プラハからドイツのデュッセルドルフ経由でポーランドの古都クラクフに入ったのは8月15日だった。
ポーランドというと、チェコに比べて少し遅れたイメージを持っていたが、どっこいクラクフ空港は予想に反し、近代的で機能的な空港だった。
タクシーに乗ると車はアウディで、運転手は映画「トランスポーター」のジェイソン・ステイサムのようなダンディーなタフガイだった。
「ポーランドやるじゃん」と思いながら街中に入ると、交通量も少なく人影もまばらだ。確かポーランド第3の都会のはずだが・・・。
疑問を解いてくれたのは、宿のガードマンだった。
「今日は、みんな働いてはいけない日だ」
どうやら祝日らしい。後で調べてみると8月15日は「聖母被昇天祭」というポーランドの祝日だとわかった。それにしても、働かなさが徹底している。
クラクフの宿泊先に予約していたのは、「Apartamenty TWW Stary Browar」という名のコンドミニアムだった。タクシーで案内された場所は、レンガ造りの真新しい集合住宅が立ち並ぶ再開発エリア。
到着の1時間前までに事前に送られてきた電話番号まで電話するようにとのメールを受け取っていたので、タクシー運転手に電話をかけてもらった。午後3時にオフィスに来いと言われたようだが、一体どこのオフィスだかわからない。
たまたま守衛室のような所に人がいるのを見つけ、予約の紙を見せながら英語で聞くと、親切なガードマンが「今日は祝日なので誰かいるかなあ」などと言いながら案内してくれた。
確かに事務所には「TWW」の文字。しかし、誰もいない。時間が3時より少し早かったので、ガードマンさんに礼を言い少し待つことにした。
どうやら不動産屋が貸し部屋の管理をしているようだ。
約束どおり3時に若い男性がやってきて、無事チェックインが終了した。
部屋はキッチン付きのワンルーム。イケアの家具で統一された、シンプルだが清潔な部屋だった。分譲マンションを民泊に利用しているのだろう。
妻が喜んだのは、バスルームに洗濯機があったことだ。プラハの宿には洗濯機がなく、最低限の下着を手洗いしていた。貯まった洗濯物を早速洗濯機に放り込む。
部屋には小さなベランダもあり、木製の大型サッシが全部フルオープンにできる。風通しは抜群だ。
昨日プラハで泊まった四つ星ホテルよりもずっとゆったりしていて、2人2泊で2万円しない。とてもリーズナブルだ。
オーブンレンジをはじめ食器類も充実している。
ただ残念なことに、今日は祝日。建物の1階にスーパーマーケットもあるのに営業していない。ほとんどのお店が本日休業だという。
自炊をあきらめ街に出た。歩いて3分くらいのところに鉄道の中央駅があるが、人影はまばらだ。
駅前の大型ショッピングモールも今日はお休み。閑散としている。
駅前広場から旧市街へつながる地下道だけが人通りがある。旧市街ではお祭りが行われていて、店も営業しているという。付いて行ってみることにした。
クラクフ旧市街の北の入り口「フロリアンスカ門」とそれを守るための砦「バルバカン」。確かに旧市街には人がいた。
メインストリートの「フロリアンスカ通り」沿いの飲食店も営業している。しかし、一般商店はしまっているところが多く、ようやく1軒アラブ人が営業する商店を見つけて、水と牛乳だけ買った。
総面積4万㎡というヨーロッパ最大の中央広場では、お祭りが開かれ多くの人が楽しんでいた。
民族舞踊に・・・
様々な露店が広場を埋め尽くしている。今日は国民の祝日。観光客だけでなく、多くの市民もこの広場で楽しんでいるのだろう。
街のあちこちにパンを売る屋台が出ている。
これクラクフ名物の「オブヴァジャーネック」というリング状のパンだ。私たちは結局食べなかったが、歯ごたえがあり、ベーグルに似ているらしい。実はこのポーランドがベーグル発祥の地とも言われているのだと、後で知った。
このレストラン、1364年創業らしい。
クラクフは11世紀から約550年間、ポーランド王国の都として栄えた。第二次大戦でもワルシャワなどに比べて破壊を免れ、今日まで古い町並みが残った。そのため、老舗のお店も多いのだ。
ポーランド料理の店を物色しながら中央広場からさらに南へ進む。夕暮れのクラクフ。みんな何だかのんびりしている。
結局、「地球の歩き方」に載っていたポーランド料理のお店に行った。
「フォプスキ・ヤドウォ」という店名の意味は、「小作人の食べ物」という意味らしい。
中は田舎の農家のような雰囲気。
薄暗い照明、無骨なテーブル、煤けた暖炉。天井には太い梁が何本も走り、いかにも「小作人の」という店名にふさわしいインテリアだ。
民族衣装に身を包んだ細身の女性が店を取り仕切る。赤と白はまさしくポーランドの国旗の色だ。
ポーランドは世界でも美人国として名高い。昔バックパーカーとして貧乏旅行をしていた時、旅先で出会った外国人の旅行者とどこの国の女性が綺麗かという話をよくした。
中南米では「3C」というのが美人国とされ、チリ、コロンビア、コスタリカだと言われた。ヨーロッパでは、ウクライナやポーランドを美人国としてあげる人が多かった。本当かどうかは不明だが、この店の女性は確かに美人だった。
ポーランド料理など食べたことがないので、メニューの写真で選ぶしかない。
まず、黒パンとピクルス、サワークリームが運ばれてきた。これだけで、ロシアに近づいた気がする。
続いて、ビール。こちらも違和感はない。
そして登場しました。これ、「ジューレック」というスープだ。
メニューには英語で「Traditional sour rye and cream soup made on a sourdough, served with an egg and white sausage」と書いてある。
カチカチのパンで作られた器の中に、ゆで卵やソーセージを煮込んだスープが入っている。
はじめにスープを食べ、パンの壁を崩しながら一緒に食べる。本当の食べ方はわからないが、まあ問題はないだろう。スープはパンに染み込んでいくので早く食べないと全部吸い取られてしまいそうだ。
それにしても、ふたの部分の硬いこと。とても歯が立たない。
もう一品注文したのは、カリカリポテトのパンケーキ。
これもとても美味しかった。
ポーランドの古都のイメージにぴったりの素朴で美味しいディナー。さすが「地球の歩き方」で紹介されているだけのことはある。
食後はトラムに乗って宿に戻ろうと考えた。
クラクフのトラムは青色。古い車両と新しい車両が混在しているのはプラハと同じだ。
ところが、今クラクフのトラム路線は大工事中で、私の宿がある北西方面は全面運休だということがわかった。宿の近くでトラムの線路が通行止になっていたのは、祝日のせいかと思っていたが本当の工事だったのだ。
もし工事中でなければ、宿の前の通りをトラムが走っていてものすごく便利だったのだ。それがわかった瞬間、逆に悔しくなってくるから不思議だ。
仕方ないので、試しに少しだけトラムに乗り、旧市街を再び歩いて宿に戻った。
夕暮れの旧市街は、歩道や路地裏が居酒屋に変わる。
プラハに比べると、どこか垢抜けない素朴な街だ。
でも路地裏を渡る風は心地よく、のんびりとした時が流れていた。
<関連リンク>
アウシュヴィッツに行ってきた① 苦手なツアーに参加して・・・
地下100mのシャンデリア 世界遺産ヴィエリチカ岩塩坑に潜る
映画「シンドラーのリスト」の舞台クラクフで「リンドラーの工場」を訪ねる
ポーランドの古都クラクフで、パンの器に入った“ジューレック”を食す
世界遺産クラクフの聖マリア教会でローマ法王ヨハネ・パウロ2世を偲ぶ
<参考情報>
私がよく利用する予約サイトのリンクを貼っておきます。
