クウェートに続いて訪れたバーレーンでは、サウジ行きのバス会社のオフィスの近くに宿を取った。
首都マナーマ旧市街の中にあり、バスの便だけでなくスークをぶらぶらするなど、いろいろな意味で良い選択だったと思っている。

これが私が1泊した「Gulf Gate Hotel」のエントランス。
エクスペディアで予約した時には値段も安いし古い安宿を想像していたのだが、実際に行ってみると敷地もゆったりしていて、アラブ風の窓など外観は悪くない。

車寄せの天井などまるで宮殿のようで、「何、これ?」って思わず写真を撮ってしまった。
スペインあたりにあるちょっとした高級リゾートのエントランス風である。

ところが、玄関を入って一段と驚かされた。
床も天井も黄金色のタイル張り、シャンデリアが輝き、柱もまるで万華鏡のようだ。
ちょっと風俗っぽくて好みではないが、異国情緒という意味では中東ならば許される気がした。
フロントの対応も今回訪れたアラブ3ヶ国の中では群を抜いてテキパキとしていて申し分ない。
サウジアラビアからの観光客で潤うバーレーンは、産油国とは違うサービス業の国なのだと感じる。

スムーズにチェックインが終わり、部屋に向かう途中にガーデンプールが見えた。
まだ気温が20度前後なので泳ぐには寒いが、プールサイドでゆっくりくつろぐには気持ちがいい季節である。
週末にはこのプールサイドで大音量の音楽が響き渡り、うるさくて眠れないという苦情の書き込みをネットで見たがこの日は平日、至って静かだ。

部屋に上がるエレベーターがわからなくて、エステなどがある廊下で迷っていると、スタッフの1人がこちらの通路に案内してくれた。
これまた派手派手なエレベーターホールで思わず嬉しくなってしまった。
何事もここまで徹底すれば見事である。

こちらが私の部屋。
とにかくその広さに驚かされる。
この部屋だけでも十分に広いのだが、実はこの手前に前室があるのだ。

廊下からドアを開けると、まず濃いピンクのソファーが目に飛び込んでくる。
その向かいにテレビや湯沸かしポットが置かれ、ここでくつろぎながら談笑したりテレビを見るというコンセプトなのだろう。

そしてメインとなる寝室にはキングサイズのベッドのほかに、窓際には椅子とテーブル、鏡台付きのゆとりあるライティングデスクも置かれている。
インテリアはひと昔の高級ホテルといった印象だろうか。
年季が入っている分、廊下や部屋が多少カビ臭い気もするが特に気になるほどではない。

水回りもこれまた広々としていた。
タイル張りの部屋にゆったりと配された洗面台とトイレとビデ。
洗面台に栓抜きが付いているあたりやはり昭和の趣だ。

そしてありがたいことにバスタブまで備え付けられている。
コーランの博物館からホテルまで重いリュックを背負って歩いてきて汗をかいたので、早速ひとっ風呂浴びることにする。
ところが、ここで一つ問題が・・・。
バスタブが思ったより浅くて私の体が十分に浸かれないこと、そしてそれ以上に一度に使えるお湯の量が決まっているようでバスタブにお湯を張っている過程でいつの間にかぬるま湯になってしまうことだった。
これまた昭和のマンションなどにあった電気湯沸器のような懐かしさがある。

しかし、風呂よりももっと私を悩ませる問題が起きた。
エアコンが効きすぎていて寒いのだ。
部屋の空調を切ってまたが、廊下もロビーも建物中がものすごく冷やされているらしく、一向に暖かくならない。
ちょうどお昼時で外気温は20度を超えているのに、窓を開け放っても寒さはなくならない。
仕方なく、ドイツまで来ていた長袖のヒートテックを二枚重ねし、下もヒートテックのステテコをこれまた二枚重ねにしてベッドに入る。
どうして暑い国の人ってここまで極端に冷房を効かせるのだろう。
これこそが最高のサービスという確信があるに違いないが、私には本当迷惑である。

もう一つ、このホテルについて特筆すべきはお酒を飲めるバーが充実していることである。
このブログでもすでに紹介したように、フロントで「このホテルにバーある?」と聞いたら、「どれがいいですか? アラブかインドかパキスタンか?」と聞き返されたのだ。
私はアラブ風のバーしか入らなかったが、インド風やパキスタン風のバーというのも好きな方は試してみればいい。
飲酒を禁じるイスラム教の国に囲まれたバーレーンの特性が凝縮されたようなホテルなのである。

朝ごはんについても書いておかねばならないだろう。
私がエクスペディアで予約したプランには朝食が付いていて、朝8時ごろフロントに行って「朝食はどこ?」と聞くと、目の前の派手なドアを指差した。
中に入るとこれまたエントランスロビーと同じようなエキゾチックな作りのダイニングルームが待っていた。
朝食はビュッフェスタイル、私の知らないアラブの料理も並んでいた。

左側のトレイに入っていたのは「FOUL MEDAMES」、右側には「UPMA」というプレートが立てられている。
フール・ミダミスというのはエジプトやレバノンの料理で、そら豆のシチューにオリーブオイルやクミン、さらにニンニクやタマネギ、レモンジュース、唐辛子、ハーブなどを加えるのだそうだ。
一方、ウプマというのはインドでよく食べられる朝ごはんだそうで、セモリナという小麦の粗びき粉を使った料理。
おからのようなクスクスのような優しい食べ物である。

こうして私のプレートにはよくわからない料理がいろいろ並んだ。
基本的には豆や小麦なので胃にもたれることもないだろう。
新鮮な野菜もあって、多国籍な朝ごはんは同じビュッフェでも欧米のホテルチェーンのそれとは一味違う。
私はこのホテルの朝ごはんはいいと思う。

スタッフもサウジアラビアなどとはお違いでサービス精神に富んでいる。
私は自分が知らない料理を食べて満足している様子を見て、食堂の責任者らしきスタッフが「卵はどうしますか?」と声をかけてきた。
「スパニッシュオムレツでも作りましょうか」と言って、野菜がたっぷり入った美味しいオムレツを作ってくれた。

旅人には嬉しいヘルシーな朝ごはんまで付いて宿泊料は18.70バーレーン・ディナール、日本円で6500円以下である。
あの寒ささえなければ、ほぼ満点をあげたくなるようなローカルな宿だった。
あの日の寒さが今の風邪の原因だとしても、あのホテルを選んだのは正解だったと思っている。
静かに過ごしたければ、週末は外した方がいいらしいが、本当は私はサウジアラビアの呑兵衛たちが大騒ぎしているのを見たくてこのホテルを取ったのだがその望みは果たせなかった。