🇭🇰香港〜🇨🇳中国/深圳 2019年6月26日〜28日
香港の中国化が進んでいます。そのシンボルの一つが、去年9月に香港に乗り入れた「広深港高速鉄道」です。
中国政府が推し進める高速鉄道網に香港が組み込まれ、香港と北京が9時間で結ばれました。
深圳への出張に合わせ、初めて広深港高速鉄道に乗ってみました。
香港西九龍駅
広深港高速鉄道の香港側の起点となるのが「香港西九龍駅」です。
高速鉄道のターミナル駅として2018年9月23日に開業したこの駅は、ただの駅ではありません。ここは、一国二制度の香港特別区の中に作られた中国の飛び地でもあるのです。
香港西九龍駅へは、地下鉄「九龍駅」から乗り換えました。
九龍駅には香港の地下鉄「MTR東涌線」のほか、空港と香港中心部をつなぐエアポートエクスプレス「機場快線」も停車します。つまり、香港国際空港から深圳に向かう人は機場快線で九龍駅で降りて、香港西九龍駅で高速鉄道に乗り換えるという新しいルートが登場したのです。

地下鉄「九龍駅」の改札を出ると、「高速鉄路」と書かれたサインが現れます。
矢印に従ってエスカレーターを上がると、そこは真新しいショッピングモールになっています。

大理石の真っ白な床が印象的なモールには世界のブランドショップが並んでいます。
さらに進んでいくと・・・

スケートリンクがありました。
ちょっと唐突な印象ですが、気にせずに進むと香港西九龍駅にたどり着きます。

チケット売り場は、中国本土の駅に比べると空いていました。

当日の切符と先々の切符で購入の列が分けられています。

切符は難なく買えました。
香港西九龍駅から深圳の中心にある「福田駅」までは、二等席で77香港ドル(約1068円)。意外にリーズナブルな価格設定で、香港の交通カード「オクトパス」での支払いも可能でした。
ちなみに深圳には、深圳北駅と福田駅があり、福田駅の方が便利です。切符売り場の職員には「フーティエン」で通じました。

切符を購入したら「離港」と書かれた案内板に従って出国手続きに進みます。

香港と深圳の代表的な越境ルート「罗湖」に比べると、真新しく広々としていて、ガラガラです。
ここでまず、香港の出国審査を受けます。

香港を出国すると免税店が並ぶ通路がありました。
ここは、香港と中国の中間地点、空港の免税エリアに当たります。

この免税エリアの先に、中国側の入国審査が待っています。

黒と黄色のラインが、香港と中国の境界線です。
地理的には香港特別区の中ですが、ここから先は中国の施政権下に置かれたエリアということになります。
看板のデザインもいかめしく、これから中国に入るという気分が味わえます。
実際に、入国審査は中国式で、係官によるパスポートチェックのほかに、機械による指紋認証と顔認証の検査があります。

中国への入国審査を終えると、広々とした待合室が待っています。
空港のような巨大施設ですが、人が少なくガランとしています。

改札は列車が出発する15分前からなので、それまではこの待合室で時間を潰します。

ちなみにこの待合室に入れるのは高速鉄道を利用する客だけですが、切符売り場があるエリアから眺めることはできます。
ここから見ると、この駅が中国の威信を誇示する巨大施設であることがよくわかります。

切符の右上にゲート番号が書かれているので、出発の15分前には改札の前に行列ができます。

改札の上には、列車の番号や出発時間が表示されるので自分が乗る列車かどうか確認しましょう。
改札機は日本の新幹線のものと同じで、切符を入れ、出てきた切符を抜き取って通ります。
自動改札機は、出発の15分前に開き、出発の5分前には閉まると書いてありました。直前の駆け込み乗車はできないようなので気をつけてください。

改札を通ると、ホームに降りて、切符に書かれた車両の指定された席に座って出発を待ちます。
ホームは殺風景で、駅弁を売るような店はありません。

車両は1列5席。
これも日本の新幹線と同じです。
ただ、日本と決定的に違っていることがありました。
乗客が少なくガラガラなのに、私は最前列の通路席。隣には若いカップルが座っています。わざわざお邪魔虫のようにカップルの隣に座らなくても、ほとんどの席は空いているのです。
それが気になって周囲を見回ると、私たちがいる一角だけ乗客が集中しています。
私がいる3号車は、前寄り数列だけ乗客がぎゅうぎゅうに座っていて、後方には誰もいません。

さらに、前方の2号車を見ると、何と1人の乗客も乗っていないではないですか。
車両の間では2人の乗務員が暇そうに雑談しています。彼女たちはチケットをチェックするわけでもなく、お弁当を売るわけでもなく、一体何をするために配置されているのだろうと不思議に思いました。

一番前のシートの前には、テレビモニターが設置されていました。
流れているのは、国営放送「CCTV=中国中央電視台」の歌番組です。
モニターをぼんやり眺めているうちに、列車は動き出しました。定刻運行です。
ただし、私たちの座っているのとは反対方向、背中側に走ります。日本のように、進行方向に向くようにシートの向きを変えるような手間はかけないようです。
でも、そんな些細なことを気にしている間に、深圳の福田駅に到着しました。

香港を出発から、わずか14分しか経っていません。
途中はほぼずっとトンネルなので景色を楽しむことはできませんが、時間を節約し人混みを避ける意味ではこのルートは使えると思いました。

福田駅は、2015年開業ですが、利用客が少ないせいかまだピカピカでした。
こちらは巨大な地下駅になっていて、地下鉄4路線に乗り継ぎが可能です。
ただし、無駄に巨大なので、結構地下鉄の改札まで歩きます。
私は「购物公园站」まで地下道を歩いて地下鉄1号線に乗り、ホテルに向かいました。
深圳・福田駅
深圳からの帰路も高速鉄道を使いました。

帰りは地下鉄2号線「福田駅」で降り、高速鉄道に乗り換えます。
地下鉄の改札を出て、「火車駅」と書いた案内板に従って進むと・・・

だだっ広い、ピカピカの地下通路に出ます。
わかりにくいですが、ここが高速鉄道の「福田駅」です。

キョロキョロすると、壁に自動販売機が並んでいました。
とりあえず試しにタッチパネルを触ってみると、香港西九龍駅の文字が出てきました。これをタッチすれば買えそうだと思ったのですが、ダメでした。

自動販売機で切符を買うためには、中国のIDカードか在留許可証が必要なのです。
私たち外国人は、通常の切符売り場で切符を買うしかありません。

切符売り場は、自動販売機の角を曲がった目立たない場所にありました。
こちらも予想外に空いています。
広州など中国本土に向かう高速鉄道を利用する乗客は、本数の多い深圳北駅を利用するのでしょう。福田駅は主に深圳から香港に行く乗客が利用する駅で、まだ市民に定着していないようです。

福田駅から香港西九龍駅までの切符は、二等席で68元(約1075円)でした。

ちなみに、午後2時、3時ごろは、20〜30分に1本の間隔で、香港行きの列車が運行しているようでした。

切符を買ったら、エスカレーターで下に降ります。
ちょっと案内板がわかりにくいので気をつけましょう。

香港西九龍駅とは違い、福田駅では出入国管理は行われません。
手荷物検査を受けて待合室に入ると、改札が開く15分前まで待つだけです。

ここで重要なのは、香港西九龍駅では、列車の出発前に出入国審査があるため時間の余裕を見ておかないといけないけれども、福田駅では出発の15分前に駅に到着すれば十分だということです。

福田駅にはホームドアが設置されていました。

帰りの車両は、室内が明るくモダンな印象でした。
指定席のバランスも行きの時のような不自然さはなく、車両全体に適度にばらけて乗客が座っているように見えました。
そして列車は定刻に出発し、14分で終点、香港西九龍駅に到着しました。

ここからは、来た時の逆。
まずは、中国の出国審査を受け・・・

中国と香港の境界線を越え・・・

免税エリアを通り抜けて・・・

香港側の入国審査を受けます。
そうそう、外国人の場合、中国側と香港側それぞれに出国カードや入国カードの提出が求められるので、用意されているカードに記入してからカウンターの列に並んでください。

香港側に出たら、地下鉄の九龍駅に乗り継ぎ、目的地に向かいます。
私は地下鉄「東涌線」で香港駅に向かいましたが、九龍駅から機場快線に乗り継いで直接、香港国際空港に向かうことも可能です。
香港と深圳をつなぐ新ルート「広深港高速鉄道」。
香港市民にとっては、中国化の象徴かもしれませんが、私たち外国人旅行者にとっては一つの選択肢にはなりそうです。