それにしてもイライラする試合だった。
東京オリンピックも昨日で大会10日目。
この日私はずっとゴルフを見て過ごした。
松山英樹が3日目を終えて首位と1打差の単独2位の好位置につけ、最終組でメダルを争うからだ。
前半は短いパットを外してスコアを伸ばせず8番を終わった時点で首位との差は5つに広がった。
「今日は松山の日じゃないな」と感じ諦めかけたところで、9番、11番、12番、14番と立て続けにバーディーが来て通算16アンダー、残り4ホールの段階でトップと1打差まで追い上げる。
この調子ならメダルはほぼ確実、金メダルも夢ではないと私も俄然応援に力が入った。
しかし・・・やはりこの日は松山の日ではなかった。
続く15番、松山は1メートルの短いパットを外しまさかのボギー。
通算15アンダーで3位タイに後退する。
同じ3位でも、16アンダーなら単独の3位、15アンダーにはすでにホールアウトした選手が大勢いるのだ。
なんとしても、残る3ホールでバーディーを奪い、16アンダー以上にしなければメダルが危なくなる。
しかし、松山はバーディーチャンスをことごとく外し、結局後続を突き放すことができずトータル15アンダーで4日間のプレーを終えた。
優勝したのは、後半苦戦しながらもトップを守ったアメリカのサンダー・シャウフェレ(世界ランキング5位)。
父親は独仏のハーフ、母親は台湾で、祖父母が渋谷に住んでいるという多国籍のシャウフェレが男子ゴルフの金メダルを初めてアメリカにもたらした。
銀メダルが最終日に10打伸ばす猛追を見せたスロバキアのローリー・サバチーニ、私がゴルフに凝っていた頃に活躍していたベテランプレーヤーだ。
そして銅メダルの行方は、15アンダーで並んだ7人によるプレーオフに委ねられた。
7人の顔ぶれは、マスターズチャンピオンの松山のほか、全英王者のコリン・モリカワやローリー・マキロイなど錚々たるメンバーが揃った。
7人によるプレーオフというのを私は今回初めて見たが、4人と3人の2組に分け、18番ホールをもう一度プレーする。
第1組は全員がパー、2組目のマキロイとケーシーもティーショットを曲げ2打目は出すだけ、唯一フェアウェイをキープした松山がバーディーを取ると銅メダルが決まる可能性が高まった。
しかし、ピンを狙った松山の第2打はグリーンをオーバーし球が見えないほどの深いラフに止まった。
結局このホール松山はボギー、この段階で銅メダルの夢は絶たれた。
誰よりもメダルに近いところにいた松山が最初に脱落したのだ。
驚いたのは、放送権を持つNHKが松山がパットを外した瞬間に中継を打ち切ってしまったことだ。
他の競技を中継するのではなく、スタジオのどうでもいいトークに切り替えてしまったのだ。
「えっ?何?プレーオフやらないの?」
銅メダルをめぐる前代未聞7人のプレーオフはマキロイもモリカワも脱落し、結局台湾の伏兵・潘政琮が勝ち、台湾にメダルをもたらしたという。
日本選手のメダルラッシュもここに来てちょっと中だるみになってきた。
かつてはメダルを取った競泳のメドレーリレーも今は決勝進出が精一杯のようだ。
競泳の最終日に行われた男子メドレーリレーでは日本新記録をマークしたが順位は6位だった。
あの北島康介や松田丈志を擁して銀メダルを獲得したロンドン大会の時よりも今の日本チームはタイムを上げている。
しかし、世界のレベルはさらに上がっているのだ。
女子メドレーリレーも決勝に進出したがこちらは8位。
それでも池江璃花子はこう語った。
「1度はあきらめかけた東京五輪だったんですが、リレーメンバーとして決勝の舞台で泳げて、すごく幸せだなと思います」
レース後流した彼女の涙は、すでに次のパリオリンピックを見据えている。
エペに続き、得意のフルーレ団体でもメダルを目指した日本は、惜しくも3位決定戦で敗れメダルを逃した。
それでもかつてはメダルなど無縁だった競技が世界と戦えるレベルまで育っている。
強くなる競技には、きっと強くなった理由が必ずあるのだ。
自転車の新種目BMXフリースタイル・パークでは、国際大会で数多くの優勝を果たした19歳の中村輪夢にメダルの期待がかかった。
この中村くん、顔が私の孫に少し似ているので応援していたのだが、残念ながら結果は5位。
それにしても初めてみるBMXという競技の魅力は半端ない。
フリースタイルも面白いが、スピードを競うBMXレーシングはとてもスリリングで目が離せなかった。
若い人たちが伝統的なスポーツよりもこうした新競技に惹かれる理由がわかった気がする。
もう一人、昨日私が注目した選手が、卓球女子団体に出場した平野美宇である。
リオ大会では補欠となり、同世代の伊藤美誠がメダルを取る瞬間を見守った。
その後、中国選手を次々に倒してアジア選手権で優勝する快挙を成し遂げ一時代を築いた平野。
しかし目標だった女子シングルスでの東京オリンピック出場は叶わなかった。
そんな平野がついにオリンピックに登場した。
初戦のハンガリー戦では石川佳純とのダブルスで勝利、3試合目ではシングルスで戦い相手を圧倒した。
やっぱり私は平野美宇のファンである。
弱々しい彼女の表情や身振り、そしてちょこまかとした小走りがたまらなくかわいくて、ついつい応援したくなるのだ。
東京オリンピックも後半戦に入ったが、まだまだ有力選手が控えている。
果たして日本はどこまでメダル数が伸びるのか?
そして大躍進が予想される中国は、メダル数でアメリカを抜いて世界一の座を奪うのだろうか?
昨夜行われた陸上男子100メートルの準決勝で、中国の蘇炳添(そへいてん)が9秒83の驚異的なアジア新記録をマークした。
日本人選手がついに9秒台に突入したと大騒ぎしている間に、中国はアジアの常識を超え、世界のトップへと駆け上がっていく。
そして決勝を制したのはイタリアのジェイコブス、タイムは9秒80だった。
ボルトを筆頭としたジャマイカの時代は去り、「世界最速の男」の行方はまさに混沌としてきた。
オリンピックの見所はこれからもまだたくさんある。
楽しみで仕方がない。
でも私は今日、介護を目的に岡山に帰省する。
まるでそれに合わせたように、県境を跨いだ旅行や規制の中止を求める提言を全国知事会が発表した。
オリンピックの盛り上がりに歩調を合わせるようにコロナの感染が急拡大している。
再び我慢の夏がやってくる。
