岡山市の東のはずれに西大寺という街がある。

高野山真言宗の別格本山「西大寺観音院」を中心に発展した街で、毎年2月の第3土曜日の夜には日本三大奇祭の一つ「西大寺会陽」という裸祭りが境内で行われる。
子供の頃、この西大寺のお祭りに連れられて行った時に見た見せ物小屋があまりにも恐ろしく、それから半年間ずっと夢でうなされたことを思い出す。

私にとっては、あの時見たヘビ女や一つ目小僧の記憶しかないのだが、改めて訪れてみると、さすが中国観音霊場第一番札所だけあって、本殿や三重塔などなかなか立派なものである。

さらに興味深いのはその門前町。
お世辞にも賑わっているとは言えないが、その町並みはとても令和とは思えないレトロなもので、「ALWAYS 三丁目の夕日」など多くの映画やドラマのロケ地となったというのも頷ける独特の風情がある。
そんな昭和の風情が色濃く残る門前町「五福通り」のはずれにモダンなカフェがオープンしたのは2021年の年末のことだという。

お店の名前は「五福カフェ」。
築85年の倉庫をリノベしてオープンしたお店だというが、外観は昔のままの素朴な佇まいである。
農協に行く用事を済ませた後、ネットで見つけたこのカフェでランチを食べることにした。

入り口に置かれたメニュー板。
「週替わりランチプレート」1200円、「煮込みハンバーグ」1260円、「シーフードカレードリア」1190円と、値段は吉祥寺とさして変わらない。

誰も歩いていないこんな場所にお店を開いて来る人いるのかなあと余計な心配をしながら店に入ると、午後1時を過ぎていたがテーブルは全て埋まっていた。
客の大半はおばさま方、西大寺マダムの憩いの場になっているようである。
モダンに改装された店内は、外から見るよりもずっと洗練されていて、高い天井をイルカのオブジェたちが泳いでいた。

カウンター席に案内される。
目の前は天窓と大きなガラスの壁で作られた小庭、お店のインテリアにもなり大きな窓のない蔵を照らす明かり取りにもなっていた。
このお店、古民家リフォームの参考にできそうだ。

お店で提供されるのはいくつかのランチメニューのほか、コーヒーを中心としたドリンク類とスイーツ。
中でも自慢はヨーロッパから取り寄せたチンバリ社のエスプレッソマシンだそうだ。

注文を済ませて改めて店内を観察する。
高い天井は元々の柱や梁に新しい木材を足して補強してあるようだ。
天井を泳ぐイルカたちは、瀬戸内国際芸術祭に展示されていた作品を譲り受けたものらしい。

カウンターに座ると、目の前の小庭はこんな感じで見える。
ちょっとした工夫で暗い蔵がとてもおしゃれな空間に変身するんだなあと感心しながら眺める。

先に妻が注文した「海老のアンチョビクリームソースかけ」(単品1250円)が運ばれてきた。
通常はテリーヌやスープ、ライスかパンがセットになって1950円なのだが、単品でもパスタが付いていてケチな妻にはこれで十分なようだ。
濃厚なアンチョビクリームソースを絡ませたエビはとても美味しかったらしく、妻にしては珍しくペロリと全部を食べ干した。

私が注文したのは「煮込みハンバーグ」のセット(1260円)。
サラダとスープ、ライスがついてくる。

熱々のフライパンに入れられた煮込みハンバーグは結構大ぶりで、食べ応えがある。
味もしっかりと染みていて、ごはんが進む私好みのハンバーグだ。

2人ともプラス300円のドリンクセットをつけてもらうことにし、食後にホットの「ドリップコーヒー」をもらった。
こちらのコーヒーは私にはやや薄く、やっぱりエスプレッソにすべきだったと若干後悔する。

今、どんな田舎に行ってもこうした個性的な飲食店が増えている。
どちらかといえばレトロな老舗を選びがちな私だが、たまにはこういうおしゃれな店も悪くない。
店内をキョロキョロ見回しながら、我が家の納屋も少し手を加えるとこんな素敵な空間に生まれ変わるだろうと改めてリフォームの夢が膨らんだ。
食べログ評価3.23、私の評価は3.40。
「五福カフェ」 電話:090-1262-2021 営業時間:11:00~17:00 定休日:水曜 https://www.instagram.com/gofukukoubou.cafe.bar/
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