<きちたび>アラビア半島の旅2023🕌クウェート🇰🇼 現地在住日本人に付き合ってもらって本場のクウェート料理を堪能する

クウェート在住の日本人教師、自称「砂漠」さんに案内してもらって地元でも有名だというクウェート料理のお店を訪ねた。

お店の名前は「フリージ・スウェーレ Freej Swaeleh」。

クウェート市内に4店舗を展開する人気店だという。

ホームページには堂々と「週末や休日には入店まで1時間待ち」と自ら告知するほど週末には混むらしい。

ところが、私たちが訪れたのは市の中心部から一番離れたAl Jahra店だったせいか、時間がまだ午前10時半過ぎと早かったせいなのか、広い店内はガラガラ。

たくさんいる従業員が暇そうにあちこちにたむろしていた。

まず目につくのは入り口に陣取るこちらの屋台。

たくさんのカップと大きなやかんが並んでいる。

これはクウェートではポピュラーなアラビアコーヒーの屋台なのだという。

コーヒーの屋台に置かれたこの丸くて甘そうなものも気になる。

階段の奥にはアラブ風のパンを焼く部屋が。

インドのタンドールのような大きな釜でどんどん丸いパンを焼いていく。

こちらは個室。

土間に座って食べる伝統的なスタイルで、外から見えず家族だけの空間となるので女性客も安心して頭のかぶり物を外してくつろいで食事をすることができると家族客に人気らしい。

ニカブやブルカなど口まで覆う衣装を身につけていると、いちいち布の隙間から食べ物を口に運ばなければならないため、女性たちにとって食事は大きなストレスとなるのだ。

さて、これがメニュー。

私は砂漠さんに「お任せします」と料理をお任せするが、せっかくなら好きなものを食べてくださいと言われ説明を聞きながら選んでいく。

その結果、選んだのが以下のいずれもこの店で人気のメニューだった。

まず最初に運ばれてきたのは、例のコーヒー屋台に置かれていた丸い奴。

名前を教えてもらったが忘れてしまったので調べ直してみると、どうやら「ルカイマット」と呼ばれるスイーツだ。

蜂蜜漬けのドーナッツみたいで味は見た目通り、甘い。

アラビアコーヒーと一緒に食べるのだろうが、料理が来るまでのつなぎの役目も果たすのかもしれない。

そうしている間に、最初の料理が出た。

「ショルバ・ルビアン」というシュリンプスープである。

硬いパンをくり抜いてスープを入れているのはこの店のオリジナルで、この見た目のインパクトによって人気メニューとなっているという。

値段は1クウェート・ディナール、約437円とお手頃だ。

パンも一緒に食べてもいいが、あくまで内側を削りながら食べる程度、基本的にはスープだけを飲むもののようだ。

味の方は洋風のクリームスープに近い。

続いてはサラダ。

こちらは「ファトゥーシュ」と呼ばれるアラブの代表的な野菜サラダで、揚げた薄皮で作られた器はやはりこの店のオリジナルのようだ。

ファトゥーシュには「上にパンがのったサラダ」という意味があるようで、カリカリとしたお煎餅のようなものが細かくカットされた野菜の上に振りかけてある。

値段は1.250ディナール、約546円とこれまたリーズナブルだ。

器を壊さないように気をつけながら中のサラダを小皿に取る。

味付けもシンプルで特別驚くようなこともなく、さっぱりとした美味しいサラダだ。

そして今日のメインがこちらの「マジュブース・ラハム」。

「マジュブース」はインド米を炊き込んだ味付きのご飯の上に肉を乗せた大皿料理のことで、「ラハム」は羊肉を指す。

サウジアラビアでは「カブサ」と呼ばれ、アラビア半島全域で食される代表的なベドウィンの料理らしい。

それにしても、量が半端ない。

これで4.750ディナールだから、おそよ2000円ちょっとということになる。

料理自体は至ってシンプルなもので、好みの味付けをしてこれを食べる。

奥に見える緑と赤の小皿は唐辛子で「マブーチ」と呼ばれるらしい。

このマブーチと手前の赤いチリソースを混ぜ自分好みの味を作る。

羊肉は豚の三枚肉のように脂肪が多く、手づかみで食べるのがこちらの流儀のようだ。

もともと地面に布を敷き、その上に大皿を置いてみんなでそれを囲んで手で食べるのが遊牧民のスタイルだった。

その味はインド料理のビリヤニに似ていて、さまざまな地方の料理から影響を受けたのだろう。

最後に気になっていたアラビアコーヒーを注文した。

魔法のランプのようなポットから小さなカップにコーヒーが注がれる。

このアラブ独特のコーヒーポットは「ダラー」と呼ばれ、カップが空になると客がもう結構と言うまで注ぎ続けるのがアラブ流のおもてなしだという。

私は、アラビアコーヒーというのはトルココーヒーのようなものだとずっと思っていたが、全然別物だということをこの店で初めて知った。

コーヒーはエチオピアで生まれ、中東で初めて文化として定着し、それがオスマントルコを通じてヨーロッパへと伝わった。

つまり、アラビア半島やトルコがコーヒー文化のルーツなのだ。

カップに少量注がれたコーヒーは、色が薄く、独特の風味がある。

アラビアコーヒーの特徴はシナモンやクローブなどさまざまなスパイスを加えて沸騰させる点で、この店のコーヒーの味はカルダモンが効いていると砂漠さんは教えてくれた。

砂糖は一切入れず、スイーツと一緒に飲むのが正しいアラビアコーヒーの飲み方なのだそうだ。

こうしていろいろおしゃべりをしながらクウェート料理を満喫し、気づいたらすでに時刻は12時を回っていた。

しかしお客さんの姿は増えず、むしろ入店した時よりも減った気がする。

週末の人気店なのに不思議だと思って聞いてみると、砂漠さんは意外な話を聞かせてくれた。

1日5回のお祈りをするイスラム教徒にとって、お昼の12時というのはお祈りの時間。

先ほどまで食べていた客はみんな朝ごはんを食べにきていたのだという。

そしてランチタイムは大体、午後2時ぐらいから夕方ごろまでで、ディナーは日没のお祈りが終わった午後8時以降というのがこちらの常識なんだとか。

所変われば食事の時間も全く違うという話が私にはとても印象的だった。

クウェート料理と言っても、実際にはサウジアラビアでもUAEでも大差はなく、広く「湾岸料理」とも呼ばれる。

レバノンやトルコ、ペルシャやエジプト料理の影響も加わって、現代のクウェート料理が出来上がっている。

私たち日本人には少し縁が遠いが、実際にはどれも日本人好みで、今回の旅行をきっかけにアラブ料理がぐっと身近に感じられるようになったのは間違いないだろう。

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