新しい三国時代

明日から、年末年始の旅行に出発する。

目的地は、タイとニュージーランドだ。

タイのバンコクは、1980年代に2年ほど暮らした思い出の場所。そして、初めて訪れるニュージーランドは私にとってちょうど90カ国目の訪問国となる。

旅行を前に、2019年最後のブログを書き残しておこうと思う。

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年も押し迫って、中国の成都で開かれた日中韓首脳会議。

文在寅大統領との日韓首脳会談も1年3ヶ月ぶりに行われた。

大した成果はなかったが、首脳同士が定期的に会うことは隣国としてとても重要だろう。

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日本・中国・韓国の首脳が揃ったビジネスサミットの席で、安倍総理は、成都が三国志の蜀の都だったことを踏まえてこんなことを言った。

「日中韓)3カ国は三国時代の魏、呉、蜀ではないので、相争う者ではない。共に協力し『新しい三国時代』を築きたい」

安倍さんらしいキャッチコピー外交だが、せっかくなら本当に「新しい三国時代」を築いていただきたい。

平成から令和に変わった今年。

私は、皇室にゆかりが深い伊勢神宮や奈良を訪れた。

これまで知らなかった日本の古代史にも強い興味を抱き、関連本を少し読むようになった。

「渡来人とは何者だったか」

「伽耶は日本のルーツ」

今も、図書館から借りたそんなタイトルの本が我が家に転がっている。

日本人とは何者なのか?

本当に固有の民族だったのか?

天皇家は朝鮮半島から渡ってきて、先住民を征服した人たちではなかったのか?

まだ解明されていない日本の古代史には、日本と朝鮮、さらに中国との深い関係が潜んでいるように思える。

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隣国とは、どこの国でも過去を遡れば不都合な出来事も出てくるものだ。

大切なのは、それを政治的に利用して無用なナショナリズムを煽ることではなく、協力して正しい歴史を共有しようという努力だろう。

日本と中国と韓国。

巨大な中国を中心とした文化圏でそれぞれの歴史を紡いできた三国が、どんな新しい関係を築けるのか、難しい課題だけに大きなポテンシャルも感じるテーマだろう。

当然、三国のお国柄も全然違う。

例えば、行政と司法の関係。あまりにも顕著な違いがある。

昨日、東京地検特捜部が、自民党の現役代議士、秋元司議員を収賄の容疑で逮捕した。

IR事業参入を狙う中国企業「500.com」による贈収賄事件という見立てらしい。

現役の国会議員の逮捕は実に10年ぶり。

安倍政権になってから死んだように動きを止めていた最強の捜査機関がとりあえず動いたことは評価しながら推移を見守りたいと思う。

そんな日本に対して、韓国の検察は強力すぎるとされ、検察改革は文在寅政権の主要政策となっているが、そんなことにひるむことなく検察は曺国(チョ・グク)前法相の逮捕状を請求した。

歴代大統領を逮捕してきて、政権交代に大きな影響力を振るってきた韓国検察は今も健在だ。

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一方、習近平独裁体制が鮮明になってきた中国。

この国では捜査機関は全面的に政権の支配下にあって、政権の意向であれば、超法規的な逮捕も日常茶飯である。逮捕容疑さえ明らかにされないまま、今も多くの日本人が投獄されている。

香港での民主化デモも中国国内に拡大する気配はなく、ITを駆使した国民管理の先進モデルに一段と磨きがかかっているようだ。

こうして比較してみると、どこの国も問題を抱えている。

徴用工をめぐる最高裁判決をきっかけに日韓関係は今年一年、最悪の状態が続いたが、これもいつかは融和に向かうだろう。

米中対立の反動で、日本との関係改善に前向きな中国だが、これもいつまで良好な関係が続くかはわからない。来年の習近平総書記の来日までは少なくともお互いに関係悪化は避けると思われるが、本質的に相容れない部分に目をつぶっての交流はいつの日にか対立に変わるだろう。

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でも、安倍総理が発した「新しい三国時代」は単なる言葉遊びで終わってほしくない。

その実現に向けて最大限の努力する価値のあるテーマだと思っている。

私もそんな思いを抱きながら、今年もソウルに行ったり、杭州に行ったり、相手の国を少しでも理解するための旅をしてみた。

そしてこのブログにも、その時々の思いを書いてきたつもりだ。

私は普段、自分が書いた記事をほとんど読み返さないのだが、年の終わりにあたり、今年の初め頃に書いたいくつかの記事を読んでみた。自分が書いたことをすっかり忘れていることも多く恥ずかしいばかりだ。

そんな中で、改めて面白いと思った記事があった。2月16日に書いた「日本人なら絶対に知っておきたい韓国の歴史」という記事だ。

同名の書籍から興味深いエピソードを抜粋したものだが、その中で江戸時代の儒学者、雨森芳洲の言葉が印象に残った。

『その数多い著書のなかでも、藩主に朝鮮との外交の心得を説いた「交隣提醒」は名著で、次のような言葉で結ばれている。

「誠信の交わりとは、欺かず、争わず、真実を以って交わることである。それには、相手に面倒をかけないこと。従来の余勢による、惰慢の心を戒め、毅然たる態度が肝要である。さらに、相互の歴史を熟覧して、事の経過に精通して行かなければならない」』

そのほかたくさんのエピソードを引用した上で、2月の頃の私は次のようなことを書いていた。

『 従軍慰安婦や徴用工問題での韓国の反応は日本人を苛立たせる。

しかし、日韓政府が過去に合意したとは言っても、心の問題は簡単には解決しない。過去への反省を忘れたような発言が日本で出るたびに、古傷が疼くのだろう。そうした世論を無視できないし、政治家もそうした世論を利用して政敵を攻撃しようとする。韓国の国内状況は常に微妙だ。

加害者側から問題を終わらせるのは簡単ではない。

「天皇の謝罪」を口にした韓国の国会議長が日本で槍玉に上がっているが、あれは多くの韓国人の本音だろう。ひょっとすると、今の天皇陛下は政府が許せば韓国を訪れて、慰安婦の人たちの手を握り謝りたいという気持ちを持っておられるのではないかと想像する。しかし、政治がそれを許さない。おそらく日本の多くの国民もそれを許さないのだろう。

でも、天皇陛下がそれを望み、政府やメディアが過去の歴史を正しく国民に伝えれば実現できない話ではない気がする。

天皇訪韓。

私はその実現を願っている。』

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時代が令和に変わり、新しい天皇皇后に、「新しい三国時代」を築く役目を担ってもらいたいという気持ちがより強くなっている。

天皇が自分の意思で外国を訪問することはできないので、当然日本政府の判断が必要である。

天皇訪問が実現するような関係が隣国と作れれば、戦争の記憶から抜け出し、新しい時代に一歩踏み出せるような気がする。

恐らく、新しい天皇皇后も、自らの役目としてそんな日が来るのを切望されていると思う。

まずは来年訪日する習近平総書記が天皇陛下を中国に招くかどうか、注目していきたい。

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