カルテル・ランド

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きのうに引き続きメキシコ関連のドキュメンタリーを見た。NETFLIX上にあった「カルテル・ランド」という1時間40分の大作。2015年の作品だ。

アメリカ市場に売りさばくために麻薬を製造する麻薬密売組織「カルテル」。メキシコ国内にはこのカルテルに支配され暴力が日常化している地域があるという。国境から1700キロ離れたミチョアカン州。政府の取り締まりはカルテルに支配されたこの地域にはなかなか及ばない。殺人や強盗、強姦が蔓延し命の危険にさらされた住民たちが武装自警団を組織した。

そのシンボル的存在となったのが外科医のホセ・マヌエル・ミレレスだった。彼と仲間たちは銃をとり、カルテルに支配された町をひとつずつ解放していった。リーダーの外科医は住民を集め、彼らの活動を説明し協力者を募った。

やがて彼らの活動はメキシコ中で有名になり、自警団メンバーの数はどんどん増えていった。自警団はカルテルメンバーの居場所を襲い激しい銃撃を加える。カメラはその一部始終をとらえる。組織化されていない銃撃戦はいつ何が起きるか分からずハラハラする。

ところが、メンバーが増えるにしたがって、自警団による事件も増えてきた。自警団がカルテル化したのだ。住民からも自警団に対する不満の声が出始める。

こうした動きに対して、メキシコ政府は自警団が武器を持つことは違法だとして彼らに武装解除を呼びかけた。さらに政府は、自警団を解散し警察と合流することを提案する。この提案により、自警団内部で意見対立が深刻化する。一部のメンバーが政府の提案に同意し、自警団のTシャツを脱いで、警察の制服をきる道を選んだのだ。

これに反対した外科医は、カルテルからも警察からも自警団からも命を狙われていると感じるようになる。そして、今彼は武器の所持容疑で逮捕されて刑務所に服役していると言う。

ミチョアカン州の自警団と並んで、この映画では米アリゾナ州の自警団にも密着している。アメリカへの不法移民もカルテルが組織的に送り込んでいるという。カルテルのメンバーは武装し、地元住民が巻き込まれる事件も多発している。無人地帯が続くアリゾナの国境地帯では、警察を呼んでも到着するまで何時間も時間がかかる。自分たちで守るしかないと有志が自警団を立ち上げ、完全武装でパトロールを行なっている。違法移民を発見すると拘束して警察に引き渡す。

トランプ大統領の誕生で脚光を浴びたメキシコとの国境。そこにはただ自由を求めてアメリカに逃げ込む無垢の市民というだけではない現実があることを知らされた。大変な危険が伴う貴重なドキュメンタリー作品だった。

 

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