総選挙と原発

総選挙が公示された。

小池さんの登場により、一気に盛り上がった今回の選挙だが、三極の構図が固まった後は面白くなくなってしまった。構図としては整理されたのだが、小池さんの人気が失速したため、与党有利の情勢は変わっていない。

やはり「排除」とか「さらさらない」とかという言葉は、どういう理屈があっても聞く者を不快にさせる言葉だ。小池さんの慢心と焦りがこの言葉を口にさせたのだろう。

NHKの世論調査でも、希望の党に期待する人は少数に止まり、枝野さんの立憲民主党と支持率が接近してしまった。自民党の支持率には遠く及ばない。風は止んでしまったのだ。

候補者は所詮、民進党候補者と新人ばかりで、風がなければ勝ち目はない。一旦止んだ風を再び吹かせるのは至難の技だ。

立憲民主党は民進党よりも戦いやすくなったかもしれない。立ち上げからわずか1週間で選挙戦が始まったが、ほとんどは民進党の候補者として準備してきた人たちだから、希望の党に比べると選挙慣れしていると考えられる。投票する人も安心して安倍批判票を投じられる。そこそこ議席を取りそうな感じがする。

注目は、希望の党が自民党に流れていた中道の票をどこまで取れるかということだ。ここが伸びないと自民党が漁夫の利を得る。安倍さんが解散を決断した段階で期待した「圧倒的勝利」が現実のものとなってしまう。その意味では小池さんにはある程度頑張って自民票を食い散らしてもらいたいとも思う。

ただ、小池さんが立たなければ、自民圧勝は間違いない情勢だったことを考えれば、選挙期間中に情勢の変化の可能性があるだけ面白くなったとは言える。

さて、そんな今回の総選挙でちょっと注目したいのが小池さんが小泉さんを取り込むために持ち出した「原発ゼロ」の方針だ。

安倍さんは一貫して原発について推進の立場だ。海外に原発の輸出をしようという強い意志を持っている。その背景にあるのは、原発により原子力技術を維持し将来必要な時には日本も核武装できるオプションを持っておきたいという考えがあるのだと私は考えている。

確かに原子力技術はまだ開発途上であり、将来的にはもっと安全で革新的な技術が生み出されるかもしれない。その時、世界のトップグループに入っていることは国の安全保障にも関わる重要なことだと考えているのかもしれない。

それはそれで理解できる。

一方、自民党が一貫して推し進めてきた「核燃サイクル」構想はとっくの昔に破綻している。「核のゴミ」問題もまったく解決できないままプルトニウムを増やし続ける現在の政策は、外国から見れば核兵器開発に転用する意図があると勘ぐられても仕方がないだろう。高速増殖炉「もんじゅ」をはじめ長年にわたって巨額の予算を投入した日本の原子力政策を一度リセットして、福島の教訓を活かす方法を考えることは絶対に必要なことだ。

そんな中、数日前フランスの通信社AFPがこんな記事を配信した。

「英洋上風力発電、原発よりも電気料金が安価に」という記事だ。引用する。

『 英国で、建設予定の洋上風力発電所から供給される電気の料金が、計画中の原子力発電所からの電気の料金を下回ることが明らかとなり、広大な原発の建設が疑問視されている。

ビジネス・エネルギー・産業戦略省は先月、新たな洋上風力発電所3か所の建設に伴う国の補助金受給のための入札結果を公表した。

イングランド(England)北部ヨークシャー(Yorkshire)地域の沖合に建設予定の世界最大規模となる洋上風力発電所「ホーンシー・ツー(Hornsea Two)」の建設は、デンマークの洋上風力発電大手ドン・エナジー(Dong Energy)が落札した。

ドイツのエネルギー関連会社イノジー(Innogy)とノルウェーの国営電力会社スタットクラフト(Statkraft)は、イングランド東部リンカンシャー(Lincolnshire)州沖での「トリトン・ノール(Triton Knoll)」洋上風力発電所の建設を、ポルトガルの風力発電開発会社EDPレノバベイス(EDP Renovaveis)とフランスのエネルギー大手エンジ―(ENGIE)から構成される合弁企業は、スコットランド(Scotland)マリー(Moray)沖での洋上風力発電所の建設を落札した。

これらの企業は、実際の発電量に対して国から対価が支払われるいわゆる「行使価格」に入札した。

イングランド南西部で建設計画中のヒンクリーポイント(Hinkley Point)C原子力発電所については、メガワット時あたり92.50ポンド(約1万3700円)の買い取り価格が確保されているが、新たな洋上風力発電所3か所のうち2021~2022年に操業開始を予定している発電所はメガワット時あたり74.75ポンド(約1万1200円)、2022~2023年が操業開始予定の発電所については57.50ポンド(約8600円)と、その価格は同原発よりもかなり下回っている。

同省の声明によると、新たな洋上風力発電所3か所の発電容量は合わせて、360万世帯に電力を供給するのに十分な3ギガワット以上となる予定。』

 

四方を海に囲まれた日本。海岸線まで深海が迫る場所も多く、ヨーロッパとは事情も違うが、原発に投下した予算を自然エネルギーに回せば日本は瞬く間に世界のエネルギー先進国になれるだろう。

風力だけに頼る必要はない。波力発電、潮力発電、地熱発電、そしてもちろん太陽光発電。日本は利用可能なたくさんの自然エネルギーに囲まれている。

自動車も一気に石油離れが進む時代である。「自然に優しい」という言葉が消費者の心を捉える時代だ。

中国が国家ぐるみで電気自動車開発を推進する一方、ドイツのメルケルさんは原発から自然エネルギーへの転換を進めている。原発に固執する安倍さんの政策は短期的には効果があるかもしれないが、長期的には日本の地位を落とすものだと私は考えている。

「世界一の自然エネルギー大国」を目指す。そんな腰の据わった政策をぜひ考えていただきたい。小池さんの政策はまだ本心が見えない。信用ができない。ただしたたかな小池さんは、それが得だと思えば、大胆な政策転換を打ち出すかもしれない。それこそ「しがらみのない政治」である。

憲法をはじめとして、今回の総選挙は日本のターニングポイントとなる選挙かもしれない。心して、投票したい。

 

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