南北首脳会談

生中継で歴史的一日を大々的に伝えるという、両首脳の判断は狙い通りの効果をもたらした。

日本のテレビも一日中、両首脳の一挙手一投足を伝えた。

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板門店の軍事境界線を挟んで握手したムン・ジェイン大統領と金正恩委員長。

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「私はいつ境界線を超えられるのか?」と漏らしたムン大統領に対し、「では今から超えましょう」と境界線の北側へムン大統領を誘った金委員長。

テレビを見ていた人たちは金委員長の余裕と頭の良さを感じた人が多かったようだ。

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会談場となる「平和の家」で満面の笑みを浮かべる両首脳。

お互いに失敗の許されない檜舞台だ。

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「平和の家」に入った金委員長は与正さんが差し出した万年筆で芳名帳にこのように書いた。

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『 新たな歴史は今から。 平和の時代、歴史の出発点にて』

果たしてこのメッセージをどう読むか?

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午前中の階段には金与正さんも同席した。

TBSの「ひるおび」が面白いところに注目していた。金正恩委員長が挨拶した後には全員が拍手していたのに、ムン大統領の挨拶後には誰も拍手をしなかったのだ。スタジオでは、ムン大統領のスピーチがつまらなかったからではないかと笑っていたが、確かにちょっと不思議なシーンだった。

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午前の会談を終え、一旦北側に戻る金正恩委員長の車を護衛する12人のSP。

お揃いのスーツに身を包んだ強そうなその姿はとても印象に残った。食糧難で弱っている北朝鮮の人のイメージとはまったく違う強靭な戦士たちだ。

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午後の日程は、板門店に記念の松を植樹することから始まった。この碑には『平和と繁栄を植える』と刻まれた。この地で北の兵士が脱北を試み、銃撃戦が起きたのはつい数ヶ月前のことだ。

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その後、両首脳は2人だけで庭を歩き、途中に用意された屋外のテーブルで30分以上2人だけで話し込んだ。主にムン大統領が話しかけ、金委員長は熱心に耳を傾けた。

今日のハイライトとも言えるこの2人だけの密談。この場で拉致問題の話も出たのだろう。

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37分とも言われる話し合いは、金委員長が席を立つ形で終わった。立ち上がったムン大統領の表情がちょっと困った顔に見えたのは私だけの印象だろうか。

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その後「平和の家」に戻った両首脳は「板門店宣言」と呼ばれる共同文書に署名し、カメラの前で抱擁した。

今後の交渉の元になるであろうこの「板門店宣言」の全文を、韓国「ハンギョレ新聞」から引用しておく。

 

「朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言」

大韓民国の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長は、平和と繁栄、統一を願う全同胞の一途な志向を込め、朝鮮半島で歴史的な転換が起きている意味深い時期に、2018年4月27日、板門店の平和の家で南北首脳会談を行った。

両首脳は、朝鮮半島にこれ以上戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8千万韓国民族と全世界に厳粛に宣言した。

両首脳は冷戦の産物である長年の分断と対決を一日も早く終息させ、民族的和解と平和繁栄の新しい時代を果敢に開き、南北関係をより積極的に改善し発展させていくべきだという確固たる意志を込めて、歴史の地・板門店で次のように宣言した。

1.韓国と北朝鮮は、南北関係の全面的で画期的な改善と発展を成し遂げ、断絶した民族の血脈をつなぎ共同繁栄と自主統一の未来を繰り上げる。

南北関係を改善して発展させることは、すべての同胞の一途な願いであり、これ以上先送りできない時代の切迫した要求だ。

(1)南と北は、わが民族の運命は自ら決定するという民族自主の原則を確認し、すでに採択された南北宣言とすべての解放を徹底的に履行することで、関係改善と発展の転換的局面を切り開いていくことにした。

(2)南と北は、高官級会談をはじめとする各分野の対話と交渉を早期に開催し、首脳会談で合意された問題を実践するための積極的な対策を打ち立てていくことにした。

(3)南と北は、当局間協議を緊密に行い、民間交流と協力を円満に保障するために、双方の当局者が常駐する南北共同連絡事務所を開城地域に設置することにした。

(4)南と北は、民族的和解と団結の雰囲気を高めていくために、各界各層の多面的な協力と交流往来と接触を活性化することにした。

内部では6.15をはじめ、南と北双方に意義がある日を機に、当局と国会、政党、地方自治体、民間団体など各界各層が参加する民族共同行事を積極的に推進し、和解や協力の雰囲気を高揚させ、外部では2018年アジア競技大会をはじめ、国際試合に共同で進出し、民族の知恵と才能、結束した姿を全世界に誇示することにした。

(5)南と北は、民族分断によって発生した人道問題を早急に解決するために努力し、南北赤十字会談を開催して離散家族・親戚の再会を含む諸問題を協議し、解決していくことにした。

さしあたって、8.15を機に離散家族・親戚の再会を進めることにした。

(6)南と北は、民族経済の均衡的発展と共同繁栄を実現するために、10.4宣言で合意された事業を積極的に推進し、1次的に東海(トンヘ)線と京義(キョンウィ)線鉄道と道路を連結し現代化して活用するための実践的対策を取ることにした。

2.南と北は、朝鮮半島で対立する軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するために共同で努力する。

(1)南と北は、地上や海上、空中をはじめすべての空間で軍事的緊張と衝突の根源となる相手に対する一切の敵対行為を全面的に中止することにした。

さしあたって、5月1日から軍事境界線付近で拡声器放送とビラ散布を含むすべての敵対行為を中止し、その手段を撤廃し、今後非武装地帯を実質的な平和地帯に作っていくことにした。

(2)南と北は、西海の北方境界線一帯を平和水域とし、偶発的な軍事的衝突を防止し、安全な漁労活動を保障するための実際的な対策を打ち立てていくことにした。

(3)南と北は、相互協力と交流、往来と接触が活性化することによる様々な軍事的保障対策を取ることにした。

南と北は双方の間で提起される軍事的な問題を遅滞なく協議・解決するために、国防部長官会談をはじめとする軍事当局者会談を自主開催し、5月中にまず将官級軍事会談を開くことにした。

3.南と北は、朝鮮半島の恒久的で堅固な平和体制構築のために積極的に協力する。

朝鮮半島の非正常な現在の停戦状態を終息させ、確固たる平和体制を樹立するのは、これ以上先送りできない歴史的課題である。

(1)南と北は、いかなる形の武力も互いに使用しないときに対する不可侵合意を再確認し、厳格に遵守していくことにした。

(2)南と北は、軍事的緊張が解消され、互いの軍事的信頼が実質的に構築されることによって、段階的に軍縮を実現していくことにした。

(3)南と北は、停戦協定締結65年になる今年、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で堅固な平和体制構築に向けた南北米3者または南北米中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした。

(4)南と北は、完全なる非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した。

南と北は、北朝鮮側が取っている主導的な措置が朝鮮半島の非核化に向けて非常に有意義で重大な措置であるという認識を共にし、今後それぞれ自分の責任と役割を果たすことにした。

南と北は、朝鮮半島の非核化に向けた国際社会の支持と協力に向けて積極的に努力することにした。

両首脳は定期的な会談と直通電話を通じて、民族の重大事を頻繁に真剣に議論し、信頼を強固にして、南北関係の持続的な発展と朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた良い流れをさらに拡大していくために、共に努力することにした。

さしあたって、文在寅大統領は今年秋に平壌を訪問することにした。

2018年4月27日
板門店
大韓民国大統領 文在寅
朝鮮民主人民共和国国務委員会委員長 金正恩 

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南北両首脳がカメラの前で話すこと自体、まさに歴史的な光景だった。

そして、2人の夫人も参加する形で晩餐会が開かれた。すべては世界に向かって演出された一日。日本のメディアでは批判的な論調が強いが、所詮は南北朝鮮の大イベントなのだ。

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そこで拉致の問題が語られなかったとしても仕方がない。

朝鮮の人たちにとっては平和の維持と民族の問題が何より重要なのだ。日本の求める課題は日本人の手で解決するしかない。安倍さんにはぜひ頑張ってもらいたい。

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今日は間違いなく南北朝鮮にとって「歴史的な一日」。「朝鮮半島にこれ以上戦争はない」と両首脳が宣言したのだ。

それを日本人も素直に歓迎しながら、その行方を冷静に見極めたいと思う。

焦りは禁物。

朝鮮半島の統一を求めるのではなく、2つの国が平和に共存する状況を当面の目標にするしかない。非核化を性急に求めれば、再び緊張状態に舞い戻るだろう。

 

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1件のコメント 追加

  1. comsickworks より:

    行く末を、見守りたいです。

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