ミモザの日

体調が万全ではないので、今日は早めに帰宅し休養することにした。

妻がたまたま見ていた番組を一緒に見る。

NHKの「世界で一番美しい瞬間」というドキュメンタリー番組。今日のテーマは「ミモザ 愛を伝える魔法のとき イタリア ローマ」だった。

何気なく見ていると、これが興味深い。

イタリアでは3月8日を「女性の日」と呼び、女性に感謝してミモザを贈る習慣があるという。番組では、ミモザにまつわるいくつかの物語を取材し構成している。母への感謝、恋人へのプロポーズ。そしてミモザの村として知られるイタリア北西部のセボルガ村が紹介される。

土地がやせたセボルガ村の丘陵地は、ミモザで黄色く染まっていた。一家総出で行うミモザの収穫風景。高枝ばさみで適当に枝を切り、乱暴に地面に落としていく。切ったミモザの枝を家に持って帰り、村の女性たちが適当に剪定して箱詰めしていく。日本人から見ると、雑な仕事ぶりだ。それでも、3月8日は多くのイタリア人がミモザを買い求める。

その様子を見ながら、これなら私でもできるかもしれない、と思った。

岡山の畑にミモザの木を植え、年に1回収穫・出荷する。ぶどうを作るよりもずっと手間がかからない。

私がそんな思いつきを妻に話すと、意外にも妻が即座に反対しなかった。妻もミモザが好きで、春先になると花屋で買ってきている。そしてぶどうに比べて手間がかからないことも同意した。

「でも、ミモザってすぐ虫がつくのよね」と妻が言った。

「食べ物じゃないんだから、しっかり消毒すればいいんじゃない」と私は答えた。

岡山の畑いっぱいに黄色いミモザの花が咲き誇っている光景を脳裏に思い浮かべた。綺麗だろうな。長い冬を抜け、まだ桜が咲く前の3月、鮮やかな黄色の花をつけるミモザは、一足早く春を感じさせてくれる「幸せの花」だ。3月にミモザを贈るという風習を持つイタリア人は、さすが人生を楽しむ天才である。

問題は、日本ではイタリアのようにミモザを贈る習慣がないことだ。

でもネットで調べてみると、日本でも最近、3月8日を「ミモザの日」と呼び様々なイベントが行われていることがわかった。

私は意識したことがなかったが、3月8日は「国際女性デー」なのだそうだ。その起源は1904年、ニューヨークで女性労働者が婦人参政権を求めてデモをしたことに因むという。1917年には、ロシアの首都ペトログラードで女性労働者を中心とした国際女性デーのデモが大規模な民衆蜂起に発展。ロシア革命の引き金となったのだそうだ。

では、なぜイタリアなのか? なぜミモザなのか?

そんな疑問に答えてくれるブログを見つけた。イタリア家庭料理研究家・山中律子さんのブログから引用させていただく。

『そもそもなぜイタリアではミモザの日なのかというと…

実は、戦時中のファシズム政権下においてもイタリアではこうした女性運動の精神は密かに生き続け、パルチザン闘争における女性たちの反戦行動へと受け継がれていく。そして1944年に世界に先駆けてイタリア女性連合を設立することになるのだが、彼女たちが、戦後に初めて迎える3月8日を「Festa della donna」として盛大にお祝いするにあたり、何かわかりやすいシンボルをと選んだのが、3月の初めに街中を一斉に春色に染めるミモザの花だったとか。そしてその後のフェミニズム運動とともに、瞬く間に国民的行事になったと言われている。

つまり、国連が1975年に国際女性デーと定めるよりもずっと前から、3月8日は「女性のみなさん、おめでとう」とミモザを手にし、国をあげてお祝いしていたというわけだ

イタリアの歴史や文化を辿ると、実は日本と同じくらい、もしかしたらそれ以上に封建的で、男尊女卑の社会だったはずなのに、戦後のイタリアは、日本がまだ焼け野原の頃に早くも女性が参政権を獲得し、70年代に入れば離婚法、中絶法と次々に成立。結婚後の女性の姓についてもとっくに旧姓を自由に選べるようになっているが、日本なんて20年前に私が結婚した当時から夫婦別姓についてやいのやいのとやっているくせに結局何も進んではいない。

イタリアの先人女性たちは、ファシズムの脅威と戦いながらも決して希望を忘れず、一歩一歩を誇り高く歩み続けてきた、その強さが、今のイタリア女のそこはかとない余裕を作り上げたに違いない。』

日本にもっと「ミモザの日」が定着し、女性にミモザを贈って感謝を伝える習慣が根付くと素晴らしいと思った。

日本発祥の「ホワイトデー」というインチキイベントに代わり、「ミモザの日」「女性の日」を日本で普及する活動を行う。これって老後の活動としては、意味があるのではないだろうか。

珍しく妻が賛成してくれている。

ひょっとするとひょっとするかもしれない。

まずは岡山の畑にミモザの木を植えることから始めよう。そのためには、86歳の伯母を説得する必要がある。

伯母は何と言うだろうか?

2件のコメント 追加

  1. wildsum より:

    いいですね。ミモザの日を広げて、女性に感謝しましょう。「女性の方は土俵から降りてください」と、女性差別した相撲界の人々にも響いてくれるといいですね。

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