今、ポーランドのクラクフ空港でこれを書いている。
この国を離れるにあたり、なぜかトイレの話を書いておこうと思う。
クラクフ空港のトイレ
こちらがクラクフ空港のトイレ。まだ新しくとても綺麗だ。内装のセンスも洗練されている。
ただトイレの美しさについて書こうと思ったわけではない。このクラクフ空港のトイレが無料で使えることがどれだけ素晴らしいかを記録しておきたいと思ったのだ。
チェコでもポーランドでも、公衆トイレを使うにはお金がかかる。こちらではそれが常識だ。
トイレはタダと思っている日本人にはいささか戸惑いがある。
クラクフ中央駅のトイレ
上の写真は、クラクフ中央駅のトイレ。
入口にゲートがあり、2.50ズウォティ(75円)を入れないと中に入れない。
厄介なのは、紙幣を持っていてもダメだということだ。トイレに行きたくなった時のために、いつでも小銭を持っていなければならないのだ。
1週間の滞在でたっぷり小銭を溜め込んでいたので、今日は駅でもスムーズに用をたすことができたが、慣れないうちは何度か痛い目にあった。
プラハ城のトイレ
例えばプラハ城。
世界最大規模というこのお城を歩き回っている間に、妻も私もトイレに行きたくなった。
トイレを発見して飛び込むと、なんと入口におばさんがいて10コルナ(60円)払わないと使えないと言う。
小銭を持っていなかったので紙幣で払おうとすると理不尽にもダメだと受け付けてくれないのだ。
城内のカフェが近くにあったので両替を頼んでみたがあっさり断られた。
仕方なく小銭を手に入れるため、飲みたくもないエスプレッソを注文する。
エスプレッソ1杯90コルナ(540円)。街場の倍以上の値段だ。しかも紙コップ入りという手の抜きようである。
最小の紙幣100コルナ札で支払うと、10コルナコインが1枚がおつりとして手に入る。ちょうどトイレの使用料と同額だ。
このカフェ、どう考えてもトイレのおばさんとつるんでいるとしか思えない。
アウシュヴィッツのトイレ
かのアウシュヴィッツでも、トイレは有料だった。
ガス室で虐殺された多くのユダヤ人たちに思いをはせながらトイレに入ると、1.50ズウォティ(45円)と大きく書かた看板が掲げられていた。
二人のおばさんが入口に陣取り、まるでナチスの手先のように観光客から小銭を巻き上げるのだ。
ちょっと違和感を感じたので、アウシュヴィッツのトイレも撮影してきた。ユダヤ人の囚人たちのことを思えば贅沢は言えないが、特に何の変哲も無いトイレだ。
見学ツアーは通常7時間。観光客はここで用をたす以外に選択肢はないのだ。
アウシュヴィッツを訪れてトイレのことをブログに書く私のような者を出さないためにも、ここのトイレ代はツアー料金に入れ込んで見えなくした方がいいのではないだろうか。
余計なお世話ではあるが、私はそう感じた。
常識を疑え
そんなことを言いながらも、1週間あまり東ヨーロッパで過ごすうち、私の考えも少し変わってきた。
トイレは自動的にきれいになるわけではない。誰かが日々トイレを掃除してくれているからきれいなのだ。入り口で小銭を払うことにより、そうした忘れがちな事実に気づかされる。小銭にはそんな効用もあるのかもしれない。
「日本人は水と安全はタダだと思っている」と昔日本人の特殊性を指摘した人がいた。そこにトイレも加える必要がありそうだ。
日頃何の疑いも挟まず我々日本人が受け入れている「常識」も、世界に出ると違う見方が存在する。それを知ることは、海外旅行の大きな意義だろう。
今回の中欧旅行において、トイレがまさにそれだったように感じている。
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