テレビの未来

AIの波はテレビの世界にもやって来る。いや、積極的に取り込むべきだ。そんな問題意識を持ちながら、NHK放送技術研究所が主催する毎年恒例の「技研公開2017」に行って来た。

NHKの技研は民放の技術陣がうらやむ潤沢な予算を使い、未来の放送技術を研究開発するテレビ業界最大のシンクタンクだ。

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去年まではNHKだけが必死で推進している8K技術の展示がメインだった記憶があるが、今年はいきなり「放送 × AI」というテーマの展示から始まった。

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では、AIを使って何をするのか?

中身はまだ大したことはない。

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例えば人が話している言葉をAIが読み解き自動的に字幕に変換する。

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画像解析技術を使って、映像に映っている人の顔を認識したり、文字を読み取って自動的にデータベースを作る、そんな程度だ。特には驚かないが、テレビ業界というのは驚くほどに労働集約型の産業としてこれまで運営されてきたため、もしこうした技術が導入されただけで、末端で働くADさんたちの雑用は大きく改善されるだろう。倉庫に眠る膨大な映像素材の管理や活用も飛躍的に進むと考えられる。

AIに関するシンポジウムも聞いてみたが、AIがテレビをどう変えるのか、具体的なイメージは見えていない。

そんな中で「シンギュラリティ」という言葉を覚えた。最近よく聞く言葉だが意味を理解していなかった。

「シンギュラリティ」とは、『人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点(技術的特異点)、または、それがもたらす世界の変化のことをいう』のだそうだ。つまりAIが人間の能力を超える未来がいつか、そしてその時何が起きるのかということだ。

『米国の未来学者レイ・カーツワイルが、2005年に出した“The Singularity Is Near”(邦題『ポスト・ヒューマン誕生』)でその概念を提唱し、徐々に知られるようになった。カーツワイルは本書で、2045年にシンギュラリティが到来する、と予言すると共に、AIは人類に豊かな未来をもたらしてくれる、という楽観的な見方を提示している』という。

まあ、何事も使い方だ。

AI以外では・・・

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2020年に向けて開発が進む新たなスポーツ中継の技術。

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厚さわずか2ミリ、シート型の有機EL8Kディスプレー。

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CMを見るとポイントがもらえる「ハイブリッドキャスト」。

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テレビを一緒に見ながら会話してくれるロボットの開発。

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スマホを使って立体映像を見る技術。

などなど、実用化されるかされないかわからないような技術がいろいろ展示されていた。こうした技術を見ていると、これまで考えなかったようなアイデアも浮かんでくる。視聴者に受け入れられるかどうかは、最終的にはコンテンツだ。

さて、技術といえば・・・

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先日、ドコモが東京スカイツリーで行っている「5G」の映像伝送実験を見てきた。スカイツリーの上に取り付けた4Kカメラの映像を地上に5Gという次世代のモバイル技術を使って伝送する実験だ。

現在この5Gの開発競争が世界中で行われている。これが実用化されると、4K、8Kの高精細映像もモバイル端末でストレスなく見ることができる。すべての物をインターネットにつなぐIoT社会の実現には不可欠の技術だ。

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ただ実際には、こんな大きな機械を使っている。今後これを超小型化しなければモバイル端末では使えない。目標の2020年実用化に間に合うのか、かなり厳しそうだ。

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しかし、一番の問題はコンテンツだ。スカイツリーからの4K映像をただ見せられても、特に面白くもない。

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だから、立ち止まってモニターを見る人はほとんどいない。そういうものだ。

技術を開発するのも大変だろうが、その技術の特性を活かし、なおかつ視聴者が驚き見たくなるコンテンツを開発することはさらに難しい。コストの問題もある。

誰もがコンテンツの発信者になれる時代に求められるコンテンツとは何か?

模索は果てしなく続く。

そんな中、今週一つの記事が目に止まった。英フィナンシャルタイムズの記事だ。

「欧州連合(EU)加盟国の文化大臣らが動画コンテンツの域内規則を見直すことで合意し物議を醸している」という記事だ。

『動画が「不可欠」な機能となっているSNSプラットフォームは、EUの放送会社に適用されるものと同じ規則の一部に従わなければならなくなる。EU加盟国はこれにより、ヘイトスピーチやテロ扇動といった問題についてインターネット企業を取り締まる自由裁量が高まる。』

つまり、放送だけを規制しても大量の動画がその法律の外で流れるため、SNSにも同様の規制をかけようという議論だ。

また、世界的に急拡大している動画配信についても・・・

『米ネットフリックスなど、オンデマンドの動画配信サービスを手掛ける企業も、欧州のコンテンツを配信する量を定める新たな規則の影響を受ける。23日に土壇場の交渉が行われた後、EU諸国の文化大臣は、そうしたサービスのコンテンツの30%は欧州の動画でなければならないとの規定に合意した。司法権に関する規則の修正によって、ネットフリックスはフランス国内での事業の売上高の最大26%相当を課税される可能性がある。現状では、EU法は各国は国内事業について自国映画産業の振興目的の税金のみを徴収できると規定している。だが、新たな提案は各国に対し、ただ単に当該国に顧客がいるだけでオンデマンドの動画配信サービス会社に課税することを認める。』

ヨーロッパでは文化の問題はデリケートだ。ユーロディズニーがフランスにオープンした際も、「文化侵略」として大きな議論となった。そういう意味では、世界が少し海外の文化に厳しい中国のルールに近くなる兆候なのか。

インターネットの普及で一時は消えるといわれたテレビだが、多くの人がテレビを共通の話題としながらSNSで会話を楽しむという「住み分け」が定着してきた。「YouTube」の動画も見るけれど、高品質で信頼できるテレビ番組はこれまで通り見る。そんな時代になった。

さて、5年後、10年後、テレビはどんな形になっているのだろうか。

1件のコメント 追加

  1. wildsum より:

    singularity 特異性、これがAIが人間の知能を越える時という意味で使っているんですね。映画の「ターミネーター」のような時が来るんですね。機械が人間を支配する時代が来るかもと思うと、ちょっと恐ろしいですね。

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