<きちシネ>#18 「ホテル・ムンバイ」(2018年/オーストラリア・アメリカ・インド映画)

来年の旅行計画を立て始め、一つの目標を決めた。リタイア後の旅行三昧の生活に備えて、全日空の「スーパーフライヤーズ」資格を取得することだ。

そのためには、マイルではなく「プレミアポイント」というものを貯めなければならないらしい。それも5万ポイント。要するに、たくさん飛行機、特に全日空に乗らなければならない。

旅行好きな人たちの間では、スーパーフライヤーズ会員となるために、1日に沖縄を2往復したり、海外まで行って宿泊せずに往復し、ポイントを貯める人もいるそうだ。「修行」と呼ばれるらしい。

馬鹿馬鹿しいとも思うのだが、一年頑張ってその資格を取ると、毎年カードを更新するだけで、優先搭乗やラウンジ利用などの特典が利用できる資格が死ぬまで続くのだという。しかも、全日空だけでなくスターアライアンスに加盟する各国の航空会社で同じような優遇が得られるというので、私も興味を惹かれた。格安の乗り継ぎ便を利用することが多いため、いろいろな航空会社のラウンジが使えるのはありがたい。荷物の重量も緩和され、アップグレードのポイントももらえるのだ。

前置きが長くなってしまったが、そのプレミアムポイントを貯めるためには、欧米行きの便に比べアジア便の方が効率がいい。同じ距離だと1.5倍ポイントがもらえるのだ。そして全日空が直行便を飛ばしている一番遠いアジア便がインドということで、このところインド旅行を真剣に検討し始めた。

全日空便が飛んでいるのは、首都のニューデリーと経済都市ムンバイ、そして南インドの中心都市チェンナイである。

実は、今年の年末年始、ムンバイへの旅行を計画していた。ところが妻の体調が悪くなったためキャンセルする羽目になった。その時予約していたホテルが、ムンバイのシンボルとも言える名門ホテル「タージマハル・ホテル」だ(といっても、超高級な本館ではなく、手が届く新館の方だが・・・)。

その「タージマハル・ホテル」が舞台となったテロ事件が映画になっていると知り、見に行くことにした。

映画のタイトルは、「ホテル・ムンバイ」

2008年11月26日に起きた「ムンバイ同時多発テロ」で、テロリストに占領され多くの死傷者を出した「タージマハル・ホテル」での実話を映画化したものだ。

長年報道に携わってきた私だが、この時期はちょうど事業部門で勤務していた頃で、正直この事件についてほとんど記憶がない。

パキスタンから送り込まれたイスラム過激派のテロリストたち。彼らは駅や飲食店で同時多発的に銃を乱射し、その主力が「タージマハル・ホテル」を占拠した。テロリストたちはパキスタンの貧しい若者たちで、リーダーからの電話で指示されるままにホテルの客や従業員を無差別に殺害していく。

インド警察はニューデリーからの特殊部隊が到着するまでホテル内への突入を躊躇したため、料理長の指揮のもと従業員たちが客の命を守るために決死の努力を続ける。

「お客様は神様」をモットーにお客第一の教育を受けた一流ホテルマンたちの勇気の記録だ。

こうして書いてしまうと、もう見なくてもストーリーはわかってしまうような映画だが、実際観てみると予想していた以上によくできた映画だった。映画全編に渡って緊張感が途切れることはなく、ホテルマンや客の描き方も簡潔だが丁寧で、テロリストの若者たちにさえ同情したくなるようなそれぞれの背景がわかるように作られている。

もし自分がホテルの客だったら、もしくは従業員だったらどう行動するだろう?

そんなことを考えながら観た。

私自身インドにはもう30年ほど行っていないが、そのカオスのような街の中で膨大な数の人間が懸命に生きる本質が今も変わっていないことを感じた。

イギリスが残した職業倫理のようなものも一流ホテルには残っているのだろう。

インドは疲れる。インドはうるさい。でも、インドに行ってみたくなった。

Yahoo映画の評価は4.44、私の評価は4.00。

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