中国の闇

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今年の年末年始は、香港、マカオ、深圳に行くことにした。

香港〜マカオ間に完成した世界最長の橋を渡り大変貌を遂げたマカオを30年ぶりに訪問、“中国のシリコンバレー”深圳で今話題のファーウェイやテンセントなどの本社を眺め、香港で年越しの花火を見るというのが、旅の目的だ。

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香港に行くのも30年ぶりだろうか。

今年9月には、中国の高速鉄道が香港まで乗り入れ、ますます巨大中国との一体化が進んでいるとも伝えられる。「一国二制度」の50年間をかけて、じっくりと香港を飲み込もうとする中国の計画が着実に進んでいるようだ。

その下準備として、図書館で参考資料をいくつか借りてきた。

「週刊エコノミスト」10月2日号では、「10疑問で解き明かす 中国の闇」という特集が組まれていた。パラパラとめくると、私が知らない最近の情報がいくつか出ていたので、このブログに記録しておこうと思う。

米中貿易戦争がメディアを賑わす中で、中国経済の変調は様々な面で表面化してきているようだ。

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その中で、一番気になったのは中国IT経済のシンボルとなっていたモバイル決済の変調だった。「疑問5 モバイル決済に異変? 規制強化で収益性が低下」という記事から一部引用する。

『スマートフォンのアプリを通じて決済を行う中国のモバイル決済ビジネスに変調の兆しが見えつつある。モバイル決済ビジネスの両巨頭であるアリババとテンセントの業績が2018年4〜6月期に減益となり、株価も下落基調に転じたことが一つの表れである。』

QRコードを利用した中国のモバイル決済は屋台や物乞いにまで浸透し、日本のはるかに先を行く。そのうちアリババ傘下アントファイナンシャルの「アリペイ(支付宝)」が5割強、「ウィーチャットペイ(微信支付)」などのテンセント提供のサービスが4割弱で圧倒的なシャアを誇っている。

そのビジネスモデルは、こうだ。

『両社のモバイル決済サービスの競争力が高い直接的な理由は、利用者や店舗が支払う決済手数料がほとんどかからないことである。モバイル決済サービスを提供する際のコストは、決済のために利用者がアプリにチャージした資金を運用することで賄うことがベースとなる。

両社はモバイル決済とその他のサービスを組み合わせることで収益化を実現してきた。アントフィナンシャルはアリペイに登録された利用者の学歴や職歴、資格といった個人情報に加え、決済の利用状況などを通じて利用者の信用力を判断し、算出した信用スコアに応じた融資を行うなど、決済以外の金融サービスの提供を通じて収益化している。

また、テンセントはこうした金融サービスに加え、中国版LINEと言われる無料通信アプリ「微信(ウィーチャット)」などのSNSを運営していることから、ウィーチャットペイを通じて、利用者の決済に関する購入データなどを分析し、利用者の特性に合わせた広告戦略を企業に提案している。

ウィーチャットペイは利用者が企業の広告を見た後にモノ・サービスを購入する際の決済手段となっている。つまり、テンセントは広告から購入に至るまでのプロセスを一気通貫で行うためのプラットフォームを提供し、企業から広告料を得ることで収益化している。』

しかし、こうして爆発的に中国社会に浸透したモバイル決済に対して、遅ればせながら17年以降、中国当局による監督・規制強化が始まっているという。

例えば、中国当局は18年に入って、テンセントが提供するゲーム部門への監督体制を強化し始めた。教育上好ましくないゲームなどを取り締まることが狙いで、新規ゲームの審査・認可が一時停止状態となった。これがテンセントのプラットフォームの魅力を低下させ、業績に悪影響を与えているという。

一方のアリババは、金融規制の強化が業績の足を引っ張っている。学生や多重債務者への融資に対する監督が厳格化され、個人情報保護に関する規制も強化されつつある。先進国では当たり前のことがようやく中国でも始まり、今までのように自由奔放に事業を拡大することができなくなってきているのだ。

これにより、18年4〜6月期決算は、テンセントが前年同期比2%減と四半期ベースで13年ぶりの減益となり、アリババは前年同期比41%の大幅減益となった。

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モバイル決済以外でも、様々な変調が見られる。

例えば中国政府が強力に推進している電気自動車(EV)。14年から購入補助金を導入し、今や中国は世界の販売台数の半分近くを占めるEV大国となっている。新興のEV用電池メーカーである中国のCATLは、量産効果で世界最大手にまで成長した。

『しかしながら、足元では不透明感も強まっている。

EV向け補助金の不正取得が横行していることが明らかとなり、政府が補助金の削減を前倒ししたことから、経営危機に陥る新興EVベンチャーも出始めており、今後も新エネ車の販売拡大が勢いを保つか疑問の声が上がり始めている。』

また住宅ローンが家計を圧迫している状況も懸念される。

『1世帯あたりの家計債務は17年末時点で可処分所得の107.2%。多くの家計は支出が収入を上回る赤字の状態にあり、「首の皮1枚でつながっている危うい状況」という。

支出の多くは住宅ローンの返済が占める。住宅ローンの可処分所得に対する割合は17年末で平均71%だ。銀行以外から借りる消費者金融の利用も急増している。金利は高いが、銀行が融資を絞っているため、一部の家庭はやむなく借り入れて住宅購入の資金などに充てていると言う。こうした公式統計で捕捉できないローンを含めると、実際の家計債務はさらに大きいと見られる。』

こうした家計債務は、消費に回るお金を減らし、中国経済に負のスパイラルをもたらす可能性もあると言う。

日本人がかつて経験したバブル崩壊の恐怖が中国に迫る。

右肩上がりの経済しか知らない世代は、必ずそのツケをどこかで払わなければならない。それはもう始まっているかもしれないのだ。

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習近平政権は2015年、「中国製造2025」というハイテク製造業新興のための野心的な計画を掲げた。AIやロボット、航空宇宙産業などを重点分野に、世界経済の覇権を目指している。

しかし、中国政府はここにきて投資を抑え軌道修正を図っていると言う。その原因は、過剰投資への警戒と対外関係への配慮だそうだ。猛烈な勢いで建設が進む中国の高速鉄道網もその例外ではない。すでに世界の高速鉄道の66%が中国に集中している。中国の国営鉄道会社「中国鉄路総公司」の債務は約80兆円を突破し、利息の支払いが営業利益を上回る状態にある。

厳しい米中交渉の中で、ますますの計画変更を中国は迫られる。

中国のバブルが崩壊する時、世界は未曾有のダメージを受けるだろう。

それは経済に止まらず、東アジア情勢を大きく揺さ振ることが予想される。

巨大な隣人の未来には無関心ではいられない。今度の旅では、熱気の裏にある変化の兆しにも注意して見てこようと思う。

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