二日連続の痺れる好ゲーム。
WBCの決勝は、野球マンガさながら、何から何までシナリオライターが書いたような出来すぎの試合だった。
日本中を熱狂させた今年のWBCも今日でおしまい。
決勝の相手はアメリカ、大谷翔平のチームメイトであるトラウト率いるスーパースター軍団である。
メジャーリーグのMVPや首位打者などがずらりと並ぶ打線は誰もがホームランを打てる破壊力を持っていた。
決勝戦のオープニングセレモニー。
大谷とトラウトがそれぞれの国旗を掲げて、チームを率いてグランドに現れた。
試合前のミーティングで大谷は、「憧れるのをやめましょう。憧れてしまうと越えられない」とチームメイトに発破をかけた。
第5回を迎えたWBCの歴史の中で最もハラハラする伝説の決勝戦の始まりである。
日本の先発は今大会2度登板し好投した今永。
1回はトラウトにツーベースを許すも無得点に抑えた。
しかし2回、今大会すでに4本のホームランを放っているターナーにソロホームランを打たれ、先制を許す。
たった1球であっという間に得点を奪うアメリカ打線の洗礼を浴びた。
しかしその裏、先頭バッターの村上が初球をジャストミート。
ボールはぐんぐん伸びて右中間スタンド上段に突き刺さった。
嫌なムードが漂い始めていたところでの一発でゲームを振り出しに戻した。
前夜のメキシコ戦での決勝タイムリーに続き、絶不調だった村上が準決勝、決勝の大事な場面で目を覚ましたのは大きい。
さらに日本はヒットとフォアボールでチャンスを広げ、ヌートバーの内野ゴロの間にもう1点を奪い逆転する。
3回からマウンドに上がったのは戸郷。
2つのフォアボールでピンチを背負うもアメリカの強打者にヒットを許さず、3回4回を無得点に抑える。
こうしてピリピリした試合展開が続く中、4回裏、岡本和真が貴重なソロホームランを放つ。
これで、3−1。
結果的にこれが決勝点となる。
5回、栗山監督はチーム最年少の高橋宏斗をマウンドに送る。
高橋は2本のヒットを許すも2つの三振でピンチを乗り切り、無得点で凌ぐ。
6回は今大会安定感抜群の伊藤大海。
この試合でも1回を三者凡退に退け、2点のリードを守った。
伊藤にもう1回行ってほしかったが、栗山は7回のマウンドに若きクローザー大勢を送る。
大勢は先頭打者にストレートのフォアボールを与え、続くバッターにはヒット、ノーアウト1、2塁のピンチを招く。
一発が出ればたちまち逆転。
このヒリヒリするような場面をダブルプレーで凌ぎ、必死の継投でリードを守り抜く。
そして8回、マウンドにはダルビッシュ。
その裏で、大谷翔平がブルペンに向かう。
栗山監督が演出する夢のリレーが現実のものとなった。
しかし私は心配だった。
ダルビッシュはまだ本調子ではないし、アメリカの選手にとっては打ちやすいのではないか?
対戦経験のない日本のプロ野球で活躍する若いピッチャーの方が通じるのではないか?
そんな悪い予感は的中し、ダルビッシュは粘るシュワーバーにホームランを許し1点差に迫られる。
こうして小刻みな投手リレーでアメリカの強力打線を2点に抑えてきた日本。
9回のマウンドには大谷翔平が上がる。
泥だらけのユニフォームでリリーフのマウンドに立つなどまるで高校野球だ。
先頭打者をフォアボールで歩かせるが、続く1番ベッツをダブルプレーに打ち取りピンチの芽を摘む。
こうして2アウトランナーなしで打席に迎えたのは大谷の盟友トラウト。
誰もが待ち望んだ大谷vsトラウトの対戦が決勝戦の最終回、最後のバッターとして実現した。
まさに野球マンガの世界。
あまりにも出来すぎた巡り合わせに、思わず甲子園の決勝でのあの斎藤佑樹と田中将大の対決を思い出す。
真剣勝負であるスポーツでは、時々こうした偶然のドラマが起きる。
創作のドラマを超えた真実のドラマ。
大谷はフルカウントから見事スライダーでトラウトを三振に取った。
ゲームセットの瞬間、大谷は雄叫びをあげ帽子とグローブを投げ捨てた。
ベンチから選手たちが飛び出し、マウンド上で優勝の喜びを爆発させた。
侍ジャパンは、14年ぶり3大会ぶりの世界一を奪還したのだ。
この先長く語り継がれることになるであろう伝説の決勝戦。
そのスコアを記録しておこう。
ヒット数ではアメリカの方が日本よりも多かったことがわかる。
若い日本の投手陣が大崩れすることなくピンチをしのぎ、スーパースター軍団を相手に粘り強く投げたことを示している。
今大会の日本は運も味方していたように感じる。
パワーのあるメジャーリーガーを要する中南米の国々とあまり対戦せずに済んだことはラッキーだった。
日本が優勝した第1回、第2回大会に比べ、どこの国もメジャーリーガーの参加が増えてきた。
一方の日本も、看板だったスモールベースボールを脱してホームランバッターを多く要するチームに変身した。
投手陣の層の厚さは引き続き日本の強みだが、さらなるパワーアップが今後は求められるだろう。
ヌートバーのような多様性が、今後の侍ジャパンにはますます求められる。
大会のMVPは大谷翔平。
ピッチャーとして2勝1セーブ、バッターとしては打率4割の大活躍で、文句なしの選出だった。
13打点と大会記録で大会の打点王となった吉田正尚もベストナインに選ばれた。
しかし、今大会優勝の最大の功労者はやはり栗山監督ではないかと私は思う。
これまでの日本代表監督の中ではやや軽量で、栗山監督に決まった時には正直私は不安を感じていたのだが、栗山監督でなければ大谷やダルビッシュの参加は見込めなかった。
さらに日本では無名だったヌートバーを初の日系人プレーヤーとして侍ジャパンに招集したのも栗山監督の英断だった。
ヌートバーの加入は日本チームに明るさを与え、彼の「ペッパーミル」ポーズがチームを一丸とさせた。
そして実績のあるベテラン選手よりも伸び盛りの若手を積極的に選び、素晴らしい最高のチームを編成したその手腕には感服するしかない。
ただそれだけではない。
栗山監督はこれまでの日本代表のようにバントやスチールといった細かいサインをほとんど出さなかった。
自分が選んだ選手を信じ、監督が目立たないように黒子に徹した。
年寄りが幅をきかす日本社会で、栗山監督のチームづくりは大いに参考になるだろう。
大谷に始まり大谷に終わった今回のWBCだが、全ての選手が見せ場を作りイキイキと躍動したという意味で、栗山監督の仕事ぶりに最大限の賛辞を贈りたいと思う。
本当に最高の決勝戦、素晴らしい大会だった。
次は3年後、大谷は次回も出場したいと語っていて、アメリカをはじめメジャーの超一流選手たちの参加もさらに増えるだろう。
今回はアメリカの投手陣はベストメンバーではなかっただけに、次なるWBCは更なる激闘となるに違いない。
大いなる感動と興奮を与えてくれた史上最強の侍ジャパン、明日からの「侍ロス」が今から心配である。
<吉祥寺残日録>WBC2023⚾️ 決勝へ!花見酒に勢い与えたドラマのような侍ジャパンの逆転サヨナラ勝ち #230321
