貿易戦争

投稿日:

またまたトランプさんが、世界に衝撃を与えた。

就任から1年が経ち、「トランプ慣れ」した世界も、「貿易戦争」という久々に聞く危機にはさすがに反応した。日経平均を一時1000円下落させたのは貿易赤字削減のために打ち出した2つの強硬策だった。

一つは、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課す輸入制限措置を23日から発動した。

トランプ政権は、カナダ、ブラジル、メキシコ、EU、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予した。なぜこれらの国が除外されたかは不明だ。

「同盟国」日本も当然制裁関税から除外されるものと楽観していた日本政府や市場は、完全に不意をつかれた。アメリカの貿易赤字に占める比率で、日本は中国、メキシコに次いで多い。対日貿易赤字解消に厳しい姿勢を示したレーガン政権を彷彿とさせる貿易戦争の時代が再びやってくるのか?

トランプ政権が打ち出したもう一つの強硬策は中国を狙い撃ちしたものだった。日経新聞の記事を引用する。

トランプ米政権は22日、中国による知的財産権の侵害を理由に、500億~600億ドル(5.2兆~6.3兆円)相当の同国製品に高関税を課す制裁措置を正式に表明した。大統領権限で強力に貿易制限をかける「通商法301条」を発動し、情報通信機器や機械など約1300品目を対象に25%の関税を課す。中国は強く反発しており、米中間の貿易摩擦は緊張の度合いを増してきた。

トランプ大統領は22日、米通商代表部(USTR)に中国の知財侵害に制裁関税を課すよう指示する大統領令に署名した。トランプ氏は「途方もない額の知財侵害に遭ってきた」と中国を批判。年3000億ドルを超える対中貿易赤字のうち、1000億ドルを削減するよう中国政府に求めたことも明らかにした。

知財侵害と認定したのは(1)米企業が中国進出時に技術移転を強要される(2)技術獲得を目的に中国当局の主導で米企業を買収する(3)サイバー攻撃で米企業の事業情報を得る――などだ。USTRは米経済の被害額を年500億ドルと断定した。

USTRは15日以内に制裁関税を課す中国製品のリストを作成する。約1300品目を想定しており、リスト公表後に30日間かけて米企業などから意見を募り、対象を最終確定する。制裁関税の発動までに2カ月近くかかるとの見方がある。

ホワイトハウス高官は22日、記者団に制裁対象の製品は、知財侵害の被害額と同規模の500億ドルと説明したが、トランプ大統領はその後に「600億ドルになるだろう」と述べた。USTRによると、対象製品に情報通信機器や航空宇宙機器などが含まれるという。

トランプ氏は22日、同時に米財務省に中国企業の対米投資を制限するよう指示した。同省は60日以内に具体策を決める。中国の政府系企業などが最新技術の確保を狙って米国企業を買収するのを避ける狙いがある。

トランプ氏はさらに、中国の知財侵害を世界貿易機関(WTO)に提訴するよう要求した。ただ、これまでもWTO提訴を繰り返したが成果が上がっておらず、同氏は「WTOには巨額の資金を拠出してきたが、我々にとって大きな不幸だった」と厳しく批判。政権は米国の独自法で制裁関税を課す通商法301条の発動を優先する考えだ。

通商法301条は1980年代の日米貿易摩擦時にも、日本に市場開放で譲歩を迫る材料として繰り返し使われた。ただ一方的な貿易制限を禁じるWTOルールに抵触する可能性が高く、歴代米政権は95年のWTO発足後は発動を控えていた。

トランプ氏は貿易赤字の削減を選挙公約に掲げており、中国製品の関税引き上げという実力行使に打って出た。同氏は支持率低迷に焦りを強めており、強硬的な通商政策で政権浮揚を狙う。ただ、中国の報復措置を招けば米経済の打撃は避けられず、トランプ政権にとって大きな賭けとなる。』

 

通商法301条。

懐かしい言葉だ。私が報道の世界に入った1980年代、日本製品がこの301条のターゲットだった。アメリカの労働者が日本製のラジカセや日本車をハンマーで叩き壊す映像が連日テレビで流れていた。

あれはレーガン大統領の時代。強いアメリカを標榜し、日本市場の開放を強く迫った。トランプ大統領は、レーガン大統領に自分を重ねる傾向がある。貿易赤字の最大の原因である中国を徹底的に叩く決意をしたのだろう。

中国は国内市場から、アメリカのグローバル企業の活動を締め出している。進出企業には、技術移転を強要され、類似の中国製品が世界市場に出回る。そして急成長した中国企業は技術を持つ外国企業を買収し、必要があればハッキングで技術を盗むこともある。まさに、今回の強硬措置の根拠となるような中国の不公正な貿易の実態は間違いなく存在する。

トランプさんがやることはいつも非常識だが、このまま中国を放置していると、世界経済が中国企業に飲み込まれてしまう恐れが確かにある。その意味で、私は今回の対中強硬策は必ずしも悪だとは思っていない。中国政府は対抗措置を取るだろう。米中の貿易戦争が本格化すれば世界経済に著しい打撃を与えることになると思うが、長い目で見れば必要なプロセスではないかと思っている。

自由貿易が世界経済を活性化させることは間違いない。しかし、グローバル企業の活動や税金逃れを含め、歪みも目立ってきている。世界経済が拡大することも重要だが、不公正な拡大はどこかで重大な問題をもたらす。

株価は調整局面に入るだろうが、それは必要な調整だ。経済が縮小する局面では、これまで隠れていた様々な問題が表面化してくる。ギリシャ問題の再燃もあるだろう。南米や中東などどこで危機が現れるか予測は難しい。

トランプと習近平の激突が、どんな結末を迎えるか?

身構えながら、目を凝らして推移を見守りたい。

コメントを残す