<きちたび>ルクセンブルクの旅2019🇱🇺 欧州の小国はどうして「一人当たりGDP世界一」になったのか?

航空貨物とEコマース

ルクセンブルクが誇る多言語環境は、他の分野でも強みとなっている。

たとえば物流だ。世界銀行が発表した2016年物流パフォーマンス指標ランキングでは、トイツに次いで世界第2位の座を獲得したそうだ。2017年には日本のファナックがルクセンブルクに欧州配送センターを新設するなど、海外企業の進出も続いている。

その中でも私が面白いと感じたのが、航空貨物の分野だ。

こちらも本の中から引用する。

1970年に貨物専門の航空会社としてルクセンブルクで誕生したカーゴルックス航空は、急速に増加する大陸間貿易の受け皿の一つとして成長し、大型航空機による大陸間輸送を専門とする欧州最大の貨物専門航空会社となった。カーゴルックスのハブ空港であるルクセンブルクのフィンデル国際空港が設備、規模ともに拡大すると、スイスのパナルピナ、ドイツのシェンカーなど、世界の航空貨物大手がルクセンブルクに進出し、航空物流業界を形成した。

貨物専門航空のニーズに応えることを優先してきた同空港は、特殊貨物や専門性が求められる貨物の取り扱いを得意としている。一例を挙げれば、空港自体が医療・医薬品専用のGDP認証を取得し、温度管理などデリケートな取り扱いが必要な医薬品物流の業界からの信頼を得ている。また、大型船のエンジンやF1カー、競走馬など、個別対応の求められる貨物も多い。

「ルクセンブルクを知るための50章」より

こうした物流との関連で、Eコマース事業も強化している。

ルクセンブルクがEコマースをはじめとするインターネット企業の誘致に力を入れ始めたのは、2000年頃だ。政府はEUの電子署名指令、電子商取引指令を加盟国の中で最も早い2000年8月に国内法化する一方で、高スペックのデータセンターや高速通信網などに積極的に投資し、最先端のITインフラを構築した。政府の積極的誘致活動も奏功し、アマゾン、イーベイ、ペイパル、iTunes、楽天などのEコマース関連ネット企業がルクセンブルクに集積を始めた。当時はICTのイメージがなかったルクセンブルクだが、2005年の国連貿易開発会議による「ICT普及指標」レポートでは、世界180カ国と地域の中で第1位の座を獲得するに至った。その後、企業から通信費用の高止まりを指摘されると、政府はデータセンター・ネットワーク事業者ルクスコネクトを2006年に設立し、市場原理導入により通信価格相場の引き下げにつなげた。2009年には商用インターネット相互接続ポイントであるルーシックス(LU-CIX)を設立し、インターネット環境の改善に継続的に取り組んでいる。

「ルクセンブルクを知るための50章」より

さらに、フィンテックなどICTの分野も、ルクセンブルクが力を入れている今後の成長セクターである。

昨今「金融」と「テクノロジー」を掛け合わせた「フィンテック」が注目されているが、ルクセンブルクはこの分野でも先進的な取り組みを見せている。

その発展は企業側のイノベーション力もさることながら、金融監督側の知見や技術評価力に左右されるところが大きい。ルクセンブルクの金融規制当局である金融監督委員会(CSSF)は、ビットコインなどの仮想通貨を通貨と同等のものとみなす見解をいち早く発表し、翌年には欧州他国に先駆けて仮想通貨企業に金融当局が免許を発行した。これを受けて、日本のビットコイン大手ビットフライヤー社を含む世界の仮想通貨企業がルクセンブルクに進出している。政府のデジタル戦略「デジタル・ルクセンブルク」には「フィンテック」への取り組みが明記され、どうセクターの発展を加速させるため、政府と金融機関は2016年に「ルクセンブルク・ハウス・オブ・ファイナンシャル・テクノロジー」を立ち上げた。ペイメント、資産管理サービス、サイバーセキュリティー、人工知能によるマーケティングなど幅広い分野の新技術について、国内外のスタートアップや金融機関が自由にこうリュするプラットフォームを整えた。

ルクセンブルク政府は今、「トラスト・センター」を目指している。金融セクターのニーズに応えるには、ICT業界は当然高いセキュリティー水準が求められる。ルクセンブルクはその特性を活かし、重要なデータを安心して預けられる拠点としての価値を打ち出そうというのだ。高水準のデータセンターを含む最先端のICTインフラと、イノベーションに理解のある政府、そしてルクセンブルク大学のサイバーセキュリティー専門の学際センターなど、研究機関によるセキュリティ研究がその基盤だ。ルクセンブルク政府はサイバーセキュリティーや暗号技術への関心が高く、1999年に政府と大手金融機関が中心となって立ち上げた電子署名研究のコンソーシアムは、2005年に認証機関ルクストラストとして法人化された。以来、ルクストラストが電子署名のための公開鍵基盤を提供することで、政府や金融機関、その他の企業、さらに一般市民が安全な電子商取引プラットフォームを使うことができる。

2017年6月20日、世界初の「データ大使館」(データエンバシー)を設立する協定に、エストニアとルクセンブルクの両首相が調印した。ヨーロッパのICT先進国であるエストニア政府がデータ管理政策の一環で、国の重要なデータのコピーをルクセンブルクのサーバーに保管すると決定したことは、「トラスト・センター」ルクセンブルクにとって非常に大きな成果だ。ルクセンブルクのIT局長は「データ大使館というコンセプトは10年後には当たり前になるだろう」とコメントしている。

「ルクセンブルクを知るための50章」より

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