「世界平和度指数」というランキングがあるそうだ。イギリスのエコノミスト紙が専門家とともに分析し毎年発表している。
そのランキングで、アイスランドに次いで世界で2番目に平和な国とされるニュージーランドだ。
Embed from Getty Images静かで、美しく、牧歌的で、品のある国。ニュージーランドにはそんなイメージがある。
私の旅行先候補としては常にリストの最上位にあり、今年のGWの旅行先として実際に検討したこともある。今年のラグビーW杯では、オールブラックスが来日する。そして、今度の年末年始にはニュージーランド旅行を計画したいと思っていた。
Embed from Getty Imagesそんな矢先、ニュージランド南島の中心都市クライストチャーチで、イスラム教のモスクを狙った銃撃事件が起きた。金曜日の礼拝が行われていた2つのモスクが襲われ、49人が死亡、50人ほどが負傷した。
銃撃犯として逮捕されたのは、オーストラリア国籍の男だった。
男は、ヘルメットに装着した小型カメラで銃撃の模様を撮影、フェイスブックのライブ機能を使って生中継していた。
犯行前に男はネット上に「マニフェスト」を発表していた。
その内容についてAFP通信は次のように伝えている。
『 74ページにわたるマニフェストは、「壮大な入れ替え」と題され、欧州の白人が非白人の移民に意図的に置き換えられているという、極右の間で広まっている陰謀説が語られている。このタイトルは、フランスの作家ルノー・カミュ(Renaud Camus)氏の著書から取ったものとみられる。マニフェストでは、カミュ氏が広めた「白人ジェノサイド(大量虐殺)」という言葉が使われ、自問自答形式の記述も含まれていた。
容疑者は「民族主義者」を自称していたほか、ノルウェーで2011年に多文化主義への憎悪から77人を殺害した人種差別主義者のアンネシュ・ベーリング・ブレイビク(Anders Behring Breivik)受刑者を含む極右過激派の人物らに「触発」されたとも述べている。
さらに1930年代の英国の悪名高きファシストの指導者で反ユダヤ主義者のオズワルド・モズレー(Oswald Mosley)について「私の信条に最も近い歴史上の人物」と説明。自分はドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の支持者であり、トランプ氏は「白人のアイデンティティーと共通目標の復活の象徴」だと記している。
容疑者はまた、2017年4月にスウェーデンの首都ストックホルムで起き5人が死亡したイスラム過激派の男によるトラック突入事件に言及。事件で最年少の犠牲者となった少女エッバ・オーケルルンド(Ebba Akerlund)さん(当時11)の死に対する復讐が動機の一つだったと説明している。』
白人至上主義者たちの間で、移民排斥、反イスラムの過激思想が国境を越えて繋がっていく。インターネット社会の避けがたい一面だ。
そして過激思想を持つ彼らにとって、国を超えてトランプ大統領が人気を集めていることも興味深い。インターネット、移民、テロ、差別、そしてトランプ。こうした時代のキーワードは、底流で全て繋がっているのだ。
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その一方、インターネットは悪意だけを伝えるものではないことも書き残しておきたい。
この日、ニュージーランドでは「未来のための金曜日」という高校生たちによるストライキが行われていた。
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「#FridaysForFuture」=未来のための金曜日。
多くの高校生たちが学校を休んで街頭に出て、地球温暖化対策を訴える世界的な運動だ。この運動は、スウェーデンの16歳の少女の活動から始まった。
グレタ・トゥーンベリさん(16)は去年8月から、毎週金曜日に学校を休み首都ストックホルムの国会議事堂前で座り込み、温暖化対策を訴える活動を始めた。彼女はその活動をインスタグラムとツイッターで発信したところ、共感する人の輪が世界中に広がっていった。
彼女は昨年末の国際会議「COP24」に招待され演説した。
「大人はわが子を誰よりも愛していると言いながら、子どもの未来を奪っている」と。
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彼らの活動は、極めて平和的で非暴力だ。
参加者は、最寄りの議会や市民会館の前で抗議のプラカードを掲げて写真を撮り、#FridaysForFuture または #Climatestrike というハッシュタグをつけてSNSで発信する、ただそれだけだ。
そしてグレタさんは、3月15日の金曜日に世界一斉デモを呼びかけた。その日が昨日だった。その結果・・・・・
Embed from Getty Imagesフランスでも・・・
Embed from Getty Imagesイタリアでも・・・
Embed from Getty Imagesドイツでも・・・
Embed from Getty Imagesイギリスでも・・・
中にはトランプさんを皮肉って、「MAKE THE EARTH COOL AGAIN」というプラカードを掲げる学生たちもいた。
パリ協定からの離脱を発表したトランプさんは、ここでも存在感抜群だ。
そしてこの日、「未来のための金曜日」に共感し、温暖化対策を訴える運動は世界120カ国以上で行われた。
日本でも渋谷の国連大学前に大学生が集まった。日本ではまだまだ認知度は低い。それでも、ネット上でこうした動きを知り、集まる若者がいるということが新しい時代を感じさせる。
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たった一人の行動が、世界を動かす時代だ。
ささやかながら、自分の信念に従って発信を続けていきたいと思う金曜日であった。
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