🔶「旅したい.com」から転載
<ドイツ>格安航空の経営にご用心!旅の途中で破綻した「エア・ベルリン」
🇩🇪ドイツ/ベルリン 2017年8月 トランジット
「少しでも安く旅をするため、なるべく安い飛行機を探す」それは旅行者なら誰もが考えることでしょう。私もそうです。
ただ知らない格安航空会社にはリスクが伴います。
2017年に破綻したドイツの格安航空会社「エア・ベルリン」での綱渡りの乗り継ぎ体験について、記録しておきます。
トラブルを避けるために、少しでも参考になれば幸いです。
30分の出発遅れ
2017年8月18日の朝6時、私と妻はアラブ首長国連邦の首都アブダビに到着しました。
ホテルのプールに飛び込み、我が身のラッキーを振り返ります。
一つ間違えばアブダビにたどり着けない、ちょっとヤバい状況だったのです。
ポーランドの古都クラクフからベルリン経由で、アブダビへ。利用するのは、「エア・ベルリン」というドイツの格安航空会社の飛行機です。
クラクフからベルリンまでの機体は、小型のプロペラ機でした。
カナダのボンバルディア社製DASH-Q400。日本でも地方路線を飛んでいる旅客機です。
片側2席ずつの狭い機内。でも、問題なのはそのことではありません。
機体の到着が遅れ、クラクフの出発が30分も遅れてしまったのです。
ベルリンでの乗り継ぎ時間はもともと1時間20分しかありませんでした。予約の時には乗り換え時間が短くてラッキーと考えたのですが、こうなると大きなリスクとなります。
窓の外で回るプロペラを眺めながら、リスクについて検討しました。
LCC便なので、空港ターミナルから離れた場所に止まるはず。そこからバスでターミナルまで運んでもらう時間も考えておかねばなりません。
30分の出発遅れに加え、バスでターミナルに向かう時間も10分はかかるとすると、単純計算で残り時間は40分です。
次の便の搭乗口までの移動時間も必要です。出発便のターミナルが離れている可能性も考えられます。
おまけに、ベルリンでEUの出国手続きもしなければなりません。ベルリンはハブ空港なので出国手続きに行列ができている可能性もあります。
過去の自分の経験に照らせば、超楽観的な私でもこれはかなりヤバイ状況だと判断せざるを得ません。
ましてや、2箇所の空港を経由して成田まで直送でスーツケースを送っていました。かなりの確率で積み遅れ、行方不明になってしまうリスクが極めて高いと考えられます。
そんな不安が次々に頭をよぎる中で、ベルリンの灯りが見えてきました。街の上を超低空で飛ぶ飛行機。下を走る自動車が異様に大きく見えます。
ベルリンで妻走る
悪いことに、着陸したベルリンは雨が降っていた。
タラップを使って客を降ろすLCC、普段よりターミナルまで時間がかかることも予想しておかなければなりません。
私は思わず「ヤバイかもしれない」と口に出しました。
その一言が、心配性の妻をますます不安にさせたようです。
テーゲル空港に30分遅れで降りたち、私たちを乗せたバスが空港ターミナルにたどり着いた瞬間、妻が突然走り始めました。運動が苦手で普段あまり走らない妻が、猛然と走ったのです。
妻は、明らかに焦っていました。
本当に真面目というか、馬鹿正直というか、常に先のことを心配し、格好を気にすることもなく焦るべき時にははっきりとした行動でそれを周囲に示すのです。
それに引き換えいい加減な私は、乗り遅れた場合の対処法などをぼんやりと考えていました。
妻は違います。遅れそうなら走る。何とか間にあわせるべく頑張る。そんな尊敬すべき単純さが妻の魅力なのです。少なくとも私は常々そう思っています。
そんな妻のひたむきな後ろ姿を追いながら、私も後を走ります。
妻の努力は実りました。心配した出国審査は驚くほど空いていてスムーズに滑り抜けられ、搭乗口への距離も比較的近かったのです。
それでも我々が搭乗口に駆け込んだ時、すでに乗り継ぎ便の搭乗が始まっていました。間一髪で間に合ったのです。
雨の中を歩いて搭乗
乗り継ぎ便も同じエア・ベルリン、今度は古いA330型機でした。
エア・ベルリンは、アブダビを拠点とするエティハド航空の傘下にあり、この便も両社の共同運航の形をとっています。
LCCなので、ターミナルから飛行機に直接乗り込むことができません。しかも今度はバスすらなく、小雨が降る中、乗客たちは駐機場を歩いて旅客機に向かいました。
もし大雨でも、きっと乗客を歩かせるのでしょう。
私たちが乗り込むとすぐに出発時刻になりました。
果たして私たちのスーツケースはちゃんと積み替えられたのか?
そんな不安を抱いたまま、アブダビ経由で東京に帰ったのですが、運よくスーツケースも無事に私たちと同じ便で成田空港に到着しました。
もしあの時、妻が走らなければ全ての歯車は狂っていたでしょう。
エア・ベルリン破綻
しかし、本当の危機は私たちが知らないところで進行していたのです。
私たちがエア・ベルリンに搭乗したのは、2017年8月17日のことでした。ところが、その2日前の8月15日、エア・ベルリンはエティハド航空からの支援が打ち切られ破産手続きを申請していたのです。
旅行中だった私たちは、そんなニュースはまったく知りませんでした。
『ドイツ政府とルフトハンザ・グループの支援により、運航は継続されていたが、同年9月12日には、エア・ベルリン側のパイロット約200人が病欠し、約100便の運航を停止せざるを得ないなど会社の経営と評価にダメージを与える出来事もあった。会社の再建に向けた動きは行き詰まり、同年10月27日を最後に全便の運航を停止』
出典:ウィキペディア
つまり、エア・ベルリンはいつ運航停止になってもおかしくない状況だったのです。
翌年の2018年に利用した世界最大の格安航空会社「ライアンエアー」は、私たちの旅行中に大規模なゼネストを行い、ヨーロッパ中で大混乱を引き起こしました。
安い飛行機にはリスクが伴います。低価格を実現するため、無理な運航スケジュールを組んでいると考えるべきでしょう。私のような1時間20分という乗り継ぎ時間は、明らかに無謀だったのです。
LCCを利用するなら、まずは時間に余裕を持ったプランを立てることです。そのうえで、トラブった時にはどうバックアップを用意するか、そのことも頭に入れて、旅行を組み立ててください。