この100年で最も暑い6月がやってきた。

群馬県の伊勢崎では昨日、6月としては初めて最高気温が40度を超えたという。
東京都心も35度を超す猛暑日で、八王子では38度に達したというので、おそらく吉祥寺も35〜36度にまで上がったのだろう。
そんな梅雨とは到底思えない炎天下の下、私は髪を短く切りに行った。
少しさっぱりとはしたが、それでも頭に熱がこもっているのを感じ、こういう日は無理をせず家に止まり図書館で借りてきた本でも読んでゆっくり過ごすことにする。

散髪といえば、今月岡山に帰省した際、伸び放題になっていた庭木の剪定を行った。
たとえば、松の「みどり摘み」。
ネットで調べながら見よう見まねで適当にやってみたが、果たしてどんなことになるのやら。
妻は「背の高くなった庭木は全部頭を切って手の届くようにしたい」と言うし、これは一度庭木の剪定についてきちんと勉強しなければならないと思い、図書館で一冊の本を借りてきた。

その名もズバリ、『基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定』。
造園学を専門とする恵泉女学園大学の宮内泰之准教授が監修したもののようだ。
「基礎の基礎からよくわかる」というコピーの通り、まず最初に「剪定はなぜ必要なのか?」ということから記されていた。
そもそも剪定は、なぜ必要なのでしょうか?どんな目的があるのでしょうか?
自然環境のなかで育っている樹木には、剪定は必要ありません。他の生き物と同じように本来、樹木にも自分の健康を自分で守る機能があります。一方で、庭に植えられた樹木には空間的な制約があります。道路にはみ出すと近隣の迷惑になりますし、高くなりすぎると電線に接触することがあるかもしれません。そのような事態を防ぐには枝を切って大きさを整えることが必要です。これが剪定の目的の一つです。
また、一度、人間が手を入れると、切ったところから新しい枝が生えてきて、その部分が密生してしまうことがあります。密生しているところは日当たりや風通しが悪くなり、病気や虫の被害を受けやすくなります。枝葉を間引いて密生を解消するのも剪定の目的です。
さらに上手な剪定によって、きれいな樹形を保つことや、花を多く咲かせることもでき、生け垣であれば、表面をより密にして、目隠しとしての機能を高めることもできます。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より
まず印象的だったのは、自然の樹木には剪定は必要ないが、一度人間が手を加えると剪定が必要になるという言葉である。
自然のままに大きく枝を伸ばした大樹が私は好きだが、民家の庭に残念ながら自然のままの大樹は育てられない。
剪定の目的は、①大きさを整える、②樹木の健康を守る、③機能を高めるの3点だということを理解した。
「基礎の基礎」を知ることで、理解がグッと高まった気がする。
さて、剪定の目的を理解した上で、この本の中から覚えておこうと思った点をピックアップして書き写すこととする。
樹木の基礎知識
この項目では、落葉樹と常緑樹の違い、広葉樹と針葉樹の違い、低木・小高木・高木の違い、1本立ちと株立ちの違い、そしてさまざまな自然樹形の種類があることが記されている。

それはだいたいわかるので、まずは剪定に必要な樹木に関する名前を覚えることに。
中心に太い幹を持つ1本立ちの樹木の場合、中央の太い幹を「主幹(しゅかん)または芯」と呼ぶ。
主幹から横に伸びた枝を「主枝(しゅし)」、主枝から分かれた枝を「側枝(そくし)」、そして枝葉が張っている表面の部分を「樹冠(じゅかん)」という。
そして主幹を切って高さを抑えることを「芯止め」というそうで、もし妻の求めに応じて高くなりすぎた庭木を切る場合にはこの「芯止め」が必要となる。

また枝葉のつき方にも注目する必要があるという。
剪定というと、どうしても切る対象となる枝に注目しがちですが、葉にも配慮しましょう。成長に必要な養分は葉でつくられ、葉に蓄積されます。また、葉から水分を放出する蒸散作用の結果、根から土中の水分が吸い上げられ、枝のすみずみにまで水分が行き渡るようになります。葉が密生すると、日あたりや風通しが悪くなるため、枝を間引くことが剪定の目的になります。葉を残さずに切ってしまうと、残った枝に水や栄養分が十分にいきわたらずに枯れてしまう場合があるので、注意が必要です。
また、枝葉のつき方には大きくわけて、枝葉が互いちがいに出る「互生(ごせい)」と、枝葉は対になって出る「対生(たいせい)」の二つがあります。対生の樹種でも枝葉が混んでいたら、互生のように互いちがいになるように剪定すると、きれいに仕上がることが多くなります。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より
枝のことばかり見ずに、葉も観察して剪定しなければ、樹木を枯らしてしまうことがあるということなのだろう。

この項目で一番重要だと感じたのは、芽の種類を知ることである。
芽には、花になる「花芽(かが)」、葉になる「葉芽(ようが)」、花と葉のどちらにもなる「混芽(こんが)」があります。芽は、葉や枝のおおもとですが、温度などの条件がそろうと花へと変化します。これを「花芽分化」といいます。剪定においては、花芽ができる時期である「花芽分化期」を知ることが重要です。より多くの花を楽しむためには、花芽が分化する前の期間を剪定時期に選びます。
芽のついている位置にも注意が必要です。位置によって「内芽(うちめ)」「外芽(そとめ)」という二つの呼び名があり、剪定では外芽のすぐ上で切った方が、成長後に自然な樹形になりやすい傾向があります。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より
花芽が分化する前の時期に剪定を行い、外芽のすぐ上で切る。
この2つは覚えておいた方がよさそうだ。
剪定に適した時期
剪定でもっとも避けたい失敗は、枝を切ったことによって樹木が枯れてしまうことでしょう。
そのようなことにならないためには、適した時期に剪定することがとても大切です。
剪定に適した時期は、落葉樹・常緑樹・針葉樹という樹木の性質によって異なります。基本的には落葉樹は冬、常緑樹は春から初夏、針葉樹は春が剪定にもっとも適した時期です。しかし、それ以外の時期に絶対に剪定をしてはいけないというわけではなく、花を鑑賞する花木や実を収穫する果樹は、その目的に応じた剪定の時期があります。
とはいえ、盛夏や寒い地方の厳冬期の剪定は、どの樹種にとっても大きなダメージとなるので、控えたほうがよいでしょう。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より
落葉樹は冬、常緑樹は春から初夏、針葉樹は春が剪定の適期で、真夏の剪定は避けたほうがよいという大原則をまず覚えておきたい。

樹木には1年のサイクルがあり、萌芽期→成長期→充実期→休眠期を繰り返すのだそうだ。
樹種によってそのサイクルが微妙に違うため、それに沿って剪定の最適期が決められている。
剪定はやはり樹木にダメージを与える行為なので、なるべくダメージが少なく、回復力の高い時期を選ぶことがポイントなのだろう。
今度帰省するのは7月なので、もう剪定には向かないということだ。
剪定の種類
代表的な剪定としては「透かし剪定」と「刈り込み剪定」がある。
透かし剪定は、ハサミやノコギリを使って樹冠内部から1本ずつ枝を切って抜いていく剪定で、大きさや形を整え密生を解消することを目的とする。
刈り込み剪定は、刈り込みバサミや電動バリカンを使い庭木の表面を均一に切る剪定で、頂芽を切ることでその近くの枝葉を成長させ表面が密生するため目隠しを目的とした生け垣に向いている。
そのほか、果樹などの敵芯・摘果、松のもみあげ・みどり摘みなど、樹種に応じていろいろな剪定方法が用いられる。
また、ムクゲのように剪定前と剪定後の姿が大きく異なるような剪定を「強剪定」、シラカバのように大きさや樹形がそれほど変わらない剪定を「弱剪定」と呼ぶが、剪定を控えたほうがいい樹木もあり、樹種によって自ずと剪定の仕方も違ってくるということだろう。
枝の切り方の基本
それではいよいよ、実際の剪定のやり方を学んでいこう。
剪定には「大透かし」「中透かし」「小透かし」という三つの技術があります。
大透かしは、樹木の骨格をなすような大きな枝(太い枝、長い枝)を切る剪定です。小透かしは枝先付近の小さな枝(細い枝、短い枝)が対象で、仕上げとして樹木全体の形を整えることが主な目的です。中透かしの対象はイメージとしては太さや長さが大透かしと小透かしの中間くらいの枝で、混み合っているところや、はみ出している枝をつけ根から切ります。一般には、樹木の剪定は「大透かし→中透かし→小透かし」という順で進めていきます。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より
それでは順に見ていく。

大透かし
大透かしは樹木全体の大きさや骨格を決める剪定で、太い枝を切ることが多いので、主に剪定ノコギリを使う。
太い枝を剪定ノコギリで切る場合は3回にわけて切る。1回で切ろうとすると、途中で枝の重みによって樹皮を裂きながら折れてしまうことがある。
- つけ根から少し離れてところに下から切り込みを入れる。なお、枝のつけ根付近の下側のふくらんだ部分を「ブランチカラー」、上側のシワのようになっている部分を「バークリッジ」という。
- 1の切り口の少し外側(枝先側)に刃を上からあて、枝を切り落とす。
- 残った部分を切り落とす。太い枝の場合はつけ根のギリギリではなく、ブランチカラーとバークリッジは残すように切る。
- できるだけ断面がきれいになるように切る。サクラなどの性質が弱い木は切り口に癒合剤を塗る。
樹木には太い枝を切られると自らその切り口をふさぐ性質がある。そのふさぐ組織を「カルス」という。切り方が不適切だと、カルスがなかなか形成されずに、そこから菌が入ってしまうこともある。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より

中透かし
中透かしは、枝葉の密生を解消したいときに行い、剪定バサミを使うような少し太めの枝を切ることが多い剪定である。
大きさや全体的な樹形は整っている樹木に対して、枝葉の密生の解消を目的として行うのが中透かしだ。混み合っているところの枝数を減らし、樹冠からはみ出している太めの枝があれば、それも切り落とす。「成長後をイメージする」「残す枝のバランスを考える」「切る位置に注意する」などのポイントを押さえながら、剪定作業を進めよう。
基本的には枝のつけ根か節のすぐ上で切る。節のすぐ上で切る場合は、芽が成長した後の樹形を意識すること。節の途中で切ると残した部分が枯れ、腐朽菌の温床になる。やがて木全体が枯れることも。
切った後に、どのような樹形になるかを考えながら作業を進める。たとえばまっすぐ上に伸びた枝を残すと、不自然な樹形になってしまう。
切る枝に対して、残す枝が極端に細くならないように要注意。その樹木の生態バランスが崩れてしまい、枯れる原因につながることもある。
密生の解消というと、枝葉が茂っている樹木の表面に目がいきがちで、枝先ばかりを切ることが多い。それでは樹冠内部の密生を解消できないばかりか、切った付近の枝が成長して、またすぐに密生してしまう。そのようなことにならないように、もとをたどって、つけ根から切る「中透かし」を行う。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より

小透かし
小透かしは、樹木の剪定の仕上げとなり、植木バサミを使って枝先付近の枝を切り落として、美しい樹形に整える剪定である。
小透かしは中透かしと同様に、枝のつけ根か節のすぐ上で切ることが重要。また、内芽と外芽で考えると、外芽を残したほうがよいことが多い。
内芽を残すと、そこから成長した枝が真上や主幹方向に伸びて、乱れた樹形になる可能性が高い。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より
透かし剪定の基本プロセス
ステップ1:対象の樹木を観察して仕上がりをイメージする
どのような樹形に仕上げるか、ゴールを意識しないと、作業を進めている途中で「どの枝を切ってよいか」がわからなくなってしまいます。
剪定の最初のステップは、対象となる庭木をよく観察して、仕上がりをイメージすることです。
観察は、対象の庭木から少し離れたところで行うのがポイントです。普段の生活の中で、その樹木をよく見ることろを中心に四方から観察しましょう。
仕上がりのイメージは、そもそもの庭木を切ろうと思った目的を念頭に、樹冠を決めて固めていきます。
イメージの主な要素は、庭木全体の大きさとなる樹冠と、その庭木の中心となる主幹だ。「どれくらいの大きさにして、どの幹を中心にするか」が頭の中で決まっていれば、作業はスムーズに進む。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より
迷ったら樹木本来の樹形を意識するとイメージがつかみやすいという。
ステップ2:明かに不要な枝を切る
明らかに不要な枝は、「枯れ枝」「ひこばえ」「胴吹き」の3つで、いずれもつけ根から切るのが基本です。一部を残すと、将来的に、その残した部分は枯れてしまうので注意しましょう。
「ひこばえ」は主幹の根元付近の地際から生える枝、「胴吹き」は主幹から生えている細い枝のことをいう。

ステップ3:状況に応じてその他の不要な枝を切る
「密生を解消する」「大きさを整える」「樹形を美しくする」などの目的を果たすために、優先的に切りたいのが、ここで紹介する不要枝(ふようし)です。
手順としては「大透かし→中透かし→小透かし」の順に、それぞれ高いところから低いところへと進めていきます。
樹木を真横から見た場合、一般的に樹形は上部よりも下部の方が広くなっている。間違って枝を切り過ぎてしまった場合、それが上部であれば、下部をあまり切らなくても不自然な樹形にはならない。また、上部はよく成長するので回復も早い。一方、下部を切りすぎると、それに合わせて上部を切らないといびつな樹形になってしまうので、全体的に強く剪定しないといけなくなる。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より
具体的には以下のような不要枝がある。
- 徒長枝=他の枝に比べて明らかに勢いよく伸びた枝
- 交差枝=他の枝と交差するように伸びた枝
- 平行枝=近い位置で何本もの枝が平行に生えている枝
- 内向枝=主幹方向(外側から内側)へと伸びる枝
- 車枝=一ヶ所から車輪状に生えた枝
不要枝の剪定は、つけ根で切るのが基本だそうだ。
もう一つ重要なのが「高さを抑える剪定」。
大きくなりすぎる前に剪定するのが基本で、主幹を切ることから「芯止め」とも呼ばれる。
高さを抑えるコツは、主幹を切って全体の高さを決めたら、その周りの枝を切って樹形を整えること。
主幹を短くする方法のほかに、主幹を強く剪定して、ほかの太い枝を主幹にするという方法もある。
ステップ4:樹形を整える
木から少し離れて観察し、全体の樹形や混み具合を確認します。樹木の近くにいると気がつかないこともあるので、ふだんその木をよく見る位置を中心に、いろいろな方向からチェックしましょう。樹冠からはみ出している枝や部分的に密生しているところなどを見つけたら、その枝を切ります。何度かくり返し確認して、木全体を整えることができれば、剪定は終了です。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より
ステップ5:切り落とした枝を片づけて周囲をきれいに掃除する
剪定が終わったら速やかに掃除。
切り落とした枝葉が庭木に引っかかっていると、日光を遮ったり風に飛ばされて迷惑になることも。
そして剪定に使った道具の手入れも大事だという。
剪定が終わったら、使用したハサミの刃の汚れやヤニを落とす。この手入れをすることで切れ味を維持することができ、樹木へのダメージを抑えながら、次回もストレスなく枝を切れる。こまめに手入れをすることは長く愛用できることにもつながる。
引用:「基礎の基礎からよくわかる 切る枝・残す枝がわかる!庭木の剪定」より
これが私の最も苦手なところだ。
何事も始めるのは好きなのだが、片づけが苦手である。
剪定に使ったハサミの手入れとして理想的な手順は、以下の通り。
- 砥石やタワシなどで刃の両面の汚れを落とす。砥石は水に濡らして、細かい目の面を使う。
- 乾いた布で水気を拭き取ったら、錆を予防するために機械油をさす。滑らかな動きを保つためにネジの部分にもさす。
- 乾いた布を使って、さした機械油をなじませていく。刃の全面に薄く機械油が塗られた状態になったら終了。
さらに切れ味が悪くなったら、ハサミを研ぐという作業も必要になってくる。
- まず刃の汚れを落とす。
- ハサミの表側を砥石の粗い面で刃が裏に少しそり返るまで研ぐ。
- ハサミの裏側を砥石の細かい面で1〜2回研ぎ、裏にそり返った刃を戻す。
- 水気を拭き取って機械油をさす。
ハサミをうまく研ぐためのポイントの一つは、研ぐ面に対して、水平からやや角度をつけて砥石をあてることだそうだ。
妻からは「錆びた刃物を研げるようになって」と求められているので、これもこれからの課題である。
私はどうも物の手入れという作業に向いていない気がするのだ。

以上が全般的な剪定の基礎の基礎のようである。
本にはこの後、樹種ごとに細かく剪定の時期や方法が書かれているが、とても一度には覚えられない。
まずは剪定すべき樹種を見極め、それに適した方法で少なくとも年に1回は剪定してあげることになるだろう。
私の場合は、ブドウ、モモ、カキ、クリ、ユズ、イチジクといった果樹の剪定方法を覚え、せっかく先祖が残してくれた果実をしっかり収穫することが当面の目標となる。
私が子供の頃から裏庭にある古い柿の木も高くなりすぎて脚立に上がっても実を取ることができない。
いずれこの柿の木とも格闘する日が来るのだろう。

それにしても、「世界は自分が知らないことで満ちている」と思う。
60代半ばにしてそう感じてワクワクできるのだから、私は本当に幸せ者である。
7月1日にはまた岡山に行って、果樹や野菜、雑草と格闘する日々が待っているのだ。
大変だけど、楽しみだと感じている自分がそこにいる。