14時間半のフライトに耐え、ドイツのフランクフルトに着いた。
久しぶりに味わう時差ボケで真夜中に目が覚め、ぼーっとした頭でブログを書いている。

羽田からのフライトは予想したよりも混雑していた。
日本人と外国人の比率は2対1ぐらいだろうか。
外国人でもほとんどの人がマスクを付けていた。
ちょっと意外だったが、郷にいれば郷に従えということだろうか。

使用する機体は昔懐かしいボーイング747、いわゆるジャンボジェットだったが、座席の7割以上埋まっていた。
私の隣の席にも乗客がいて、ガラガラの飛行機で複数の座席を占領して横になるという私の願望は満たされなかった。

ルフトハンザを選んだのは、大柄なドイツ人に合わせて、シートの間隔が多少広いのではないかとの期待があったが、残念ながら、日本の国内線よりも狭かった。
おまけに、スマホを充電するためのUSBも見当たらない。
座席の足元にごつい外国のコンセントを見つけ、変換プラグを使って充電を試みるがうまくいかず、スマホにダウンロードしてきた映画や動画を見るのを諦め、機内に用意された映画を観て14時間半をなんとか過ごした。

嬉しいことに昨年の大ヒット作「トップガン・マーベリック」もラインナップされていて、日本語の吹き替えも予想したよりも充実していた。
そのほかに、「アムステルダム」「竜とそばかすの娘」「アメリカン・ビューティー」を観て、スマホにダウンロードしていた「モスル~あるSWAT部隊の戦い~」というイラクを舞台にした映画も見た。
要するにほとんど眠れなかったのだ。

機内食のサービスはコロナ前とほとんど変わりはなく、エコノミークラスでもワインもビールも無料で飲めた。
湾岸諸国ではお酒が飲めないらしいので、せめて飛行機で飲んでおこうと思ったが、最近お酒を飲む習慣がすっかり薄れてしまっているので、ワインを2杯飲んだだけで後はお茶やジュースに変えた。

食事は、出発の1時間半後にカツ丼を食べた。
和食がカツ丼で洋食はパスタという選択だった。

さらに離陸から8時間後には軽食のサービスがあり、おにぎりかブラウニーの選択で私は当然おにぎりを選んだ。
そして到着の1時間半前に最後の食事が出た。
こちらは選択肢はなくてサンドイッチと果物、おまけにキットカットが1枚入っていた。
機内食を食べるとお腹がもたれるので、全部食べないようにしていたのだが、私の好きなメニューだったためつい全部食べてしまった。

それにしても、やはり14時間半のフライトはきつい。
これもウクライナでの戦争の影響で、西側の飛行機がロシア上空を飛べなくなったせいだ。
飛行機はベーリング海を抜けて北極海を通り、グリーンランドの上空を通ってドイツに向かったようだ。
戦争という無意味な行為によって、時間もエネルギーも無駄に浪費されていく。

エコノミー症候群で足がパンパンに腫れた頃、ようやく経由地のフランクフルトに到着した。
時刻は現地時間の午後7時。
日本との時差は8時間である。

初めてフランクフルトの空港を利用したのは確か1984年、タンザニアの取材に行く途中だっただろうか?
あの頃からこの空港は、ヨーロッパのハブとして世界中の航空機が離発着していた。

ドイツの入国は至って簡単で、パスポートコントロールがある程度。
コロナワクチンの接種証明なども持ってきているが、全く必要なかった。
滞在目的、滞在日数、次の行き先を聞かれただけで、あっさりと入国が許された。
ヨーロッパの移動は相変わらず自由だが、そんなオープンなEUでも今年からアメリカのような事前の渡航認証が求められるようになるらしい。
最大限までグローバル化した世界は、少しずつブロック化の方向に進みつつあるように見える。

荷物の受け取りもないので、そのまま何の検査も受けずにロビーに出た。
この時間、空港は閑散としている。
案内表示に従って、市内に向かう電車の駅に向かう。
駅はルフトハンザが到着する第1ターミナルに隣接している。

ドイツの鉄道には改札というものがない。
駅のホームや通路にこうした券売機が設置されていて、乗客はここで切符を買って目的地に向かう電車にただ乗ればいい。
ごくたまに車掌が車内で切符を確認に回り、その際に切符を持っていなければ罰金が課せられるというが、基本的には乗客の良心を信じて無駄な人件費をかけないというのがヨーロッパの基本姿勢だ。
フランクフルト国際空港から市内までは片道5.80ユーロ、日本円でおよそ834円だった。

空港からフランクフルト中心部までは「Sバーン」という国有鉄道で2駅、およそ15分ほど。
1番ホームに来る電車に乗れば、だいたいフランクフルト中央駅まで行けるようだ。
車内は空いていた。
マスクを付けている人もいるが、車内でもマスクをしていない人の方が多い。

現地時間の8時前、フランクフルトの中央駅にあたるFrankfurt-am Main Hbf駅に到着した。
第一印象は照明がとにかく暗いということだ。
ヨーロッパはもともと家でも街でも無駄な照明を使わない文化だが、それにしても暗い印象を受ける。
ロシアからのエネルギーが断たれた影響もあるに違いない。

私が予約したホテルには、ここで地下鉄に乗り換えなければならない。
今度は駅構内にある「U」の案内板荷物導かれて、殺風景な通路を進んでいく。

地下鉄の駅の名はHauptbahnhof。
ここから地下鉄の4番線と5番線に乗り継げる。

オレンジとブルーといういかにもヨーロッパらしい車内。
地下鉄もあまり混んではおらず、大きなリュック遠持っていても気になることはない。

2駅乗って、ホテル近くのDon/Romer駅に到着したのは午後8時過ぎだった。
フランクフルト空港に着陸してわずか1時間ほどでホテルに到着できたのだから、この街は経由地として使うには悪くない。

地下鉄から地上に出ると雨が降っていた。
目の前には、ドイツらしい木組みの家が建っていて、その奥の闇の中に大聖堂の尖塔が黒く浮き上がっていた。
この界隈は観光客で賑わうフランクフルトの旧市街なのだが、それにしても暗い。
事前にダウンロードしておいたGoogleマップを頼りに、雨に濡れながらホテルを探すことにする。
上下とも防水のウェアで来たのはやはり正解だった。

ホテルは大聖堂の裏側で地下鉄の駅からも近く、すぐに見つかった。
Hotel am Dom。
このホテルのことはまた別の記事で書くとしよう。
ホテルの1階にはドイツ風のラストもあり、本場のビールとフランクフルトでもと思っていたのだが、長旅で疲れたうえに機内食でお腹が張っていたので外出する気力がなくなり、そのままシャワーを浴びて寝てしまった。
時差ボケで真夜中に目が覚めたとしても、フランクフルトで単に乗り継ぐのではなく、1泊してベッドで身体を休めるのは悪くない。
時間に余裕があるシニアならではの旅の楽しみ方とも言えるかもしれない。