🇮🇸 アイスランド/レイキャビク 2023年12月5日
今回アイスランドに行くことを決めてから、一番楽しみにしていたのが「ブルーラグーン」だった。
『世界最大の露天風呂』と聞くと、風呂好きの日本人としてはどうしても体験したくなってしまう。
こちらが冬の「ブルーラグーン」。
観光サイトからお借りしたものだ。
水色の濁ったお湯が周囲の雪と溶け合って、写真を見るだけで行かずにはいかない衝動を感じる。
私は今回の旅行前、日本から「ブルーラグーン」について調べて、チケットの購入も済ませていた。
ところがである。
あろうことか、予約した直後にアイスランドから火山噴火の危険性を伝えるニュースが流れてきた。
グリンダヴィークでは町の中心に亀裂が走り、全ての住民に避難命令が出された。
実はこのグリンダヴィークという町は、ブルーラグーンから一番近い町だったのだ。
おかげでブルーラグーンは一時閉鎖が決まり、私のところにも無料でキャンセルを受け付ける旨の連絡が入ったのだ。
今日現在、ブルーラグーンはまだ休業したままである。
このブルーラグーン。
実は天然の温泉ではなく、アイスランドが誇る地熱発電所から出た地下から汲み上げた温泉水を貯めたプールなのだ。
アイスランド最大の観光ポータルサイト「Guide to Iceland」に詳しい説明が書かれていたのでそれを引用する。
ブルーラグーンの歴史は1976年に遡ります。今でも見られますが、ブルーラグーンの隣にはスヴァルツエンギ発電所があります。地熱を利用した発電所で副産物として発生したお湯が地下へ流れず溜まったものがブルーラグーンなのです。ここに湧き出ていた天然の温泉ではなく、いわば人工的に発生したプール。なかには大変な環境破壊だと批判する人もいます。
確かにブルーラグーンとなった敷地は水没してしまいましたが、不幸中の幸いとも言いますでしょうか。この副産物の水は有害な成分を含んでおらず、皮膚病の治癒効果まであるというものでした。
天然温泉ではないものの、常に発生する温水のためブルーラグーンの水は常に入れ替わっており、全ての水が入れ替わるのに48時間かかると言われています。
スヴァルツエンギ温水発掘所は1971年に建設開始、1976年に運転開始となりました。アイスランドは長い間地熱や蒸気を利用してきました。地面にパンを埋めて蒸したり、蒸気や温水を引いて家を温めたりしてきました。スヴァルツエンギも、この温水を採掘するための施設で、200℃にもなる高温の温水を得ていました。ですが温水には海水が混ざりミネラルが多かったため、そのまま家や建物に供給するのには向いていませんでした。ミネラルが多いと、配水管を破損させる可能性があるためです。
そこでスヴァルツエンギで得た温水は、近くで汲んだ真水を温めるために利用することになりました。その暖めた真水を暖房のために供給するのです。
真水を温め終わった地下からの温水は、その後施設の外にそのまま廃棄されました。1226年の噴火で発生したと言われる溶岩の大地が広がっており、イットラフロイン(Illahraun)と呼ばれる場所でした。アイスランド後で「悪の溶岩」という意味があります。
比較的「若い」この溶岩の原野の石には多くの穴が開いており保水性には優れていません。地下から汲み上げた温水を捨て始めた当初はそのまま跡形もなく地面へ消えていったのです。しかしこの温水に含まれているシリカは冷えると水と分離する性質があり、やがて泥となって溶岩の岩の小さな穴を塞いでしまったのです。シリカの層は少しづつ厚くなり、温水は地下に排水されることなく池を形成するようになりました。
この池が今のブルーラグーンの原型です。シリカの様子は現在のブルーラグーンでも見ることができます。ブルーラグーンの周りは岩や木で囲まれていますが、陶器のような滑らかな白い物体に気づくと思います。これは固まったシリカです。
1981年、この得たいの知れない池で泳ぐ人が現れました。人々は懐疑的でしたが、疥癬を患わっていたヴァールル・マルゲイルソンは、皮膚の改善のためなら何でもしたいという気持ちでいました。
施設長からこの「池」に入る許可を得て入浴をするとヴァールルの皮膚はたちまち改善しました。彼はここをブラォア・ロニズ(Bláa Lónið)「青いラグーン」と名付けました。
1987年には一般の人向けの入浴施設がオープンしましたが、主に皮膚病を患う人向けでした。採掘所のすぐ隣に作られたこの施設は、シャワーとちょとした「ビーチ」があるだけの簡単なものでした。
豊かな温泉が湧き出るアイスランドでは、温水プールの文化がありブルーラグーンは一気に人気スポットとなりました。レイキャビクから簡単に行けるということも人気の一因でしょう。
1999年には採掘所から少し離れた場所にロッカールームと綺麗なシャワールームを備えた施設が建設されました。カフェやレストラン、ホテルもありスパとして生まれ変わりました。
この後もブルーラグーンは改修、改築、増築を重ねています。現在でもラグーンの面積を拡張したりホテルを建てたりと、姿を変え続けています。
引用:Guide to Iceland
温泉に影響が出るかもしれないと、日本では一向に進まない地熱発電所が世界的な人気露天風呂を生み出したという話は、日本人にも何か参考になりそうな気がする。
いずれにせよ、絶対行くぞと決めていたブルーラグーンに行けなくなり、私は相当がっかりした。
諦めきれない私は、別の何かがないかと調べ始めた。
現実的な代替案としてヒットしたのは2つ。
レイキャビク市内だけで7ヶ所もあるという地熱を利用した市営プールを試してみること。
もう一つは、2021年にオープンしたばかりの「スカイラグーン」に行ってみることだ。
まずは5日、朝の散歩のついでに歴史のある市営プールを覗きに行ってみた。
「Sundhöll Reykjavíkur」
ダウンタウンから一番近い老舗の公衆浴場ということで、屋上に露天風呂もあるそうだ。
外観は、趣のある古い建物とガラス張りの新しい建物を繋いで作られていた。
ガラスを通して見えたプールはまさに市民プールという印象だが、屋内には海水を使ったプールもあるという。
ただ、この日は咳が止まらず体調がイマイチで、午後にスカイラグーン、夜にはオーロラツアーが控えていたのでこの魅力的な市民プールはやめておくことにした。
そして午後2時、私はホテルから歩いてバスターミナルに行った。
「スカイラグーン」までの送迎バスを予約していたからだ。
時刻表を見ると、ブルーラグーン行きのバスにキャンセルの文字が。
スカイラグーンよりも遠方にあるブルーラグーンの方が儲かるはずだから、一時閉鎖はバス会社にとっても痛手に違いない。
スカイラグーンはレイキャビク近郊の岬の先端にあった。
バスターミナルからは15分、ブルーラグーンよりもアクセスしやすいのが売りだ。
とてもモダンなエントランス。
チケットは30分刻みの事前予約制で、いい時間はすぐに埋まってしまう。
私はこの日ここだけ空いていた14時半を予約。
3時間以内に出なければならない一番安いチケットである。
それでも6790クローナ、日本円で7000円ほどする。
中はまるでテーマパーク。
受付でチケットの確認をして、ロッカーの鍵をかけた腕輪を渡される。
この腕輪で施設内の支払いは全てできるようになっていて、飲食したり土産物を買っても出口でまとめて精算できる仕組みだ。
この後、更衣室で水着に着替え、温泉プールに行けばいいだけなのだが、どうも日本とは勝手が違い、タオルはどこでもらえるのとか戸惑うことも多い。
どうやら、タオルはお風呂から出た後にもらう仕組みらしい。
仕組みが理解できたところで、私もロッカールームで水着に着替え、シャワーで綺麗に洗ってから、いよいよ露天風呂へ。
ロッカールームは男女だけでなく、コースによって分かれているので、料金の高い「Sky コース」の人たちは別の入り口から温泉に入ってくるようになっていた。
最初は岩に囲まれた迷路のようになっていて、触ってみると本物の岩でできている。
スマホの持ち込みも可能で、私も濡れないようにジップロックにスマホを入れて持ってきた。
岩の迷路を抜けると、いきなり視界がひらけた。
大きな露天風呂はそのまま海へと繋がっているように見えるいわゆるインフィニティプールとして造られている。
目の前の海はレイキャビクの南側に広がる「スキャイザルアゥルヨークトル湾」。
この開放感は、ブルーラグーンにもないこの施設の売りだろう。
ワイングラス片手に海を見ながらおしゃべりをする。
そんな温泉の楽しみ方がここでは一般的なようだ。
温泉の温度は日本人にはぬるく感じられ、肩までお湯に浸かっていないと寒く感じてしまう。
でも熱いお湯が苦手なヨーロッパの人たちにはこのくらいの湯加減がちょうどいいようで、親しい家族や友人たちと大勢で来て、夜までお湯の中で語り合うのだ。
それにしても寒い。
人工的な滝が作ってあるため、あそこから熱いお湯が注がれているに違いないと思い、そちらの方向へ進んでいくとなんとだんだんぬるくなるではないか。
あれはお湯を供給しているのではなく、単に水を流しているだけのようだ。
こんなところに長居してると、風邪をますますこじらせてしまう。
伝統的な芝屋根のターフハウスの中には、氷河の雪解け水を利用した水風呂やオーシャンビューのサウナ、コールド・ミスト・ルームやスチーム・ルームもあるというが、今回はやめておこう。
とりあえずどんなところかはわかったので、短時間で切り上げてさっさとホテルに帰るに越したことはない。
そう判断し、私は30分も経たずに温泉から上がり帰り支度をした。
服に着替えて更衣室を出る。
そこにはショップやレストランがあり、腕輪を使えばなんでも買える。
そして出口にある機械で精算すれば、腕輪と引き換えにゲートが開く仕組みである。
私の場合、腕輪で何も買っていないので、ただそれを返却するだけ。
わずか1時間足らずのスカイラグーン初体験だった。
確かに家族や仲間と一緒にワイワイやるには楽しい場所だとは思ったが、ちょっとオシャレなスーパー銭湯という感じで、1人でゆったりという私好みの温泉とは程遠かった。
でも、レイキャビクから近いし、夜まで営業しているし、温泉に浸かりながらオーロラを見るなんてやはり贅沢な経験である。
ブルーラグーンの一時休業により、今レイキャビクを訪れる観光客の多くが代わりにこのスカイラグーンを訪れている。
一気に知名度が上がり、ブルーラグーンと人気を二分する有名観光地になることは間違いないだろう。
アイスランドでは、スカイラグーン以外にも各地に大自然と一体となって男女一緒に楽しめる温泉施設が次々に造られているという。
温泉大国日本でも、こうした水着で長時間居られるオシャレな温泉プールのような施設が出来てもいいと感じた。
