<きちたび>アラビア半島の旅2023🕌サウジアラビア🇸🇦 新時代の若者たちが集うジェッダのカフェ「Cafe Locals」

サウジアラビア西海岸の中心都市で、聖地メッカの玄関口に当たるジェッダは、閉鎖的だったサウジアラビアの中では最も早くから海外に開かれた街だった。

だから首都リヤドと比べても、古い街並みが残り世界遺産にも登録されている。

新旧入り混じったサウジアラビアで一番魅力的な街、そんなイメージから旅の最後はここジェッダに3泊して、ゆっくりとこの街のさまざまな表情を見てみるつもりだった。

しかし、残念ながら体調不良のため、ジェッダでの滞在はほとんどホテルで過ごすことになってしまった。

ジェッダは紅海に面した港町。

夕暮れに海辺に行くと高さ312メートル、世界一高いの大噴水「ファハド王の噴水」を眺めることもできる。

俄に観光産業に力を入れ始めたサウジアラビア政府は、紅海の美しい海を利用して世界的なリゾート開発を推し進めようとしている。

だから私もぜひ自分の目で紅海の海を眺めるつもりだったが、結局それも叶わなかった。

病気なので仕方がないのだけれど、返す返すも残念である。

そんなジェッダで、私が唯一外出したのが到着した日のランチだった。

ジェッダの街は、首都リヤドと同じく自動車がなければ暮らせないような広々とした街で、ホテルの前には片側3車線の本道と2車線の側道がまっすぐに伸びていた。

例によって、歩行者が道路を渡ることなどほとんど考慮されていない車優先の道路整備だが、幸いホテルの前に歩道橋があって道の反対側に渡ることができた。

ジェッダは南北を貫く幹線道路の本数が多いようで、リヤドのようなひどい渋滞は起きていない。

全体に洗練された印象を受ける街だ。

歩道橋を降りたところに外国人にもはっきりとそれとわかるバス停があった。

路線図もわかりやすく書かれていて、旧市街に行くにはここからバスに乗れば行けそうである。

体調が良くなったらバスに乗ってみようと思いながら、まずは昼メシを食べられそうな店を探すことにした。

ここでもスターバックスがあったが、それ以外にほとんど飲食店が目につかない。

スタバはダンマンで食べて懲りているので、パス。

アラブの人は、お昼に家に帰って家族と一緒に食事をするというから、ランチを提供する飲食店は少ないのかもしれない。

漫然と歩いていてもお店が見つからなそうなので、トリップアドバイザーのアプリから近くの飲食店を探してみる。

ちょっと良さそうなレバノン料理のお店が見つかったので、地図を頼りに歩いていくと、ものすごい立派なお屋敷に着いた。

ここがレバノン料理店?

どこにも看板もなく、扉も開いていない。

どう見てもこの情報は間違いのようである。

仕方なく次の店をネットで探すと、若者に人気のカフェが近くにあることがわかった。

行ってみると何軒ものカフェが集まっていて、中でもこの店には多くの若者で賑わっている。

お店の名前は「Cafe Locals」。

体調不良で食欲もさほどないので、このカフェで何か食べることにした。

テラス席は若者たちでいっぱいなので、私は店内に入り一番奥の席に座った。

ホテル近くで食べるつもりだったが、結局3キロほど歩くことになってしまった。

お店はとてもモダンな作りで、欧米の人気カフェと雰囲気は変わらない。

店内には静かにジャズが流れていた。

サウジアラビアでは、黒い伝統的な服を着る女性が多いが、この店ではそうした女性は少数派だ。

この界隈にはトルコやUAEなど外国の大使館が多いので、外国人客が多いのかもしれない。

ただ、伝統的な服を着た男女も普通にいて、それが自然に融合しているのが面白い。

イランでは去年からヒジャブというスカーフを矯正されることに反発する女性たちの抗議活動が活発化しているが、今のサウジアラビアではかつての風紀警察のような取り締まり組織は解体され、急速に自由化が進んでいる。

女性が運転免許を取得することが認められたのも、つい最近のことである。

若き実力者、ムハンマド皇太子が進める近代化政策がサウジアラビア社会を大きく変えようとしていて、その最先端を生きる若者たちがこうしたカフェに集まっているように感じる。

私は、アボガドのオープンサンドとアイス・カフェラテを注文した。

これが今のサウジアラビア。

ダンマンで食べたスタバでの食事より、ずっと美味しかった。

表通りから1本入ったこうしたカフェは、通りがかりに偶然見つけるという類の店ではない。

人気のお店はジェッダのあちこちに点在していて、最新の情報に精通したサウジの若者たちが車に乗って集まってくるのだろう。

こうした欧米化の流れはこのまま進むのか、それともどこかで反動が来るのか?

自由な空気に触れた若者たちがサウジアラビアにどんな変化をもたらすのか、今後の10年がとても重要だと感じながらカフェを後にした。

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