中華門

そろそろ帰国してから1ヶ月。南京のリポートも終わりにしなければ・・・。

第13弾は南京市街地の南にそびえる中華門だ。

中華門を訪れるのは夕方がオススメだ。南京の主な観光施設が夕方閉まるのに対し、中華門は夜8時半まで入場可能だからだ。しかも、昼と夜、2つの顔を見ることができる。

地下鉄の最寄駅は「中華門駅」。ただ駅名に騙されてはならない。駅から中華門まではかなり離れている。

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中華門駅を降りて、地下鉄(この辺りでは地上を走っている)の線路沿いに中山南路を北に向かう。特に何の面白みもない道なので少し不安になるが、気にせず歩くと城壁が見えてくる。

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城壁の手前に秦淮河という運河が流れていて、その運河沿いに遊歩道が整備されている。運河を渡りきったところに遊歩道に降りる階段があった。

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時間は夕方の6時20分。ちょうど夕日が沈もうとしている。近くから見ると、見上げる城壁はとてつもなく高い。

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城壁に沿って遊歩道を東に歩く。夕暮れのお散歩を楽しむ人たちとすれ違う。のどかな時間だ。

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運河の反対側には真新しい集合住宅が建てられている。その奥に見えるのは、2015年に開園したばかりの大報恩寺遺跡公園に建つ瑠璃塔だ。

この時は知らなかったが、今このブログを書くために調べていたら、南京大報恩寺の瑠璃塔は中世ヨーロッパで語られた世界七不思議の一つだった。全て陶器で作られた高さ80メートルの9層の瑠璃塔は、ローマのコロッセオ、アレキサンドリアのカタコンベ、万里の長城、ストーンヘンジ、ピサの斜塔、イスタンブールの聖ソフィア大聖堂と並ぶ世界七不思議に数えられたが、1850年の太平天国の乱で破壊された。

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これは中国のサイトに掲載されていた写真。再建するといえば日本人はかつての姿を忠実に蘇らせようとするが、中国の場合は違うようだ。

内部の写真がこちら・・・

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知っていれば、見に行きたかった。

そういえば、南京博物院に大報恩寺の一部が展示されていたのを思い出した。あの時は世界七不思議の話も知らなかったので、あまり関心を持たずにスルーしてしまった。

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これが瑠璃塔の跡から見つかった門だという。塔全体がこのような色彩豊かな陶器でできていたのだろう。

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大報恩寺を描いた絵も展示されていた。当時としては世界的にも貴重な建築物だったのだろう。

さて、話を中華門に戻す。

運河沿いにしばらく歩くと、中華門が目の前に現れた。

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知らなかったが、中華門は東門と西門に分かれていた。もともとこういう構造になっていたのか、自動車が増えたためこういう構造に変えたのかは不明だ。

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東門と西門の間に「中華門」と書かれた小さな門があり、その脇にチケット売り場らしきものがあった。ただすでにゲートが閉まっている。夜8時半まで入場できるという「地球の歩き方」の情報は間違いなのか。ちょっと愕然としながら、東門を通って城壁の内側に入ってみることにした。

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城壁の内側は街路樹が植えられ綺麗に整備されていた。そしてうれしいことに、こちらに入場門があり、まだ営業していたのだ。

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入場料は50元だった。すでに6時半を過ぎ、観光客もまばらだ。

中華門は想像していたのとは違い、何層にも門が連なる複雑な構造をしていた。「地球の歩き方」の説明によると・・・。

『南京の中華門は幅118メートル、奥行き128メートル。中国の現存する最大の城門だ。明代初期に周囲34キロ、13の城門を持つ南京城の正門として造られた。現在見られるのは清代に再建されたもので、1930年代には日本軍もここで中国国民党軍と戦った。』

確かに「南京大虐殺紀念館」の展示の中にも中華門での戦闘シーンがあった。

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中華門に総攻撃をかける日本軍歩兵第四十七連隊の決死隊。

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日本軍部隊が中華西門を占領。

もともと広大な平原が続く揚子江流域は中国の中でも最も豊かな地域であり、そのため古代から戦争が絶えず、巨大な城壁を築いて外敵の侵略に備えた。城だけを守る日本の城壁と違い、中国の城壁は街全体を守るために作られた。スケールが違うのだ。

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城門の中には様々な施設がある。例えばここ。武芸を競う舞台のようだ。

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数々の鉾が並び、周囲に重りのようなものが置かれている。詳しいことはわからないが、どうやらこういう風に使うらしい。

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何だか、「ドラゴンボール」に出てくる天下一武道会を思い出す。ちょっとユーモラスだ。

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門の裏には隠し部屋もあった。「蔵兵洞」と言って、兵士を隠しておく場所らしい。このような蔵兵洞が27もあり、3000人の兵士が配備されていたという。

単なる城門ではなく、中華門そのものが要塞なのだ。

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城壁に上がるための階段が設けられている。日が暮れて、提灯に灯りがともる。

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城壁の上は広いテラスのようになっていて、昔の武器がいろいろ展示されている。

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案内板には日本語の説明も書かれていた。

「古代中型進攻型戦車である。一発で数本の長箭を発射できる。騎軍と堅固な砦を攻撃できる」

続いては・・・

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「古代防衛性武器である。一般的には高所陣地に使われ、兵士の進攻方陣をかき乱せ、進攻の兵士に一定な殺傷力と威嚇力がある」

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「古代進攻型戦車である。巨箭又は小石塊を射出し、敵軍を攻撃できる。かつ、射撃の角度を調整し、射程をコントロールできる」

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「明代大砲」これは日本語の説明はなかった。

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「雷石」これも日本語の説明がないが、中国語では「雷」ではなく「石へんに雷」という字だ。

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「進攻型武器であり、城壁の破壊に適用される。人の戦力を殺傷する大型武器であり、方陣をかき乱せ、威力が巨大である」

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「進攻型武器であり、射程が遠く、精確度も高い。ある時も長箭に火薬を付け、ミサイルのひな形である」

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そして最後の武器は・・・

「トレビュシェットの一つ、攻城戦の武器である。より短い距離に石塊を投げ、砕石によって、砦及び城壁を守衛する兵士を攻撃し、砦を守衛する兵士に巨大な殺傷力をもたらせる」

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これらの大型兵器が並ぶのは中華門の上にある広大なテラスのような場所だ。ここからは南京の街並みがよく見える。

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城壁の上に回廊が幾重にも巡らされ、下から迫る敵兵を上から攻撃できるようになっている。

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城壁の外側はライトアップされ、夕闇に浮かび上がる。暑くもなく、寒くもなく、人も少なく、中国では珍しく静かな時が過ごせた。

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攻撃用に作られた城壁の凹みに照明が仕込まれ、幻想的な光景に変わっていく。大報恩寺の瑠璃塔もLEDが仕込まれているらしく、赤や緑など様々な色に変化していく。

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ライトアップされた南京城壁の天に月が昇った。これはまさしく漢詩の世界だ。

場所は多少違うが以前読んだ「石頭城」という漢詩に通じる気がした。

石頭城

山囲故国周遭在

潮打空城寂寞回

淮水東辺旧時月

夜深還過女牆来

この漢詩の意味などは「漢詩」という以前書いたブログを見ていただきたい。

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中国に来て、こんなに人が少ない場所にいたのはこの時だけだろう。

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赤い提灯が旅情をそそる。

そう思って、下に降りると・・・

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中華門のトンネルは凄まじい色の照明が仕込まれていた。この演出意図は何だろうか?

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遊歩道を逆に辿って中華門駅に向かう。

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秦淮河の橋を渡り、城壁を振り返る。水面に映える城壁の灯り。文句なく美しい。

あの中華門のトンネルや大報恩寺のライトアップも何とかならないだろうか。

美的センスの違いも外国旅行の楽しさではあるが、あまりに残念な気がしてならない。

夕暮れの中華門。

「地球の歩き方」のオススメ度は星2つ。私のオススメ度は星3つとしたい。

 

<参考情報>

私がよく利用する予約サイトのリンクを貼っておきます。

 

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