🇳🇿ニュージーランド/オークランド 2020年1月1日~3日
「シティ・オブ・セイルズ(帆の町)」。
ニュージーランド最大の都市オークランドがそう呼ばれるのは、ヨットやボートを所有する市民の数が人口あたりで世界一だからです。
実際に海辺に足を伸ばせば、至る所にヨットハーバーがあります。
そんな海を楽しむ街を訪れたからには、私たちも船に乗らないわけにはいきません。
観光客にも安価で手軽に楽しめる船の旅をご紹介します。
オークランド船旅の起点はダウンタウン北端にある埠頭「クイーンズ・ワーフ」

オークランドの摩天楼に沈む夕日。
こんな景色を眺めようと思ったら、デボンポート行きのフェリーで往復するのがオススメです。

デボンポートは島ではなく、ワイテマタ湾を隔ててオークランドのダウンタウンの北側、対岸にある小さな街。
古くからヨーロッパ人が入植した場所で、ビクトリア朝の建物も残る落ち着いた街です。

船が出るのは、ブリトマート駅近くにある「クイーンズ・ワーフ」というフェリー乗り場。
目抜き通りのクイーンズストリートを北にまっすぐ進んだ突き当たりにあって、煉瓦造りの古い建物が目印です。

近くには、巨大なクルーズ船がいくつも停泊していて、この船で旅行していると思われる大勢の乗客たちが港に出入りを繰り返していました。

そんな港の一画にあるのが、「ダウンタウン・フェリー・ターミナル」。
煉瓦の建物のちょうど裏手にあります。

対岸のデボンポートまではフェリーでわずか12分、料金は往復で15NZドル(約1080円)です。
私たちは公共交通機関共通のICカード「AT HOP カード」を購入していたので、いちいち切符を買わなくても割引料金で乗船できました。

切符を買ったら、日本と同じような改札ゲートを通り、あとは船が来るのを待つだけです。
オークランドの船旅:デボンポート① わずか10分、歴史ある町へ

午後7時、デボンポートからのフェリーが到着しました。
降りる乗客が終わるのを待ってから、乗り込みます。

船は5分ほど港に停泊しただけで、すぐに出発します。

西に見えるのが、ダウンタウンとノース・オークランドをつなぐ「ハーバーブリッジ」です。
実はデボンポートにはハーバーブリッジを通って車でも行けるのですが、オークランドの街を海から眺めながら行く方がずっと魅力的ではないですか?

私のように外を眺めたい人は、デッキに・・・

景色はどうでもいいという人は、船内で想い想いに過ごします。

後部デッキに座っていると、街がどんどん遠ざかっていくのが楽しめます。
夏のニュージーランドでは日没は午後9時ごろ。
1時間ほどデボンポートで過ごして帰ると、ちょうどサンセットクルーズになるはずです。
私たちの滞在中、オークランドは毎日のように午前中曇って午後から晴れてくるという天気が続いていたため、自然と船に乗るのは午後か夕方の時間帯でした。
オークランドの船旅:デボンポート② ガジュマルの巨木に癒される

ダウンタウンを出港してわずか10分ほどで、デボンポートの街が見えてきました。
これがビクトリア風というんでしょうか、可愛らしい家々が並んでいます。

これが私たちが乗ってきたフェリーです。
とりあえず、何をするあてもないので、街を歩いてみることにしました。

フェリー乗り場を出た正面のビクトリア・ロードがメインストリートのようです。
この日は元日だったため、店はほとんど閉まっていました。

一番目立つこの建物は、「ザ・エスプラネード・ホテル」。
1903年開業の老舗ホテルだそうです。

でもそんな老舗ホテルよりも私の目を引いたのは、ビクトリア・ロード沿いに植えられた街路樹です。
なんだかゴッホの絵画を思い起こさせるようなたくましさを感じます。

そして存在感のある街路樹の下を歩く、イスラム少女たち。
それだけで私はウキウキしてくるのです。

街路樹の向こう側は芝生の公園になっていて、お正月の夕暮れ、みんなのんびりと過ごしていました。
見ているだけで、気持ちがいいですね。

ビクトリア・ロードを進んでいくと、すごい大木が待っていました。
この大きさ、とても私のカメラでは表現できません。

この木、何て言いましたかね?
ガジュマル?
沖縄やハワイで時々見かけるやつです。

その複雑な幹、枝から直接地面に垂れ下がった根・・・。
すごいです。
やはり大きな樹木というのは、見るものに畏怖の念を抱かせます。
ニュージーランドには「カウリ」という巨木が生えていたのですが、人間がこの島に来てから天にまで届きそうなカウリの木は次々に切り倒されてしまいました。
今では必死で守り育てようとしていますが、巨木が育つまでにま途方もない時間がかかります。
太古の昔には、日本にもきっとすごい巨木がいっぱい生えていたんでしょうね。
オークランドの船旅:デボンポート③ 歴史ある住宅街をお散歩

海岸線も歩いてみました。
フェリー乗り場の東側は芝生の公園になっていて、その海側には遊歩道が整備されています。

ベンチに座って海を眺める人々。

その海にはたくさんのヨットやクルーザーが浮かんでいて、その向こうにオークランドの住宅街が広がっています。
文句のつけようのない住環境。

これぞオークランドが、「シティ・オブ・セイルズ」と呼ばれるゆえんなのでしょう。

住宅街も歩いてみました。
ものすごい豪邸ではなく、サイディングの可愛らしい家が多いようです。

平屋の家も多いのですが、庭が広いのです。

そして大きな木が植えられている家も目立ちます。

「FOR SALE」の看板が出ていたので眺めてみると、なんと敷地が971平米。
1893年に建てられた2階建で、寝室が5つ、リビングが3つ、お風呂が3つで4台の車が止められるようです。
果たしていくらなのかと興味が湧きましたが、肝心の値段が書いてありません。
ニュージーランドでは不動産屋の店先の物件を見ても価格が表示されていなかったので、これが一般的なのかもしれません。

とても買える値段ではないでしょうが、やはり興味ありますよね・・・。
オークランドの船旅:デボンポート④ 手軽なサンセットクルーズ
そうして街をぶらぶらお散歩している間に、だいぶ日が傾いてきました。
今、午後8時を回ったところです。

そろそろフェリー乗り場に戻って、次の船を待とうと思います。
沖をまた、一艘のヨットがオークランド方面へと帰っていきます。
これからの時間、文字通りのサンセットクルーズとなるのです。

フェリー乗り場の目の前まで来た時、言葉を失いました。
海の向こうに見えるオークランドの摩天楼に、ちょうど夕日がかかりかけていたからです。

そうか、デボンポートから見ると、ちょうどダウンタウンの方角に太陽が沈むんだ・・・。
だから、最初に入植した人々は、この場所に家を建てたのかもしれません。

港の近くにはちょっとした砂浜があり、親子連れが子供を遊ばせています。
静かな夕暮れ。
気持ちのいい風が吹いていました。

しばらくその場所に佇みながら、夕日を眺めていると、赤く染まった海をフェリーがこちらに近づいてくるのが見えました。
あの船に乗るのです。

フェリー乗り場からもガラス越しに夕日と入港してくる船が見えました。
なかなか素敵な待合室です。

帰りは、船の前方デッキに座ります。
2階のデッキにも夕日の写真を撮る人たちが陣取っていました。

でも、まったく混み合うこともなく、みんなゆっくりと夕日を眺めています。
人口が少ないというのは、実に人をゆったりとさせるものです。

フェリーはまっすぐにダウンタウンの方向、すなわち夕日に向かって一直線で進んでいきます。

大きな太陽が摩天楼の上に乗っかっています。
もうすぐ時間は午後8時半になります。
サンセットクルーズとしては、ちょうどいい時間だったでしょうか?

ダウンタウンが近づくと、船は進路を少し西に向けました。
それに従って、摩天楼と太陽の位置が少しずつずれてきます。

オークランドのシンボル「スカイタワー」も夕日に染まります。

わずか10分あまりのサンセットクルーズですが、とってもお値打ちだと思います。
デボンポートへの船旅は、絶対にこの時間がオススメです。
オークランドの船旅:ワイヘキ島① 40分で観光客に人気の島へ
天然の良港であるオークランドの周辺には、およそ50もの島々が浮かんでいます。

その中でも観光客に一番人気があるのが「ワイヘキ島」。
私たちもフェリーに乗って、ワイヘキ島へ行ってみることにしました。

ワイヘキ島行きのフェリーが出るのも、ダウンタウン・フェリー・ターミナル。
ただし、デボンポート行きが1番埠頭から出発するのに対して、ワイヘキ島行きのフェリーはお隣の2番埠頭から出るのでお間違いなく。

料金は、往復40NZドル(約2880円)です。

ワイヘキ島行きのフェリーは、屋上に広々としたデッキ席もありますが、空いている1階の後部座席に座りました。
自転車も置いてあります。

船は定刻の午後6時にダウンタウン・ターミナルを出港します。

ワイヘキ島へは船でおよそ40分。
途中、いくつかの島を通り過ぎます。
オークランドの船旅:ワイヘキ島② 点在する火山島と鳥獣保護区

デボンポートを過ぎて、まず右手に見えてくるのが「ブラウンズ島」。
直径800mほどの緑の草に覆われた無人島です。
いかにも牧歌的に見えますが、この島も噴火によって誕生した火山島で、環境保全省によって管理されています。

一方、左手には「ランギトト島」。
島の直径は5kmで、ずっと大きな島ですがやはり人は住んでいません。
この島は50以上の火山があるオークランド火山帯の中でも最も新しい火山島で、およそ600年前の噴火によって海上に姿を現しました。
去年突然噴火し、観光客が犠牲となったホワイト島は、ここから200kmほど東へ行ったところにあります。
オークランド周辺地域は、太平洋プレートがオーストラリアプレートの下に潜り込み、大量のマグマを蓄えている火山帯の上にあるのです。

溶岩がまだゴロゴロしているランギトト島には、複数のトレッキングコースが整備されていて、海抜259mの山頂に登るとオークランド周辺の多島海を一望することができるそうです。

そのランギトト島の東隣にあるのが「モトゥタプ島」。
2つの島は第二次大戦中に作られた橋で結ばれ、歩いて行き来することができるそうです。

溶岩と低木で覆われたランギトト島とは違って、島全体に牧草地が広がっています。
でも羊が飼われているわけではなく、害獣を駆除した鳥類保護区になっています。
キャンプ場もあって、大都市のすぐ近くにあって自然の中で過ごすことができるスポットとして訪れる人も多い人気の島です。

再び右手に島が現れました。
戦争中に捕虜収容所が置かれていた「モトゥイヘ島」です。

戦後は羊牧場などに利用されていましたが、2000年からは環境保全省と住民たちが協力して「モトゥイヘ・プロジェクト」を立ち上げ、固有種の木々や野鳥の保護区となっています。
ニュージーランド各地で行われている「生態系回復プロジェクト」の成功例とされているそうです。

こうした個性豊かな島々を眺めながら、のんびりと船旅を楽しむことおよそ40分。フェリーは目的地ワイヘキ島に到着しました。
深い入り江には、たくさんのヨットが帆を休めています。

ここはオークランド近海の島々の中でもとびっきりのリゾートアイランドなのです。

入江を見下ろす斜面には、深い木々に囲まれて豪邸が立っているのが見えました。
オークランドの船旅:ワイヘキ島③ 路線バスに飛び乗って島巡り

こちらが私たちが乗ってきたフェリーです。
島に到着したのは、午後6時45分ごろ。
行き先もわからず来てしまった私たちは、目の前で出発しそうな路線バスに飛び乗りました。

このバスがどこに向かうのか? 私たちはどこで降りればいいのか? まったくわかりません。
でも、所詮は島です。
良さそうなところがあれば飛び降りればいいし、なければ戻って来ればいいと割り切って、車窓の風景を楽しみました。

ワイヘキ島は人口8000人あまり、身近なリゾートとしてオークランド市民や観光客に人気があります。
島内には別荘が立ち並び、静かなビーチが点在しています。

青と白のアガパンサスの花を植えている家が多く、ちょうど満開の季節を迎えて島中アガパンサスだらけです。

ワインも有名で、ワイナリーをめぐるツアーも催されているというので、バスで走っていれば嫌でもブドウ畑が見えてくるだろうと思っていたのですが、予想に反してなかなかブドウ畑は姿を現しません。
別荘地やビーチをぐるぐる回り、30分ほど走った時でした。

斜面にブドウ畑らしいものが見えました。
さほど大きな畑ではありませんが、とにかく降りてみることにしました。

そこはワイナリーではなく、不動産会社の看板がかかっていました。
しかも、その日は休み。
新年早々なので、観光関係でなければ営業していないのでしょう。

ワイヘキ島は最高級の赤ワインの産地として知られ、島内には20ヶ所以上のワイナリーがあるそうです。
あとでちゃんと調べてわかったのですが、ワイナリー巡りが目的なら、「ホップオン・ホップオフバス」という観光客用の巡回バスに乗ると効率的だそうです。
でも私たちは、別にワイナリー巡りしたかったわけでもないので、再び路線バスに乗って港に戻ることにしました。

私たちが乗ったのは、この502番のバス。
ちなみに、ワイヘキ島には4つの路線バスが走っているそうです。

きれいな海を眺めて、別荘地をぐるぐる回るだけでも結構楽しかったワイヘキ島路線バスの旅でした。
船旅で「シティ・オブ・セイルズ」を体感しよう
「シティ・オブ・セイルズ」と呼ばれるオークランド。
ニュージーランド最大の都会の沖合には、火山島が点在し、その美しい多島海を多くのヨットやプレジャーボートが往き交い、また無人島を利用して絶滅が危惧される固有生物の保護が行われています。
オークランドから船に乗ると、ニュージーランドという島国の縮図を見ることができるので、オークランドに行ったら一度は船に乗ってみてください。時間がない人には、対岸のデボンポートがオススメです。
私の場合、事前調査が不足していたため、お目当てのワイナリーを見つけることができませんでしたが、ワイナリーは船着場の近くにもあるようなので、ワイヘキ島で海を眺めながら美味しいワインをいただくことは難しいことではないようです。
まあワイヘキ島でワインを飲めなくても、オークランドでは毎日美味しいニュージーランドワインを楽しんでいたので問題はありませんが・・・。