそれだけは気をつけて」

なるほど、土手の草には除草剤を使ってはいけない。初めて聞いた。

覚えておかないといけないことが、たくさんある。

最後に、向かいの山の斜面にある畑へ・・・。

ここにはミカンの木が植えてあるが、ため池から水が漏れだしていて、畑がすっかりぬかるんでしまっている。

県か市が管理しているため池らしく、伯母は以前ずいぶん文句を言っていたが、今ではもうこの畑まで来ることもほとんどなくなり、文句を言うのも諦めてしまったようだ。

畑の入り口に植えられた木には、夏ミカンの白い花が咲いていた。

放置したままでも、季節が来れば花が咲き、季節が巡れば果実を実らせる。

人間は、自然の恵みをただいただいているに過ぎないのだ。

畑を一回りして、伯母の家に戻る。

東京とは違い、人とすれ違うことがまったくない。

当然、マスクをしている人もいないため、コロナのことをすっかり忘れて気持ちが緩んでしまった。

「そういえば、マスクをするのをすっかり忘れている」

でも、ここではマスクをする方が、むしろ不自然な気さえする。

「隣の畑の人に声をかけられた」と伯母に伝え、草刈機の話をすると、近所の人が使わない草刈機をあげると言っていると伯母が唐突に話した。

私が草刈機を買おうと考えているのを知って、きっと近所の人に話したのだ。

私は電動の軽いやつを買いたいと思っていたのだが、伯母は「買わんでも、貰えばええが」というので、とにかく伯母にくっついて近所の家に行ってみることにした。

60過ぎのおっさんが、90前のおばあさんの後をついて挨拶に行くというのも、あまり格好の良いものではない。

その家のおじさんは、快く物置の中から草刈機を取り出して、私にくれた。

「もう長年使ってないから、動くかどうかわからんよ」

エンジン式のオーソドックスな草刈機のようだ。

伯母の家に戻り、早速チェーンソーで使用する混合燃料をタンクに入れ、紐を引っ張ってみた。

案の定、何度やってもエンジンはかからない。

「これは、ちょっと面倒なことになった」と私は思った。

田舎のことなので、「動きません」と言ってすぐに返すのも失礼な気がするし、実際に私のやり方が悪いだけのかもしれない。

とりあえず、草刈機を扱っているホームセンターで相談してみることにした。

ホームセンターには、私が望んでいたような電動式の草刈機が売られていた。

価格は2万円前後。

「やはり、お古をもらい受けるのではなく、最初から買えばよかった」

しかし、一旦近所の人からエンジン式をもらった以上、伯母の体面もあるだろう。新しいのを買ったから要りませんとも言えない。

私は店員さんに、「中古の草刈機を持ってくるとチェックしてもらえるか?」「もし新品を買う場合、古い草刈機を引き取ってくれるか?」と質問してみた。

店員さんの答えは、「見ることはできるが修理はメーカーに出さなければならない」「古い草刈機の引き取りはやっていない」というつれないものだった。

まあ、なるようにしかならないだろう。

別段急ぐ理由もないが、草刈りがにわかに私にとって「今年最大のテーマ」に急浮上してきた。

今回の滞在中に解決できるかどうか、予断を許さない。

参考記事

<月一農業>2019年12月/放っておいても大根は育っていた

吉祥寺@ブログ

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