帯広

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1泊2日で帯広に出張した。

羽田からわずか1時間あまり。飛行機の窓から見える景色は、まるでヨーロッパだ。

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農業をビジネスにしようと頑張る農業経営者たちが集まった団体の研修会が帯広で開かれた。日本農業の未来を考える番組を作るため、私たちも同行した。

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大型バスに分乗して雄大な田園風景の中を走る。

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最初に訪れたのは「十勝しんむら牧場」。

見渡す限りの広大な敷地で牛を放牧している。健康に育った牛からしぼる牛乳から様々な乳製品を製造販売している。

そのソフトクリームの美味しかったこと・・・。

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「十勝しんむら牧場」のこだわりはこんな言葉で書き表されている。

『牛に出来る事は牛に。土に出来る事は土に。』

『牛を牛らしく。牛が自由に必要な牧草を選んで食べることにより、健康で丈夫な牛に育ちます。より自然な放牧スタイルはストレスの少ない健康な牛を育て、安全で美味しい牛乳を作り出します。』

「土づくりから美味しい牛乳。放牧によって健康な牛を育てるためには、まず、健康な牧草を作らなければなりません。そして、健康な牧草を育てるためには、健康な土を作ることが欠かせません。』

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この日の帯広は、最高気温35.5度を記録した。東京よりずっと暑い。

牛たちも木陰に集まりじっとして動かない。

帯広は真夏でも30度を超える日はそれほど多くないという。たまたま、1年でも滅多にないクソ暑い日に来てしまったのだ。

バスもホテルも暑い。おそらく冷房の容量が本州に比べ弱いのだと思う。こんな暑さは想定していないのだ。

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北海道といえば、牧草をはむ牛の姿が思い浮かぶが、実際にはここのように牛を放牧している牧場は、広い北海道でもわずか5%に過ぎないのだという。

次に視察に行った「大野ファーム」も先進的な牧場だが、こちらは管理された牛舎で牛を育てている。

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大野ファームには現在4000頭の牛が飼育されている。乳牛だけでなく和牛も育てる。

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70ヘクタールの農地では、小麦、テンサイ、デントコーン、大豆を育て、それを自ら加工販売する六次産業化も手がけている。奥さんが中心となって、カフェも始めた。

パン作りに適するという小麦はすでに色づき、今月末には収穫を迎える。

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衛生管理も徹底していて、見学者は特殊なカートに乗せられ施設を見て回る。自由に歩き回ることは許されない。子牛を多く飼育しているため、外部から病原菌を持ち込まれることを警戒しているのだ。

ただ、今回の視察で一番印象的だったのは、牛ではなく豚だ。

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どうです?

自然の中で放し飼いにされる豚。あまり見たことのない光景だ。

豚たちは懸命に草を食べている。本当に豚という生き物は、休むことなく何かを食べ続けるのだ。

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この放し飼いの豚、「十勝しんむら牧場」が最近始めた挑戦だ。

牛と同様、豚舎に押し込むのではなく、自然の中で自由に繁殖させる飼育方法を実験している。豚たちは草むらの中を自由に歩き回り、いつのまにかどこかで子供も生まれる。すべて自由放任の飼育法だ。

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子豚たちの姿も見えた。生後すぐの子豚はカラスに襲われて命を落とすこともある。それでも自然のままにさせるのだという。弱いものは淘汰される。それが結果として良質な豚を作ることになるとの信念だ。

こうして生産された豚肉はまだ量が少ないが、東京の有名レストランなどに高値で出荷される。

こだわりの農業経営者の試みは、テレビの題材としてもとても魅力的だ。

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日本とは思えない恵まれた農業環境を持つ十勝地方。

ただ消費地には遠い。東京近郊の農家とは違う悩みを持つ。

十勝の田園を走りながら、日本の農業事情を考えた。農水省の局長は前日の講演でこんなことを話していた。

「世界の国々は食料の輸入も増えているが輸出も増やしている。それに比べ、日本は相変わらず世界トップクラスの食料輸入国で輸出はほどんど伸びていない」

日本の農産物は世界でもトップクラスの品質だと思う。なぜ輸出が進まないのか?

コストの問題もある。日本市場がそれなりに大きかったこともあるだろう。

しかし、一番の理由は海外に売るという発想が日本人になかったこと、そして売る努力をしてこなかったことだろう。

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この十勝で一人の若い農業経営者と出会った。

彼は夫婦で小規模ながら放牧による牧場経営を行なっている。「坂根牧場」というらしい。

牛にストレスを与えないようにしてしぼった自慢の牛乳は、ほとんどホクレンに出荷しているが、一部の牛乳を使って自分たちでこだわりのチーズを作り、ネットでも販売も行なっているという。

「自分たちで販売先を見つけるのが難しい」

彼はそう言った。

私が提案したのは、吉祥寺の店で彼らのチーズを販売することだ。少量でも品質がよければ吉祥寺なら売れるし人気が出るかもしれない。北海道でわずか5%しかない放牧の牧場で作られた手作りチーズだ。評判になれば雑誌などのメディアも取り上げてくれる可能性が高い。

十勝の小さな牧場と吉祥寺の小さなお店。

とても親和性がいい気がした。私が彼らのチーズを扱ってくれる店を探してみたい。地方で頑張っている若い農業者を支援してみたいと思った。

これは、定年後のやりがいある仕事になるかもしれない。

そんな思いつきがふと私の頭をよぎった。

 

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