🔶「旅したい.com」から転載
<中国>古都の風情を楽しむ散歩道!杭州駅から河坊街を経て西湖十景の柳浪聞鶯へ
🇨🇳中国/杭州 2019年9月15日
中国の古都・杭州。いにしえから西湖の美しさが多くの人々を魅了しました。
今では浙江省の省都で、人口およそ800万人。
アリババが本社を置く中国有数のIT先進都市でもありますが、古都の風情を味わいたいなら、オススメのルートがあります。
上海などからの列車が到着する杭州駅から、古い街並みが残る通りを抜け、西湖の畔に至る約2キロほどの散策ルートです。私が偶然歩いたオススメの散歩道をご紹介します。
建国南路から五柳巷歴史街区へ
杭州にはいくつもの鉄道の駅がありますが、最も中心部から近いのが杭州駅。
上海をはじめ中国各地からの列車や通勤列車が発着し、あふれるほどの人々が行き来するターミナル駅です。
杭州駅からは地下鉄やバスにも乗り換えが可能ですが、西湖まで歩いてみることにしました。
駅から西に向かうと、「建国南路」という通りと交差します。その通りを南に下ると、古い街並みが現れました。
白壁の住居に挟まれた狭い路地。
近代的なビル群とは違った中国らしい街並みにちょっとうれしくなります。
木造の店舗の2階では、おばちゃんが洗濯物を取り込んでいたりします。
家の前では、上半身裸でゲームに興じる人も・・・。
一昔前の中国の光景がそこには残っていました。
建国南路から一本西側に入ったところを水路が流れています。
「東河」です。
さほど広い水路ではありませんが、水上バスが運航していました。
柳の下をゆっくりと走る水上バスも悪くなさそうです。
ここが水上バスの乗り場なのでしょうか?
信号機が立つ河岸に人々が待つ姿が見られます。
この東河の両サイドには、遊歩道「東河便道」が整備され、ちょっと懐かしい景観が再生されていました。
この地区は、「五柳巷歴史街区」と呼ばれているようです。
白壁の住宅、柳並木、その中を流れる水路。中国・江南の伝統的な風景がここにはあります。
ちょっと小洒落た店舗もあります。
瓦屋根に蔦が絡んで風情のある古民家カフェの趣があります。
都会の喧騒を逃れてゆっくりとした時間を過ごすのにはいい場所かもしれません。
古くからの繁華街・河坊街
東河便道を南に進むと大通りにぶつかります。
杭州の中心部を東西に貫く「河坊街」です。
河坊街を西に進み、中河高架との交差点では地下通路を通って地上に上がると・・・
多くの人が行き交う賑やかな街に出ました。
杭州でも有数の人気スポット「河坊街(清河坊)」は通常、中河高架から華光路までの500メートルの歩行者天国を意味します。
杭州が都だった南宋時代を再現した街並みは、2001年に修復されました。
多くの人が行き交う河坊街には、多くの飲食店や土産物屋が並び、布袋様の銅像も・・・。
まるでテーマパーク。
個人的にはあまり好きではありません。
それでも中国の剣が売られていたり、名産のシルク製品など杭州伝統の工芸品も買うことができます。
歴史を感じさせる建物がちょこちょこ残っていて、そんな建物を選んでのぞいてみました。
見所もあります。
そんな一軒が、獅子の像が店を守る「回春堂」。
1649年創業の老舗薬局です。
いかにも中国といった伝統的な店内は多くの客で賑わっていました。
様々な漢方薬やダイエット茶などが売られています。
河坊街のシンボル「胡慶餘堂」
そして、河坊街で最もインパクトがあるのがこのお店。
1878年創業の老舗漢方薬店「胡慶餘堂」の巨大な壁です。
通りに面した白壁に黒い文字。この目をひく壁は、当時としては最先端の広告手法だったのでしょう。
1874年北京の同仁堂と人気を二分する漢方薬局で、重要文化財にも指定されています。
店内は博物館にもなっています。
一部有料エリアもありますが、お店に入るだけなら無料です。
店内に飾られた一枚の肖像画。
描かれているのは、胡慶餘堂の創業者、胡雪巌です。
どうですか? この漢方。
詳しいことはわかりませんが、見た目のインパクトは必見です。
こちらは中国では古来より万病の薬とされる「冬虫夏草」です。
漢方の生薬や薬膳料理の材料として珍重されるキノコの一種ですが、値段を見てビックリ。なんと5万8000元、日本円で約90万円です。
そして店の内部も一見の価値があります。
高い天井はガラス張り。壁に窓はなく、天井から明かりを取り込む構造になっています。
胡慶餘堂には、視察に訪れた多くの要人の写真が飾られていました。
中には、若かりし日の習近平さんの写真も・・・。
古都杭州を感じたいならば、胡慶餘堂は絶対オススメです。
呉山を眺めながら
河坊街をさらに西へと進んでいくと、地下鉄の工事で通行止め。
杭州では今、たくさんの地下鉄新線が同時並行的に建設されています。
広大な工事現場を迂回していくと・・・
塀の向こう側に山が見えます。
杭州の南にある呉山です。
山頂に建つ楼閣。
西湖新十景の一つ、「呉山天風」と呼ばれる景勝地です。
しばらく歩いていると、「献血屋」と書かれた建物がありました。
普通の献血センターのようですが、「献血屋」という名前にはちょっとヤバい響きがありませんか?
そして西湖の近くまで歩いてくると、おしゃれなお店もちらほら。
植木鉢で蓮子を育てる光景も、とても中国的です。
最近整備されたと思われる歩道沿いには、ピンクのバラが一輪咲いていました。
西湖十景の一つ「柳浪聞鶯」
河坊街の西端は、緑あふれる公園に行き着きます。
入り口には、美しい鳳凰のレリーフ。
その先の門には、「柳浪聞鶯」と書かれた額が掲げられています。
柳浪聞鶯公園は、西湖東岸に広がる広大な公園。
原型は南宋時代の聚景園で、風に揺れる柳と枝でさえずるウグイスの声を風流に表し「柳浪聞鶯」と呼ばれるようになりました。
世界遺産にも登録されている風光明媚な西湖の中でも特に美しい10の景勝地を、南宋の人たちは「西湖十景」と呼びました。
しかも、その美しさを4文字の漢字で表現しているのが、いかにも中国です。
断橋残雪、平湖秋月、雷峰夕照、花港観魚・・・。
本当はこの10カ所を回る予定でしたが、他のテーマを優先したため今回は結局ここ1カ所しか回ることができませんでした。
中国の公園にしてはとてもよく整備された美しい遊歩道を歩いていくと、西湖を眺めることができる茶館がありました。
「聞鶯館茶楼」。
館内でもお茶を楽しむことができますが、西湖を望むテラス席でゆっくり過ごすことも可能です。
この地方名産の「龍井茶(ろんじんちゃ)」を注文しました。
中国には珍しい緑茶です。
木のお盆に乗せられて出てきた龍井茶には、小さなリンゴのようなものが添えられていました。
なつめの実です。
本当は、このテラスでお茶を飲みながら、沈みゆく西湖の夕日を眺める計画でしたが、残念ながらこの日は雲がかかり、夕日を拝むことはできませんでした。
それでも気持ちのいい風がテラスを吹き抜け、歩き疲れた体を癒してくれます。
お茶を飲み終わり、西湖のほとりまでやってきました。
湖の多い日本から来ると、風光明媚とされる西湖も普通の湖に見えましたが、湖畔にこうした楼閣があることによって、中国ならではの風情を感じさせます。
この翠光亭の床にも、鳳凰。
こうして風景を切り取ることで、湖がより一層美しく見えます。
湖畔まで来ると、風がより強く吹き、柳を揺らします。
季節のせいでウグイスは鳴いていませんが、ここで時を過ごすと、「柳浪聞鶯」を私でも感じることができるような気がしました。
あたりが暗くなり、市街地のビル群が明るく輝き始めます。
杭州駅から西湖へ。
もし時間があれば、ゆっくりと歩いてみることをオススメします。