アジアの財閥

日経電子版にアジアの財閥についてのスペシャル記事が載っていた。どうやら日経新聞が1日から始めた「日経アジア300指数」という新しい株価指数に絡んだ記事のようだ。

以下、「アジアの財閥、歴史の荒波くぐり成長  Asia300 同族経営の光と影 」と題された記事をそのまま書き写した。

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『アジアの主要33財閥とその一族は、いずれも長い歴史を抱えている。生まれた国や地域に根ざし、一族で時代の荒波をくぐり抜けて成功した企業が目立つ。

フィリピンの「小売り王」。そう呼ばれるSMグループ会長のヘンリー・シー氏(91)は、米経済誌フォーブスが発表するフィリピンの富豪番付で、2016年に9年連続の首位を守った。一代で巨万の富を築きあげた立志伝中の人物だが、原点は首都マニラで立ち上げた小さな靴屋(シューマート=SM)だ。

ヘンリー・シー氏は中国・福建省の貧村生まれ。12歳でフィリピンに移住、第2次大戦の戦禍で荒廃する同国で安い靴を販売し始めた。そこから商品を拡大し、またたく間に巨大百貨店へと発展させた。彼が目を付けたのは、高温多雨なフィリピンの気候だ。空調を備えた米国流の商業モールを全国展開したところが人気を博し、現在の地位に上りつめた。

■地域性生かして成長し、多角化につなげる

SMグループの巨大商業施設「モール・オブ・アジア」は東京ドーム8個分の広さを誇る(マニラ首都圏)=ロイター
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SMグループの巨大商業施設「モール・オブ・アジア」は東京ドーム8個分の広さを誇る(マニラ首都圏)=ロイター
アジア財閥の成長過程を見ると、当初は現地特有の事業で経営基盤や資本力を高めて、不動産や金融事業に多角化するパターンが目に付く。たとえばインドネシアのシナルマス・グループは、熱帯雨林が生い茂る気候や風土を生かし、紙パルプやパーム油の事業から発展。同国の経済成長に伴い大規模都市開発などに乗り出し、事業領域を広げていった。

中核事業には地域性も色濃くにじむ。韓国や台湾の財閥にはサムスングループのように製造業を中核に据える企業が多いが、東南アジアの財閥は今もプランテーション事業や製糖業などを営む傘下企業が目立つ。東南アジアなどに渡って成功した華人系財閥が多いのも特徴だ。

歴史の波に翻弄された財閥も少なくない。インドネシアのサリム・グループは、創業者のスドノ・サリム氏が1950年代に軍の物資供給業者として台頭。故スハルト大統領との親密な関係も生かして優先的に事業拡大を進めた。ところが、97年のアジア通貨危機で主要企業が政府管理下に入り売却されるなど、グループ解体の危機にひんした。その後、三男のアンソニー氏が食品事業を軸に経営を立て直し、再び成長軌道に乗せた。

一方、インドは独特の財閥群を形成している。タタ財閥の創業家はゾロアスター教徒(拝火教徒)で、大英帝国統治下のインドで貿易を元手にのし上がった。アディティヤ・ビルラ財閥の原点は「マルワリ」と呼ばれる行商人。インド独立の父、マハトマ・ガンジーを財政面で支援したことでも知られる。

アジア財閥の成長の道のりを振り返れば、短期間で急速な経済発展を遂げ、政治や社会も大きく変貌したアジアの激動の歴史が見えてくる。

(伊藤学)

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◇ ◇

アジアの主要33財閥の成り立ちと概要は以下の通り。

インドネシア
シナルマス
華人のエカ・チプタ・ウィジャヤ氏が創業。インドネシアの気候を生かした紙パルプやパーム油の事業から大規模都市開発などの不動産事業や金融事業に拡大した。
ファミリー名 ウィジャヤ一族 中核分野 不動産、金融、紙パルプ
主要上場企業
ブミ・スルポン・ダマイ(BSD、不動産) ゴールデン・アグリ・リソーシズ(パーム油)
シナルマス・ムルティアルタ(金融) インダ・キアット・パルプ・アンド・ペーパー(製紙)
サリム
インドネシア最大の財閥。創業者のスドノ・サリム氏は華人で、1950年代に軍の物資供給業者として台頭した。アジア通貨危機後にグループ解体の危機を迎えるが、2代目のアンソニー氏のもと復活した。
ファミリー名 サリム一族 中核分野 食品、自動車、インフラ
主要上場企業
ファースト・パシフィック(持ち株会社) インドフード・スクセス・マクムル(食品)
PLDT(通信) メトロパシフィック・インベストメンツ(複合企業)
リッポー
銀行マンだったモフタル・リアディ氏が金融事業を柱に成長。不動産へと中核事業を転換し、現在は20以上の上場企業を持つ。三井物産や三菱商事とも提携する。
ファミリー名 リアディ一族 中核分野 不動産、小売り、病院、IT
主要上場企業
リッポー・カラワチ(不動産) オーバーシーズ・ユニオン・エンタープライズ(OUE、不動産)
マタハリ・デパートメント・ストア(小売り)

マレーシア
ゲンティン
1965年創業。カジノを中心としたリゾート開発で成長し、米国などでも事業に乗り出す。パーム油など農園事業も手がける。
ファミリー名 リム・コックタイ氏ら 中核分野 カジノリゾート、農園
主要上場企業
ゲンティン(ホテル・カジノ) ゲンティン・プランテーションズ(農園)
ゲンティン・シンガポール(ホテル・カジノ)
マレーシア・シンガポール
ホンリョン
金融事業を中核に発展した華人系財閥。不動産事業も拡大しており、東南アジアのほか、欧米や中国、日本などでもホテル・商業施設の開発を手がける。
ファミリー名 クエック・レンベン氏ら 中核分野 金融、不動産、ホテル
主要上場企業
ホンリョン・フィナンシャル・グループ(金融) シティ・デベロップメンツ(不動産)
ミレニアム・アンド・コプトーン・ホテルズ(ホテル)
香港・マレーシア・シンガポール
クオック・ケリー
マレーシア出身の華人実業家、ロバート・クオック(郭鶴年)氏が創業。製糖業で財を成し、ホテル事業やパーム油事業などに拡大した。
ファミリー名 クオック一族 中核分野 パーム油、製糖業、ホテル
主要上場企業
ウィルマー・インターナショナル(パーム油) PPBグループ(製糖業)
シャングリラ・アジア(ホテル)

シンガポール
UOB
ウィー・チョーヨー名誉会長の父、故ウィー・ケンチャン氏が設立。チョーヨー氏がシンガポールの「銀行王」と呼ばれた巧みな経営手腕で続々と買収を手がけ、巨大グループを築いた。金融を中核に不動産やホテルなどを手掛ける。
ファミリー名 ウィー一族 中核分野 金融、不動産
主要上場企業
ユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB、銀行) UOLグループ(不動産)
ユナイテッド・インダストリアル・コーポレーション(不動産)

台湾
台湾塑膠工業(台湾プラスチック)
化学や石油精製を手掛け、DRAM大手の南亜科技も傘下に置く。ベトナムで建設中の大型製鉄所に地元の反対運動。
ファミリー名 王文淵氏ら 中核分野 石油化学、繊維、電子部品
主要上場企業
台湾塑膠工業(石油化学) 台塑石化(石油精製)
台湾化学繊維(繊維)
統一企業
即席麺や菓子、飲料などの食品大手。台湾でセブンイレブンを展開し、日本のヤマト運輸と組み宅配便事業も手掛ける。
ファミリー名 羅智先氏(創業者の高清愿氏の娘婿)ら 中核分野 食品、小売り、外食
主要上場企業
統一企業(食品) 統一超商(コンビニエンスストア)
統一企業中国(食品)
宝成
靴の受託生産の世界最大手。ナイキやアディダスなどの世界主要ブランドが顧客。中国から東南アジアに生産拠点拡大。
ファミリー名 蔡其瑞氏ら 中核分野 靴製造
主要上場企業
宝成工業(靴) 裕元工業集団(靴)
国泰金融控股
台湾の金融最大手。中国大陸での事業拡大に続き、インドネシアやフィリピンの銀行に出資するなど東南アジアに展開。
ファミリー名 蔡宏図氏ら 中核分野 銀行、保険、証券
主要上場企業
国泰金融控股

香港
長江実業
香港の代表的経営者、李嘉誠氏が天安門事件後に外資が撤退する中国で事業を拡大。近年は中国の不動産を相次ぎ売却。
ファミリー名 李嘉誠氏ら 中核分野 不動産、インフラ、通信
主要上場企業
長江和記実業(複合企業) 長江実業地産(不動産)
長江基建集団(インフラ)
恒基兆業地産
香港と中国本土で住宅やオフィスを手掛け、傘下にはホテルや都市ガス会社も。トップの李兆基氏は株式投資でも有名。
ファミリー名 李兆基氏ら 中核分野 不動産、ガス
主要上場企業
恒基兆業地産(不動産) 香港中華煤気(ガス)
新鴻基地産発展
香港の不動産開発最大手。香港の超高層ビルや上海の大規模開発で知られる。元トップの郭炳江氏は贈収賄で有罪評決。
ファミリー名 郭一族 中核分野 不動産、通信
主要上場企業
新鴻基地産発展(不動産) 数碼通電訊集団(通信)
ホー・ファミリー
「マカオのカジノ王」の異名をもつスタンレー・ホー氏が率いる。MGMなど米系資本との合弁も手がける。
ファミリー名 スタンレー・ホー氏 中核分野 カジノリゾート、運輸
主要上場企業
澳門博彩控股(SJMホールディングス、カジノ) 信徳集団(運輸、不動産)
CLP―香港上海ホテルズ
香港の人口の8割に供給する電力事業者。中国本土でも発電所を運営。高級ホテル「ザ・ペニンシュラ」も展開する。
ファミリー名 カドゥーリー一族 中核分野 電力、ホテル
主要上場企業
CLP(中電控股) 香港上海ホテルズ
ジャーディン・マセソン
香港の複合企業。自動車販売から不動産、小売り、金融、高級ホテルと事業領域が広い。1832年設立と歴史が長い。
ファミリー名 ケジック一族 中核分野 自動車販売、不動産、小売り
主要上場企業
ジャーディン・マセソン・ホールディングス(複合企業) アストラ・インターナショナル(自動車販売)
マンダリン・オリエンタル・インターナショナル(ホテル)

韓国
サムスン
李健熙(イ・ゴンヒ)サムスン電子会長の指揮下、積極投資と新興国への販路拡大で電機の世界大手にのし上がった。
ファミリー名 李健熙氏ら 中核分野 電機(半導体、スマートフォン、テレビ)
主要上場企業
サムスン電子(電機) サムスン物産(建設・商社)
サムスンSDI(電池)
現代自動車
自動車販売台数で世界5位(15年)。「日本車キラー」と呼ばれるセダンでシェアを拡大した。傘下に起亜自動車。
ファミリー名 鄭夢九氏ら 中核分野 自動車
主要上場企業
現代自動車(自動車) 現代モービス(自動車部品)
起亜自動車(自動車)
SK
紡績から石油精製、通信などに事業拡大。SKテレコムは国内移動通信最大手、SKハイニックスはメモリー世界大手。
ファミリー名 崔泰源氏ら 中核分野 半導体、通信、石油・化学
主要上場企業
SKハイニックス(半導体) SKテレコム(通信)
SKイノベーション(石油・化学)
LG
サムスンに続く韓国電機大手。白物家電や薄型テレビの販売を新興国で伸ばしてきた。化学製品や電池など部材も強い。
ファミリー名 具本茂氏ら 中核分野 電機、化学、化粧品
主要上場企業
LG化学(化学) LG生活健康(化粧品)
LGディスプレー(ディスプレー)
ロッテ
韓国と日本を基盤とする製菓大手。百貨店や免税店など小売り事業を手掛ける。創業家の内紛が注目を集める。
ファミリー名 辛東彬(重光昭夫)氏ら 中核分野 製菓、小売り、化学
主要上場企業
ロッテ化学(化学) ロッテショッピング(小売り)
ロッテ製菓(製菓)

タイ
チャロン・ポカパン(CP)
中国から移民した謝家の2兄弟が1921年に創業したタイ最大級の複合企業。畜産や食品加工から小売業や通信業へ多角化を進める。
ファミリー名 チャラワノン一族 中核分野 食品加工、小売り、通信
主要上場企業
チャロン・ポカパン・フーズ(食品加工) CPオール(小売り)
トゥルー・コーポレーション(通信)
TCC
華人系実業家、チャロン・シリワタナバクディー氏が酒造業に参入。アルコール事業が主軸だが、仏スーパーの「ビッグC」のタイ部門などを買収。小売事業にも力を入れる。
ファミリー名 シリワタナバクディー一族 中核分野 酒類・飲料、不動産、商社
主要上場企業
タイ・ビバレッジ(酒類・飲料) フレイザー・アンド・ニーブ(F&N、飲料)
ベルリ・ユッカー(商社)
セントラル
タイの流通最大手。ショッピングモール「セントラル・ワールド」などの店舗を運営。マレーシアなどタイ国外にもモール建設を進めるほか、商業不動産の開発や外食チェーンも手がける。
ファミリー名 チラティワット一族 中核分野 流通
主要上場企業
セントラル・パタナ(商業施設開発) COL(小売り)

フィリピン
SM
創業者のヘンリー・シー氏が靴屋から事業を拡大。巨大モールを運営するフィリピン小売り最大手に育てあげた。グループ傘下の不動産や銀行などはヘンリー氏の6人の子どもが経営参画する。
ファミリー名 シー一族 中核分野 小売り、不動産、金融
主要上場企業
SMインベストメンツ(複合企業) SMプライム・ホールディングス(不動産)
BDOユニバンク(金融)
JGサミット
ジョン・ゴコンウェイ氏が自転車やロウソクの販売を皮切りに、食品や不動産で成長してきた。格安航空会社(LCC)のセブ・パシフィックを運営するセブ・エアを発足。事業多角化が進む。
ファミリー名 ゴコンウェイ一族 中核分野 食品、不動産開発、航空
主要上場企業
JGサミット・ホールディングス(複合企業) ユニバーサル・ロビーナ(食品・飲料)
ロビンソンズ・ランド(不動産)
アヤラ
スペイン統治下のフィリピンで設立され、180年以上の歴史を持つ名門財閥。不動産から水道事業まで事業領域は多岐に渡る。近年は電力などインフラ開発に注力。
ファミリー名 ソベル・デ・アヤラ一族 中核分野 不動産、銀行、通信、水道
主要上場企業
アヤラ・コーポレーション(複合企業) アヤラ・ランド(不動産)
グローブ・テレコム(携帯・通信) マニラ・ウオーター(上下水道)

インド
タタ
1868年創業のインド最大財閥。創業家はゾロアスター教徒(拝火教徒)で、大英帝国統治下のインドで貿易を元手に台頭した。持ち株会社タタ・サンズを中心に、現在は約100社の企業群を抱え、グループ売上高は10兆円を超える。
ファミリー名 タタ一族 中核分野 ITサービス、自動車、鉄鋼、電力
主要上場企業
タタ・コンサルタンシー・サービシズ(ITサービス) タタ自動車(自動車)
タタ製鉄(鉄鋼) タタ電力(電力)
リライアンス
インド三大財閥の1つ。創業者ディルバイ・アンバニ氏が1947年のインド独立後、石油・化学を中心に1代で財閥を築いた。2002年の同氏の死後、長男ムケシュ氏と次男アニル氏が対立。現在はグループが2分割されている。
ファミリー名 アンバニ一族 中核分野 石油・化学、小売り、電力、金融、通信
主要上場企業
リライアンス・インダストリーズ(石油・化学、通信、小売り) リライアンス・パワー(電力)
リライアンス・キャピタル(金融)
アディティヤ・ビルラ
インド三大財閥ビルラ財閥の直系。ビルラ一族はインド西部ラジャスタン州に起源を持つ、インドで有名な「マルワリ商人」の代表。アディティヤ・ビルラ・グループは繊維・化学に加え、非鉄や携帯通信も手がける。近年はグループ再編を進めている。
ファミリー名 ビルラ一族 中核分野 繊維、化学、非鉄、セメント、通信
主要上場企業
グラシム・インダストリーズ(化学・繊維) アイデア・セルラー(通信)
ヒンダルコ・インダストリーズ(非鉄)
マヒンドラ
農機、自動車など製造業を中核とするインドの大手財閥。グループ総帥のアナンド・マヒンドラ氏のもと、日本の三菱重工業グループと農業機械分野で提携、自動車部門では米国の開発拠点を設けるなど積極的な海外展開で知られる。
ファミリー名 マヒンドラ一族 中核分野 自動車、農機、ITサービス、金融
主要上場企業
マヒンドラ・アンド・マヒンドラ(自動車、農機) テック・マヒンドラ(ITサービス)
ゴドレジ
1897年創業の老舗財閥。タタ財閥と同じく、創業家はゾロアスター教徒の「パルシー商人」出身。せっけん製造で成功し、現在は日用品や家電、小売りや不動産、農業など幅広く手がける。日用品分野でアフリカ、東南アジアなど海外市場に進出している。
ファミリー名 ゴドレジ一族 中核分野 日用品、家電、不動産、小売り
主要上場企業
ゴドレジ・コンシューマー・プロダクツ(日用品) ゴドレジ・プロパティーズ(不動産)』

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財閥のリストは枠に入っていてもっと見やすかったが、コピーする段階で見にくくなってしまった。ただ、知らない企業も多いので何かの時に参考になるかも知れない。

いずれアジアの企業についても勉強していきたい。

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