英保守党 圧勝

3年にわたって迷走に迷走を重ねたイギリスのEU離脱騒動が、今度こそ決着したようだ。

EU離脱を前面に打ち出して総選挙に打って出たボリス・ジョンソン首相は、見事に公約を達成することになるだろう。

12日行われたイギリスの総選挙は、ジョンソン首相率いる保守党がサッチャー時代以来の歴史的な大勝をおさめた。

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EU離脱を問う国民投票で離脱派の先頭に立ったジョンソン氏だが、離脱賛成派が多数になると自らは首相にならないと言ってなぜか逃げた。彼は自らの野心のために離脱運動を盛り上げていると疑っていた私は、国民投票後いち早くジョンソン氏が首相になる気がないと言い出したのに驚いたことを覚えている。

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その結果、メイさんが保守党の党首となり、イギリスの首相となった。

でも、彼女は真面目で融通がきかず、EUとイギリス議会の間に挟まって立ち往生してしまった。

そして、イギリス国民がもうブレグジット論議にうんざりしたタイミングを捉えて首相に就任したが、パフォーマンス先行のジョンソン氏が混迷する事態を収拾できると予想する人は少なかったのではないだろうか。

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ジャーナリスト出身のジョンソン首相。

記者時代から反EUの記事を書いていたが、正確な報道よりも目を引く記事を書くことが得意で、時には事実ではないことも平気で記事にしたという。政治家になってからも変わらないジョンソン氏のスタイルは、若い時から変わっていないようだ。

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でも、彼には特技があった。庶民の心を掴むパフォーマンス力である。

今回の総選挙でも、理屈ではなく、明確なメッセージとパフォーマンスで一貫して優位に立った。メイさんには決してできなかった戦術だろう。

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そして、相手が弱かった。

労働党はなぜコービン党首を交代させなかったのだろうかと、私は今でも不思議でならない。

ひょっとしたらいい人なのかもしれない。しかし、画面を通してみるコービン党首は、いかにも貧相で愛想がなく、その主張も中途半端、野党がこれでは絶対に勝てないと思っていた。

労働党には時間があった。メイさんが迷走し、保守党内が分裂していた時に、コービンさんに変わる魅力的な党首を選出していたら、イギリスの運命は大きく変わっただろう。イギリスのEU残留を望んでいた私としては、それが悔やまれてならない。

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でも、これも時代の流れなのかもしれない。

戦後社会が一つずつ積み上げてきた国際協調主義は、インターネット時代にはもはや不要だと考えるひとが世界中で増えているのだろう。個人的には残念だが、ここは私も自身の頭の中を一度リセットして、これからの世界を見ていかないといけないのだろう。

たとえ、それが人類にとって不幸な選択だとしても、過去の常識を主張するだけでは今の世界の動きはとても理解できないからだ。

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そういう意味でいえば、ジョンソン首相について一つ感じていることがある。

それは、ひょっとするとジョンソン首相は、あのチャーチル首相と似ているのではないかということだ。

今でこそ、チャーチル首相は第二次大戦で連合国を勝利に導いた英雄として捉えられているが、彼は党内でも偏屈の老人と見なされていて、彼を首相にしたいと思っていた議員は多くなかった。彼は、変人だったのだ。

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でも、チャーチルは信念の人でもあった。どれほどイギリスが苦境に陥っても、ドイツに対して一切の妥協を拒否した。理屈や損得ではなく、揺るぎのない信念こそが、有事の政治家には求められる。

そしてジョンソン氏のEU離脱の主張も一切ブレることはなかった。それは多くの国民にとっては理解しやすいことだったのだろう。

EUを離脱すると実際に何が起きるのか、正直誰にもわからない。だから一番明確にバラ色の未来を語るジョンソン首相に多くの国民は賭けてみることにしたのだ。

それにひきかえ、コービンさんは最後まで最低だった。悪い指導者の典型のようだった。一番の問題点は、自分がリーダーでは選挙に勝てないことを理解しなかったことだ。ひょっとしたらわかっていたのかもしれないが、自ら後継者に道を譲ることをしなかった。そして、予想通り無残な敗北を喫したのだ。

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世の東西を問わず、国民に明確で明るい未来を描いてみせるリーダーは人気を得る。それがデタラメだろうが、パフォーマンス力が優れていれば一部の国民は熱狂する。そして熱狂した一部の国民は、その国の常識を変えてしまうようなパワーを発揮するのだ。民主主義の弱点であり、それは将来も変わることはない。

トランプさんしかり、安倍さんしかり、そしてジョンソンさんもそうしたパフォーマンスが上手なのだ。

EUを離脱したイギリスがどのような困難に直面するのか予想するのは難しい。EUとの間でどのような協定が結べるかで大きく違ってくるだろう。でも、経済の弱い東欧諸国の面倒を見なければいけない立場からは自由になり、うまくすれば経済的にプラスの面もあるかもしれない。

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ただ、北アイルランド問題はやはり気がかりだ。

今年の夏、私は北アイルランドのベルファストを訪ねたが、カトリック住民とプロテスタント住民の居住エリアは今も高い塀で区切られ、紛争当事の傷は全く癒えていない。ブレグジットがきっかけとなって、再び対立に火がつくことがないよう、細部に気を配った政策を実施してほしいと思う。

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それにしても、一見ただのお調子者に見えるジョンソン首相は、実は只者ではないかもしれないと思った。トランプ大統領が只者でなかったように、その明るいキャラクターは国際社会の新たなキーパーソンとなる素質がある。

トランプさん同様、アニメのキャラクターっぽくて、良くも悪くも庶民の話題に上りやすいのだ。

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この日、トランプ大統領がツイッターに米中交渉の合意を書き込み、イギリスで保守党が圧勝したことで、世界の株式市場は大きく値を上げた。年末にかけてちょっとしたお祭りになるのだろう。

まさに、世界経済を手玉に取ったトランプさんの思う壺だ。

そんなトランプ的な世界に違和感を持つ私は、今年ずっと株を空売りしてきた。おかげで、また大損だ。でも、今の世界を肯定する気にはどうしてもなれない。

トランプさんがやっている対中制裁とツイッター発信は、ある意味、露骨なインサイダー取引のようなものである。

来年もきっと、そんなトランプさんやジョンソンさんに振り回されながら、私は株を売って損を出し続けるのだろうと思っている。

私に株取引はやはり向いていないのだ。

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