🇪🇪エストニア/タリン 2019年8月4日
ヘルシンキ観光の魅力的な選択肢の一つに、隣国エストニアへの日帰り旅があります。
「タリンク&シリヤライン」のフェリーで片道2時間。日本のフェリーとは比べ物にならない豪華な船で、クルーズ気分を味わいながらバルト海の旅を楽しむことができます。
エストニアの首都タリンはかつてハンザ同盟の都市として繁栄し、その中世の面影を色濃く残す世界遺産の街です。
ただ、私たちは出発時刻前に港に到着したにも関わらず、帰りの船に乗ることができませんでした。そんな失敗談も含めて、ヘルシンキ〜タリンの素敵な船旅をご報告します。
7番のトラムでT2へ
タリン行きのフェリーに乗るためには、ヘルシンキ西港のターミナル2に行かなければなりません。

朝一番早い船は7時30分出港。
私たち夫婦は、宿泊先近くのヘルシンキ中央駅から路面電車で港に向かいます。

まだ朝の6時半を回ったところ。
街に人はまばらで、カモメたちが我が物顔で飛び回り、ゴミを漁っていたりします。

ターミナル2行きのトラムは7番または6T番。
私たちは7番のトラムに乗って終点まで行きます。
切符は前日に購入した「デイチケット」でOKです。
ヘルシンキのデイチケットについては、こちらの記事をどうぞ。

ターミナル2に到着したのは、ちょうど7時ごろ。
港は閑散としています。
ヘルシンキ西港ターミナル2

ヘルシンキ港はヨーロッパでも有数の旅客数を誇り、2018年には1210万人がこの港を利用しました。
主要路線は、エストニアのタリンとスウィーデンのストックホルムです。
タリン行きはこの西港T2がメインとなり、ストックホルム行きはオリンピアターミナル(南港」から発着します。

T2の真新しい建物に入ると、「TALLINK」のカウンターがあります。
タリンクはエストニアの船会社で、フィンランドのシリヤラインなどを傘下に収め、バルト海フェリーの業界最大手となりました。

私たちはカウンターで往復チケットを買いましたが、自動販売機もあります。事前にネットで予約して、ここで発券することも可能です。
料金は出発時間や曜日によってかなり違っています。
私たちが乗った7時半の船と比べ、次の10時半出発の船はニーズが高いので値段も高めに設定されているようです。
そこで私たちは、一番早い7時半の船でタリンに行き、早めに観光を切り上げて13時半の船でヘルシンキに戻ることにしました。
片道で買うとそれぞれ35ユーロと39ユーロですが、往復で買うと割引が効いて一人60ユーロ(約7000円)です。
船の出発時刻や料金については、タリンク&シリヤラインのサイトでご確認ください。

切符を購入したら自動改札を通り、2階の出発ロビーに向かいます。
目の前には大きな窓。
ちょうど大型のクルーズ船が入港するところでした。

私たちが出発ロビーに上がった時、すでに乗船が始まっていました。
実にスムーズです。

ただこの時、私はとても重要なことを知りませんでした。
チェックインは出港時間の30分前に締め切られ、20分前には乗船ゲートが閉まってしまうのです。
つまり、7時直前にT2に到着した私たちは、実はギリギリで船に駆け込んだ格好だったのですが、そのことを知らなかった私たちは帰りの船に乗り損なう失敗を犯してしまったのです。
豪華フェリー「スター号」

私たちが乗ったフェリーは「スター号」。
2007年に建造された大型フェリー、乗員定数は2080人です。

乗客が乗り込むのは船の7階部分。
ここから上の3フロアが客室、下に自動車の収納スペースがあります。

船に乗り込むと、船内に行列ができていました。
「DELIGHT BUFFET」、食堂です。

朝の便なので、船内で朝食を済まそうという客が乗船と同時に食堂に押しかけているようです。
ビュッフェスタイルで何をどれだけ食べても定額、7時半と10時半の船で提要される「朝食ビュッフェ」の場合、大人13ユーロ(約1530円)。事前予約した人は12ユーロです。

私たちはすでに朝食を済ませていたのでここでは食べませんでしたが、メニューをのぞくとなんと日本語表記もありました。
肉・魚料理からデザートまで料理の種類は実に豊富。
「昼/夜ビュッフェ」(28ユーロ)の場合、ワインやビールも飲み放題だそうです。

他にも、「バーガーキング」のお店や、一流レストラン「アラカルト」、「スターバックスコーヒー」やお酒が楽しめる「SUN DECK BAR」もあります。

乗客たちは、2時間の船旅の間、好きな場所に陣取り自由に時間を過ごすことができるのです。

私たちは基本的にゆったりとしたソファー席がある「シー・パブ」にいることが多かったのですが、そこで何も注文しませんでした。

スター号には、そのほかにも様々な施設があります。
中央に設置された階段を上ったり下ったりしながら探検します。

驚いたことに、スーパーマーケットがあります。
主には、空港の免税店のような品揃えですが、中には・・・

かなり豊富な食料品や・・・

タリンク&シリヤライン限定のムーミングッズも売られています。

そのほか、化粧品や香水を扱う「PERFUME SHOP」など、国境を利用した免税店も船内に店を構えています。
お買い物好きの方には、いい時間潰しになるかもしれません。

そのほか、ゲームセンターがあったり・・・

キッズ用のスペースがあったり・・・

さらに追加料金を支払った乗客だけが入れるスペースもあります。
こちらは、「STAR CONFORT LOUNGE」。
船の進行方向に大きな窓が設置された特等席で、利用するためには一人24ユーロの追加料金が必要です。

こちらの「BUSINESS LOUNGE」は、空港のラウンジのような場所で、静かな環境で仕事をしたいビジネス客用のスペース。
利用料は一人65ユーロで、お酒も含めドリンクや軽食の無料サービスがあるそうです。

また、個室も用意されています。
窓があるAクラスが一室50ユーロ、窓のないBクラスが一室40ユーロの追加料金で利用できます。
全室シャワー・トイレが付いているので、カップルやご家族、高齢者のニーズはありそうですが、一般の方は狭い個室よりも船内の気に入った場所で過ごした方が気持ちがいいと思いました。
デッキからの眺め
海を眺めるなら屋外のデッキがオススメです。

スター号は定刻より少し早く、ヘルシンキ西港を出港しました。
私もデッキに出て、離れゆく港の風景を眺めます。

青と黒と白の三色旗は、エストニアの国旗。
デッキは2段になっていて、ベンチや椅子もそれなりに用意されています。

夏とはいえ、ヘルシンキの朝は気温10度前後と寒いので、デッキで過ごすには薄めのダウンなどがあった方がいいでしょう。
私もライトダウンの上にウィンドブレーカーを羽織り、風の当たらない場所でしばらく海を眺めていました。

ヘルシンキの沖合には、大小無数の島や岩礁が散りばめられていて、朝日をバックに黒い影を並べています。
海は穏やかで、船の揺れはほとんど気になりません。

こんな光る海が見られるのは、朝便の特権でしょう。
最初は欧米系の乗客がデッキには多かったのですが、やがて中国人の団体さんがデッキに現れ、記念撮影大会が始まったので、欧米系の人たちは船内に戻って行きました。

ヘルシンキ沖の島々はほとんどが無人島です。

でも中には、建物や塔が建てられている小島もありました。
何やら警備的な任務を持った島なのでしょうか?

ヘルシンキとタリン間に就航するフェリーは3隻あります。
私たちが乗ったスター号のほかに、2017年に建造された最新鋭の「メガスター号」。こちらは2800人が乗船可能で、レストランやショッピングスペースがより充実しているそうです。
もう一隻は1993年に建造された「エウロパ号」。こちらは3013人が乗船可能なバルト海最大のクルーズ船で、サウナやプール、ビューティーサロンも完備し、個室が充実しているため主に宿泊を兼ねた「ヘルシンキ〜タリン往復22時間クルーズ」に利用されています。
機会があれば、他の船にも乗ってみたいものです。

出港から2時間。陸地が見えてきました。
エストニアに到着です。

船で知らない街に入港するというのは、やはり旅情を誘います。
海から見るタリンの街は、緑に覆われ、端正な印象を受けました。

港からは、ガラスのビル群も見えました。
バルトの小国ながら、エストニアはITベンチャーや電子政府で世界的に注目される国。そんな新しいエストニアを象徴するのがこの新市街なのでしょう。

タリン港のターミナルビルは現在改修工事中のようで、仮設の通路を通って上陸します。
入国審査など煩わしいことは一切ありませんでした。そういえば、フィンランドでも出国審査はなかったことに気づきました。
これって、国際航路ですよね?
EU加盟国同士とはいえ、ヘルシンキ〜タリン間は観光客の往来が激しいので、両国とも特別に国内便同様の扱いにしているように感じました。お互いの国にとって、この航路はドル箱なのでしょう。
世界遺産の街タリン
エストニアの首都タリンは、予想以上に美しい街でした。

と言っても、私たち訪れたのは、時間の都合で旧市街のみ。
ここはハンザ同盟の最北の都市として繁栄しました。

パステルカラーに彩られた建築物が建ち並び、まさに中世の趣そのままです。
13〜18世紀の建造物が非常に良好な状態で残されていることが評価され、1997年「タリン歴史地区」は世界遺産に登録されました。

帰りの船は13時半。私たちに与えられた時間は4時間ほどです。
老舗のデザートショップでランチを食べたり・・・

広場のマーケットでお土産を買ったり・・・

歴史建造物を眺めて回ったりしていると、あっという間に持ち時間がなくなってしまいました。
小さいですが、とても素敵な街。街歩きには最高です。
帰りの船に乗り遅れる
ついつい欲張っている間に時計は12時半を回りました。
出港まであと1時間足らず。そろそろ港に向かおうと、坂を下ります。

妻がどうしてもトイレに行きたいというので、お店に入ってコーヒーを注文します。
この段階では、私に焦りはありませんでした。
なぜなら、すでに帰りの切符は買っていたので、船が出る前に港に行けばいいと思っていたからです。

しかし実際には旧市街から港のターミナルビルまでは結構距離があります。
途中妻が「タクシーに乗ろう」と提案したのですが、私は「まだ大丈夫だ」と言って歩いて港に向かいました。

ターミナルビルに駆け込んだのは、出港時間の10分前でした。
出発ロビーにはもう人影はなく、ゲートは閉まっています。
慌てて窓口の人に聞くと、「出発の30分前までに来ないとダメ」と言われ、その時初めて国際航路のルールを知ったのでした。
呆然です。
妻からは、「だからタクシーに乗ろうって言ったじゃない」と責められます。
「アンタがトイレに行くからでしょう」と言いたい気持ちをグッとこらえ、善後策を考えます。予定していた船に乗れない以上、次の船を待つしかありません。
次の船は、3時間後でした。

仕方がないので、時間を変更してもらおうと、チケット売り場の女性に相談します。
すると・・・
「時間の変更はできない」というのです。
私たちが持っている帰りの切符は乗り遅れた時点で無効。次の船に乗るためには、新たに片道の切符を買わなければならないというのです。
しかもどういうわけか、日曜日だけ16時半の船の値段がめちゃめちゃ高いのです。通常35ユーロのところ、その日は99ユーロ(約11700円)もします。同じ日曜でも週によって値段が変わるようなので、事前によく確認してください。
乗り遅れただけでもショックなのに、このチケット代が思わぬダブルパンチでした。朝買った往復チケットよりも、帰りの片道の方が高いとは・・・トホホです。20分遅れたおかげで、旅先の貴重な時間だけでなく、無駄なお金まで使う羽目になってしまいました。
タリン歌の広場

さて、次の船までの3時間どうするか?
妻はすっかり疲れてしまい、ターミナルのベンチで座っているといいます。でもそれはちょっともったいない。
私は改めてガイドブックを見回し、エストニア独立運動で重要な役割を果たしたという野外音楽施設「タリン歌の広場」を訪ねてみることにしました。
地図で見ると近そうに見えたのですが、歩くとこれが意外に遠くて、片道1時間ほどかかりちょうどいい時間つぶしになりました。

16時半の船は、とても混雑していました。

私がターミナルビルに帰ってきた時には、すごい人数の人たちが待っていて座るところもありません。
仕方なく、出発ゲートのところで待っていると、いつの間にかご覧のような大行列ができました。みんな早く船に乗って、いい場所を確保しようと思っているので、ゲートが開く前に行列ができるということのようです。
私たちのように日帰りの客のほか、週末をタリンで過ごしてヘルシンキに戻る人もいるのでしょう。
日曜日のこの時間、船の料金が高いのは、それだけこの船に乗客が集中するということだと理解できました。ある意味、よくできた料金体系です。

船を降りる際も、ご覧の大行列。
みんな疲れて、早く家に帰りたいのでしょう。
乗り遅れさえしなければ、こんな混雑に巻き込まれずに済んだかもしれません。
ヘルシンキ〜タリンの日帰り旅。
オススメの旅ではありますが、くれぐれも出港時間の30分前にはターミナルに着くよう気をつけてください。
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