🇯🇵 香川/小豆島 2021年10月14日~15日
岡山への帰省に合わせた小旅行。
岡山県から小豆島に渡るには3つのルートがある。
岡山市内にある新岡山港、かつては宇高連絡船の起点だった宇野港、そして岡山県東部に位置する日生港からそれぞれ出発するフェリーを利用するルートだ。
日生港〜大部港

私が選んだのは日生(ひなせ)からのフェリーだった。
日生港は岡山県東部の備前市にある天然の両港で、その真南に位置する小豆島北岸の大部港まで1日4往復のフェリーが運行している。
私たちは一番早い8時のフェリーに乗るため、家を早く出て日生にやってきた。

運航する船は瀬戸内観光汽船の「フェリーひなせ」。
瀬戸内観光汽船は1969年に設立された海運会社で、もっぱら日生と小豆島を結ぶ航路のみで営業してきたが、2005年に岡山を本拠地とする両備グループに入り、今は「両備フェリーユニット」の一角として運航を続けている。
橋がない小豆島を巡っては様々な船会社が各地から乗り入れて激しい競争を繰り広げてきたが、ここに来ていくつかのグループに再編されつつあるようだ。

事前にフェリー会社に電話で問い合わせ、混雑していないので予約は不要との回答を得ていた。
7時すぎに日生港に着いたので、フェリー乗り場に車を止め、しばし朝の静かな海を眺める。
瀬戸内海の多島美が広がる日生湾にはいくつかのリゾートマンションも建っていて、その値段の安さから私も以前購入を検討したことがあった。
しかし妻の強硬な反対にあい、あえなく断念した思い出の地でもある。

切符の販売は7時半から、通りを挟んだ陸側にある小さな事務所で始まるという。
何から何まで、のんびりとしたものだ。

こちらが乗船券。
車1台(4m未満)と運転手1人分で5860円、同乗する妻の分が1050円で、全部で片道6910円だった。
高いか安いかよくわからない金額ということは、まあ妥当なのだろう。

フェリーの内部は思いのほか綺麗だった。
昔は安っぽい椅子が無造作に並べられているだけだったが、窓際にかなり立派なソファーが並んでいた。

窓の方を向いたサロン風の座席もあって、照明もちょっとしたシャンデリア風である。
もちろん空調もしっかりしている。
空いているので、まずは窓際に席を確保したうえで、風景を撮影するためにデッキに出てみることにした。

広々としたデッキからは360度の眺望が楽しめる。
天気予報では快晴の予定だったが、あいにく空一面にうろこ雲が広がっていた。

定刻の午前8時、船はぐるりと向きを変えて、日生港を後にする。
人がほとんどいないデッキで、潮風を浴びる。
やっぱり、船旅は気持ちがいい。

左手には日生の町と対岸の鹿久居島をつなぐ備前日生大橋。
その手前の海には、牡蠣の養殖棚がたくさん浮かんでいる。
日生は、この牡蠣を使ったお好み焼き「カキオコ」でB級グランプリの常連でもあるのだ。

日生沖の島々を眺めながら、ゆっくりとフェリーは進んでいく。
雲が多いのは残念だが、心洗われる景色である。

この日は気温が低く、デッキにいると冷えてくるので、船室に降りることにした。
最前列の席が空いていたので、そちらに陣取る。

進行方向に向かって視界が開け、自分の船を操縦している気分だ。
日生湾を出ると、もう目の前に小豆島が見えている。

午前9時、船は小豆島北岸をゆっくりと大部港へと進む。
小豆島北部には平地が少なく、海からいきなり高い山が突き出ている。
小豆島の最高峰・星ケ城山は標高817メートルあり、瀬戸内海に浮かぶ島の中では最も高い山だという。

こうして船内で景色を楽しみながらのんびりしていると、1時間から1時間10分で船は大部港に到着した。
車の出し入れも何のストレスもなく、橋で渡るのとはまた違った適度な船旅であった。
【岡山日生港〜小豆島大部港の時刻表・運賃】 https://ryobi-shodoshima.jp/time/setouchi_kankokisen/ 予約電話:050-3530-4239
土庄港〜新岡山港

帰りは小豆島西部の土庄港から新岡山港へ。
岡山行きは1日9往復あり、高松からのルートに次いで2番目に本数の多い主要航路となっている。
私たちは土庄港を11時40分に出発するフェリーに乗ったのだが、港に着いたのは15分前。
係の人に急かされながら少し離れた場所にある切符売り場に駆け込んだ。

岡山ルートは3つの船が就航しているそうだが、私たちが乗り込んだ船は、国際両備フェリーの「おりんぴあどりーむ」だった。
国際両備フェリーは、1928年創業の南備海運をルーツとし、1963年に国際フェリーが発足、そして去年2020年に両備フェリーと合併して両備グループの会社となったようだ。
土庄・岡山間の運賃は、車1台が運転手を入れて5900円、妻の運賃が1090円で、合わせて6990円。
日生ルートに比べて80円高い。

しかし船内は日生ルート以上に綺麗だった。
椅子は落ち着いた赤色で統一されていて、客室を取り囲む壁はほとんどガラス張りになっている。

特に最前列のシートは、まさに絶景を堪能するように作られていて、この日は晴天にも恵まれたため、最高のクルーズが楽しめた。
日本のフェリーもいつの間にか、素敵な乗り物に変身していたのだ。

屋上のデッキに上がると、こちらも遮るもののない360度のパノラマが楽しめる。
子供がいても走り回ることができるので、退屈せずに過ごせるだろう。

私たちと入れ替わるように土庄港に入っていく船は、小豆島フェリーの「しょうどしま丸」。
香川・高松港と土庄港を1時間で結んでいる。
小豆島フェリーが属する「四国フェリーグループ」は本拠を高松に置き、岡山を拠点とする「両備フェリーユニット」とともに小豆島航路を担う2大勢力となっているようだ。

定刻に土庄港を出港したフェリーは、静かな瀬戸内海を西に向かって進む。
左手に豊島、右手に犬島などを見ながらゆっくり進んでいくと、すぐ目の前に岡山の児島半島が見えてくる。

振り返ると、小豆島の上に雲が湧いていた。
風が山にぶつかり雲ができるのだろう。

出港から1時間、船は児島湾の中をゆっくりと進んでいく。
岡山市街地と児島半島をつなぐ児島湾大橋が見えてきた。
もうすぐ新岡山港に到着だ。

新岡山港は小さな港だった。
それもそのはず、ここを発着する船は、小豆島に向かうフェリーだけなのだ。
私たちは車なので別段不便はないが、車がない人はフェリーが到着して10分後に出る連絡バスを逃すとちょっと不便だろう。
周囲には何もないので、多少高くても止まっているタクシーを利用する以外に方法はない。
注意が必要である。
【小豆島土庄港〜新岡山港の時刻表・運賃】 https://ryobi-shodoshima.jp/time/ryobi_ferry/ 電話予約:050-3530-4239