シリア攻撃

トランプ大統領が事前の予告通り、シリアに対する軍事攻撃に踏み切った。イギリスとフランスを共同作戦に巻き込むため、当初ツイッターで予告した期日を過ぎてからの実行となった。

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BBCニュースから引用する。

『 大統領は、攻撃の目的は「化学兵器の製造・拡散・使用に対して強力な抑止力を確立すること」だと説明。アサド政権が「化学攻撃をエスカレート」させ、ドゥーマに対する化学攻撃で罪のない市民を「大虐殺した」と断定し、それを命じたバッシャール・アル・アサド大統領について、「人間のやることではない。むしろ、化け物による犯罪だ」と強い調子で糾弾した。さらに、「犯罪的」アサド政権を支援するイランとロシアを非難し、アサド政権が化学攻撃を繰り返しているのは、ロシアがそれを容認しているからだと非難した。

トランプ氏は、イランとロシアに対して、「罪のない男性や女性や子供の大量殺人に関わっていたいというのは、いったいどのような国なのか」と問いただした。

大統領発表に続き、ジェイムズ・マティス国防長官とジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長が国防総省で記者会見した。会見でダンフォード議長(海兵隊大将)は、3つの標的を爆撃したと説明した。

  • ダマスカスの科学研究施設(生物化学兵器の製造に関わるとみられる)
  • ホムス西部の化学兵器保管施設
  • ホムス近くの化学兵器材料保管・主要司令拠点

シリア国営テレビは、政府軍は10基以上のミサイルを迎撃したと伝えた。

マティス長官は記者団に、撃墜された報告はないと述べた。大統領は攻撃継続の用意があると表明したが、国防長官は攻撃の第一波は終了したと述べ、「今のところ、これは一度限りの攻撃で、非常に強力なメッセージを相手に伝えたと思っている」と述べた。

シリア国営テレビはさらに、被害を受けたのはダマスカスの研究施設のみだが、ホムスでは民間人3人が負傷したと伝えた。』

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トランプ大統領にシリアについての明確なビジョンなどない。今回の攻撃も、お気に入りのFOXニュースを見ての思いつきか、中間選挙目当ての国内対策だろう。

見せかけだけの、こけおどし。

まったく意味のない、武力行使。

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シリアは一貫して化学兵器の使用を否定している。

そして私も、政府軍側が圧倒的優位に立っている東グータ地区で本当に化学兵器が使われたのかどうか、疑っている。追い詰められた反政府側が国際社会の介入を狙った自作自演の疑いは捨てきれない。

戦場では何が真実なのか見極めることが極めて難しい。自陣に有利になることならなんでもする、それが戦争というものだ。ましてやインターネットが発達した社会では、ネットを使ったプロパガンダは戦いの趨勢を左右するようになった。

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日本にいて報道を見ているだけでは、シリアの真相は想像もつかない。

内戦の構図があまりに複雑で、政府軍以外の多くのグループの連携・対立関係が一向に理解できない。アサド政府軍が化学兵器を使用したとされる東グータ地区の反体制派が一体どのグループなのかさえ、報道を見ていてもさっぱりわからない。

シリア内戦は、もともと「アラブの春」の民主化運動として2011年に始まった。西側諸国は民主化を応援するという立場から反体制派を支援した。しかし、民主主義を信奉する人々が考える「独裁体制vs民主化を求める市民」という構図は、中東の複雑な現実の前に脆くも崩れ、宗教や民族の対立というパンドラの箱を開けてしまった。

西側諸国の中途半端な関与の影で、イスラム国という誰も予想しなかったテロ集団が台頭。その掃討を口実に、ロシアの介入を招く。アメリカは、IS掃討のためクルド人勢力の力を利用し、それが隣国トルコの警戒心に火をつけた。さらには、イスラエル、イラン、サウジアラビアといった中東の大国による思惑や駆け引きも事態を複雑にしている。

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こうした大国が絡んだ代理戦争をこれまでどれだけ見て来ただろう。

私が取材したインドシナやボスニア、パレスチナの紛争も、東西対立、すなわちアメリカとソ連・ロシアとの対立が問題を複雑化させた。こうした紛争では常に国連は無力、武力によって大勢が決まるまで話し合いは進展しない。

果たして、シリア情勢の出口はどこにあるのか?

他国に翻弄されるシリアの人たちには、同情せざるを得ない。

 

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