コンテンツ東京

きのう今日と東京有明にある国際展示場「東京ビッグサイト」に通っている。

映像・CG・キャラクターなど様々なコンテンツ制作者が出展する「コンテンツ東京」というイベントを見るためだ。

一昨年は「4K・8K」、去年は「VR」「動画配信」が注目された。そして今年は何と言っても「AI」だ。

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今年から始まった「AI・人工知能EXPO」。去年までとは桁外れの人が押しかけている。

通常のコンテンツビジネスに関わる人は限られるが、人工知能はあらゆる業種を巻き込む。技術系の人だけでなく、クリエーターや人事総務系、営業系に至るまで様々なポジションの人たちが関心を寄せている。

つまり今の「AIブーム」は人手不足や働き方改革とも結びつき、労働の効率化・高度化を期待するものとなった。これは全ての人たちに影響するかもしれず、しかも実態はよく分からない。だからこうした展示会に足を運び、少しでも情報を仕入れようと考えるのだろう。

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人工知能を扱うエリアには大勢の人が集まり、身動きも取れないほどだ。みんな真剣に説明に耳をすます。

私も人工知能に関するセミナーに参加し、自分の仕事に何か役立つか考えながら聞いてきた。

その結果おぼろげながら理解したのは、今注目されている将棋のようなゲームの世界ではAIはすでに人間を凌駕するレベルになったが、より複雑な実社会ではまだまだ実用化できるものはないということだ。特に創作という分野では、「物理学におけるニュートン力学以前の段階にある」とある専門家が指摘していた。

一番のポイントは「評価」の問題だという。

ゲームの場合、「勝敗」という絶対的な評価基準がある。しかし、例えば小説をAIに書かせた場合、小説の良し悪しを測る評価基準を設定するのが難しい。

そのためEXPOの会場で展示されているのは、「名ばかりAI」といったものばかりだ。

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テレビでも紹介されていたAIを使った受付サイネージ。アニメのキャラクターが音声認識で質問に答えてくれる。しかし、これもあらかじめ決められた質問にしか対応できない。自分で学習していくディープラーニング機能は搭載されていない。

要するに従来の受付サイネージと変わらないのだが、「AI」と名前をつけると人が群がる、それが現状なのだ。

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まだまだ始まったばかりの人工知能だが、将来は確実に私たちの生活を変えていくだろう。だからあらゆる業種の人たちが人工知能の研究を始めている。

その中で私が関心を持ったプロジェクトが2つある。

一つはソニーなどが中心になって20年前から続けている「ロボカップ」。「2050年に人型ロボットでワールドカップ・チャンピオンに勝つ」という目標を掲げ、世界中の研究者が毎年世界大会を開いて技術を磨いている壮大なプロジェクトだ。今年の世界大会は7月名古屋で開かれる。

ソフトバンクの「pepper」はこのロボカップ用に開発されたフランスの人型ロボットを買収したものだということを初めて知った。また、このロボカップ用に開発された別のロボットはアマゾンに買収され、アマゾンの巨大倉庫の自動運搬に利用されている。

そして2年前からは「アマゾン・ピッキング・チャレンジ」という新たなコンテストが生まれた。棚に置かれた商品を正確に取り出すピッキング・ロボットの開発を目指すものだ。日本の大学やベンチャーもこのコンテストに参加している。今年は「ロボカップ世界大会」と同時に名古屋で開催される予定だ。

「ロボカップ」や「ピッキング・チャレンジ」ではもはや人間がプログラムするのではなく、機械が自ら学習しより効率的な動きを見つけていく人工知能が使われる。

ロボカップのチームでは、AIがノーベル賞を目指すという新たなプロジェクトにも取り組んでいる。

もう一つ、私が注目したプロジェクトは「手塚治虫デジタルクローンproject」というものだ。

「AIは手塚治虫になれるか?」をテーマに、「創造するAI」「心を持ったAI」を目指す試みだ。手塚プロの手塚眞さんのほか、日本を代表する人工知能の専門家が参加する大真面目なプロジェクトだ。こうした研究が進むと、人間の脳の構造だけでなく、想像力や感情がどのようにして現れてくるのか人間そのものについての理解にもつながるだろう。

まだ始まったばかりのプロジェクトだが、とても興味深い。

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一方、従来のコンテンツの方は今年もVR(ヴァーチャルリアリティ)が中心だが、去年の熱気は感じられない。VR元年と言われた去年、多くの会社がVRコンテンツに挑戦したが、これをビジネスにする道が見つからないのだ。

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ゴーグルをかけて歩きながらお化け屋敷を体験するコンテンツなどが展示されていて行列ができていたが、これにしても遊園地以外に使い道はなさそうだ。

VRももっと簡便な装置ができ、解像度が飛躍的に上がれば一気に利用が拡大する可能性があるが、まだしばらく時間がかかりそうだ。

一方で、モーションキャプチャーの技術が進化し、超リアルなアバターが簡単に作れるようになってきた。すでにCMなどで使われている。

立体映像ホログラフも、ぼんやりしたこれまでのイメージを覆す鮮明なものが登場してきた。

こうした新しい技術を見ると、これを使って何か作ってみたいと思う。やはりコンテンツ作りは楽しい仕事である。

そんな夢いっぱいの「コンテンツ東京」で、ちょっと嫌なシーンがあった。今朝開かれた「日中韓文化コンテンツ産業フォーラム」のセミナーを聞きに行った時の光景だ。

「日中韓文化コンテンツ産業フォーラム」は、日中韓3ヶ国のコンテンツ産業に関係する官民が集い、コンテンツ政策や動向に関する継続的な情報交換及び各国産業界間のビジネスチャンス創出を目的として2002年より実施されている国際会議だという。

セミナーには、「君の名は」のプロデューサー川村元気氏をはじめ、中国、韓国のクリエーターも参加するというので楽しみにしていた。ところが、同時通訳のシステム不具合でぐちゃぐちゃになってしまった。中国の代表はすぐに自らが連れてきた通訳にマイクを渡し、逐語訳に切り替える柔軟な対応を見せた。それにひきかえ日本側の主催者は、トンチンカンな対応に終始し、中国、韓国から招いたゲストへの謝罪もきちんとされないまま、予定していたパネルディスカッションは中止となった。

その場にいていたたまれない気持ちになった。機械の故障が起きたことも残念だったが、その後の対応ぶりが「おもてなしの国」を標榜する日本としてはあまりにお粗末だったからだ。

やはり日中韓の間には、何か不幸な出来事が起きる運命なのか。

コンテンツビジネスでも、三ヶ国の関係が強化できればもっと豊かな文化交流ができると思うだけに、返す返すも残念な出来事だった。

また明日もビッグサイトに行く予定にしている。

 

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