<吉祥寺残日録>山梨の若き農業経営者「加賀見桃農園」を訪ねる #200728

朝5時起きで中央線に飛び乗り、山梨へ向かう。

八王子駅始発の各駅停車に乗り継ぐと、電車は山に吸い込まれて風景は一変した。

コロナが勢いを増す中での他県への移動は多少気が引けるが、そのために早起きをしてなるべく空いている電車を利用することにした。

今日も雨が降ったり止んだりの不安定な天気。

車窓から眺める山々には雲がかかり、幻想的な朝の風景を堪能する。

我が家を出てから1時間で圧倒的な自然の中へ・・・。

目的地である東山梨駅までは各駅停車でも2時間弱、ちょうどいい気分転換になる。

突然視界が開けて、甲府盆地が広がった。

勝沼、塩山。ぶどうと桃の名産地を過ぎ、目的地である東山梨駅に到着した。

駅には、加賀見さんが軽トラで迎えにきてくれた。

加賀見さんは三代続く桃農家。

しかし、自分の家の畑は母親に任せて、近隣の休耕地を精力的に借り上げて桃の栽培を拡大してきた。

案内された桃畑も借りた土地だった。

木々には赤く色づいたたくさんの桃がぶら下がっていた。

朝露に濡れた大きな実。

「なつっこ」という桃の品種だという。

「なつっこ」は、なつっこは「川中島白桃」に「あかつき」を交配して2000年に品種登録された桃で、山梨が全国一の生産量を誇っている。

皮ごと食べられるというのでもぎたての「なつっこ」を水洗いしてかぶりつく。

私がイメージする桃に比べると果肉が固く、ちょっとスモモのような味がした。

加賀見さんは仲間二人と一緒に去年「プレイストジャパン」という会社を立ち上げた。

カッコ良くて儲かる農業を目指して、未来の農業を模索している。

大学とも協力して、学生たちに桃やシャインマスカットを栽培させ、将来の農業者を育成する取り組みも始めている。

私が訪れた時、今年大学4年になるという3人の学生さんも桃の収穫を手伝っていた。

学生3人は就職活動を行なっておらず、「プレイストジャパン」への就職を希望しているという。

加賀見さんたちは、農協に出荷するだけの従来のやり方ではなく、企業と長期契約をして市場のニーズに合わせて商品を作る「マーケットイン」の農業を目指していて、自分たちで様々な企業や行政と交渉して販路を開拓しようとしている。

私は去年、農業関連のイベントで偶然彼らと知り合い、ぜひ応援したいと無給の顧問を買って出た。

荒削りだが、とても面白く可能性を感じる3人組だと思ったからだ。

加賀見さんは会社を立ち上げる前は、奥さんと2人で農園を切り盛りしてきた。

若者たちが手伝いに来てさぞ楽になったかと思ったのだが、逆に手間がかかるという。学生たちはまだ1年目。手取り足取り指導するよりも、慣れた自分と妻で全部やったほうが効率がいいというのだ。

それでも、桃農家を取り巻く環境は極めて厳しい。

加賀見さんのような30代の農業者は山梨でも数えるほどしかおらず、御多分にもれず高齢化が進んでいる。

新規就農者の大半は、すぐに収穫ができる野菜作りを選ぶため、手間のかかる果樹、特に傷みやすい桃作りを志す若者はほとんどいないのだ。

だから、手間がかかっても人材の育成から始めなければならない。

しかし、人の人生を背負うのは重いことだ。彼ら若者の新規就農者を雇うということは、その分だけ新たな仕事を作っていかなければならない。

社長である加賀見さんには、大きな夢と同時に大きな責任がのしかかっている。

私も少しだけ、桃の収穫を体験させてもらい、箱詰めの要領なども教えてもらった。

そして、今後どのようなビジネスを広げていくのか、思いつくままにアイデアを話し合った。

加賀見さんから示された課題は、少しだけ傷がついて農協が引き取ってくれない「クズ桃」を、加工して商品化すること。

会社を辞めた私は、一人のプロデューサーとして加賀見さんたちの事業を応援しようと決めている。

いろんなプランは思いつくが、予算もマンパワーも足りない中で、それを一つ一つ実現していくのは簡単ではない。

でも、桃やマスカットが食べられなくなっては困るので、私ができる範囲でお手伝いできればと思っている。

今日のお土産として、私が自分で収穫し箱詰めをした「なつっこ」3個をいただいた。

実に立派な真っ赤な桃。

この桃を使ってどんなビジネスが作れるか?

私の個人事業もそろそろ始動させねばならない時が来たようだ。

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