<きちたび>大規模デモに揺れる香港!抗議の標的となっている立法会に行ってみた

ついに、一部の若者が過激化してしまった。

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香港の中国返還22周年に当たる7月1日、「逃亡犯条例」の改正案廃案を求めるデモ隊の一部が立法会突入を試みた。建物のガラスを割り、数百人が庁舎内になだれ込んだ。

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議場を占拠した若者たちは、スプレーで抗議の落書きをした。

こうした破壊行為は、平和的なデモで世界中の共感を集めていた運動にダメージを与えるかもしれない。

政府側は、若者たちの暴走を止めることなく静観し、深夜になって大量の警官隊と催涙ガスを使って一気にデモ隊を排除した。一部の若者たちの暴走が、政府側の主張に正当性を与えそうな予感がする。

香港の抗議運動は大きな転機を迎えようとしている。

深センへの出張に合わせて、私も抗議活動の標的となっている香港の立法会に行ってみた。

先週、6月26日のことだ。

場所は、香港島の中心部。

地下鉄「金鐘駅」を降りてすぐ、大通りを渡る陸橋からテレビで目にした「立」の文字が見えた。

ここがデモ隊の標的となっている立法会の建物だ。

立法会は、香港政庁のビルの一角にある。

この特徴的なビル。そう、ここは今年の正月、年越し花火を見るために私が訪れた場所だった。

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私が訪れた日も、大阪G20に集まる首脳たちに向けてアピールするための抗議行動が呼びかけられていた。

立法会の周辺は、さぞ緊張しているだろうと思って、金鐘駅を降り立ったのだが、立法会前の道路は普通に車が通行していて、デモ隊も警官隊も見当たらない。

ちょっと拍子抜けしてしまった。

でもどこに公安警察がいるかわからない。

用心しながら、立法会の建物に近づく。

すると、立法会前の渡り廊下にたくさんのポストイットが貼ってあるのを見つけた。

「香港加油(がんばれ)」「撤回悪法」。

明らかにデモ隊が貼った抗議のメッセージだ。

破られてはいるが、明らかに「厚顔無恥」と書かれている。

その前に書かれていたのは、おそらく林鄭月娥長官の「鄭」の文字だろう。

抗議のメッセージは、階段にもびっしりと貼られていた。

立法会の建物をぐるりと回るように、渡り廊下を先に進んでみた。

歩く人たちは、この辺りのオフィスで働いている人たちのようだ。普段と変わらないような落ち着いた雰囲気で、警備の様子はまったくない。

中国政府と香港政庁の旗が掲揚された立法会の建物。

それを囲むフェンス沿いには、様々な横断幕やプラカードが置かれているのが見える。

「香港の恥」と書かれているのがわかる。

長官の即時辞任を求めたメッセージだろう。

「100%自由」「反送中 撤悪法」「釈放和平 停止暴力」。

意味がわかるメッセージも多い。

一方で、立法会の敷地内には、おびただしい数のバリケードが置かれているのにも気づいた。

この渡り廊下から付近の様子をしばらくうかがったうえで、道路に降りてみることにした。

近づいてみると、フェンスに付けられた白い物がたくさんのリボンだとわかった。

願いを込めて、このフェンスに結びつけたのだろう。

「SOS」「緊急」の文字も目に付く。

この男性は自らの顔をさらして、林鄭月娥行政長官の辞任を訴えていた。

電柱には、新たなデモを呼びかけるチラシだろうか?

「6.20 午後5時前」と書かれた紙が貼られていた。

6月16日の200万人デモによって謝罪に追い込まれた香港政府も、「逃亡犯条例」の撤回はいまだに約束していない。

だから、この政府の対応を不十分とするグループがデモを呼びかけ続けているのだろう。ただ、大勢の市民を動員し続けることは容易ではない。

歩道を進んでいくと、慰霊碑のような一角があった。

漢詩のような文章が書かれ、花が手向けられている。

警察官による暴力行為に抗議する写真入りのチラシも貼られていた。

権力と対峙することは大変勇気のいる行動だ。負ければ、抗議活動を行った市民が中国本土に送られ裁かれるリスクがある。

日本の警察と対峙する以上の恐怖があるだろう。

「2019.6.9 2:30PM」という日時が印刷されたポスター。

林鄭月娥長官の顔写真と「反送中」の文字が入ったこのポスターは、最初の大規模デモとなった6月9日の100万人デモを呼びかけたポスターのようだ。

すべては、このポスターから始まったのだ。

立法会の建物を一回りして海岸の方に出た。

海側から見ると、立法会=議会の建物だということがよくわかる。

そして、その建物の下に若者のグループが集まっているのに気づいた。

黒い服を着て、黄色い傘を持っている。明らかに抗議行動の呼びかけに応じて立法会に集まった若者たちだ。

抗議行動はこの日の夕方から行われる予定になっていた。

私が立法会を訪れたのは、午後2時ごろだったので、この時点では、集まっていたのはまだ数十人に過ぎなかった。ただ、警官隊が若者たちを排除する様子は一切なく、静観しているのが印象的だった。

私は仕事のため深センに行かなければならなかったため、彼らの抗議活動を直接目にすることはできなかったが、後ほど報道で聞いた話だと、この日の夜、立法会周辺には数万人のデモ隊が集結したという。

数万人集まれば立派なものだが、200万人の後の数万人というのは、中心メンバーからすると焦りを生み、7月1日の過激な行動へとつながったのかもしれない。

立法会の敷地を一歩出ると、そこには日常ののどかな香港の風景があった。

正月、私が年越しの花火を見たデッキでは、若者たちが海を眺めていた。

戦う若者と戦わない若者。

彼らの未来に何が待っているのか、香港の将来がとても気になった。

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