明日は父の日。銀座に出かけたついでに、せっかくなのでランチを食べようということになった。
妻が持っていた7年ほど昔の銀座のガイドブックを頼りに、銀座をうろつく。妻は歌舞伎座裏の「喫茶YOU」に行きたいと言う。私はビストロか鰻が食べたかった。私が行きたかったビストロは満席、妻の行きたかった喫茶店は行列で断念。最終的にうなぎ屋に落ち着いた。
「鰻 登亭(のぼりてい)銀座店」。四丁目の和光裏にある。
とてもカジュアルな店構えだ。
店内も駅にあるそば屋のような造り。せっかく銀座まで来たのに失敗したかなと思った。
メニューもカジュアルだ。「うな丼」が1850円。「登亭、秘伝のタレで職人が丁寧に焼き上げております」と書いてあるが、そういう雰囲気を感じさせない店構えなのだ。
メニューをめくると英語や中国語でも表記されていた。こうして見ると、ますます海外にあるいかがわしい和食屋を思わせる。本当に大丈夫だろうか?
妻はいつものように一番安いメニュー「うな丼」を注文した。ご飯にはたっぷりとタレがかけてある。鰻も予想したよりちゃんとした大きさだった。
私は「父の日」前日なので「うな重 竹」(3700円)を注文した。箸袋がなんとも可愛いというか、安っぽいというか・・・。
フタを開けると、なかなか立派なうなぎが並んでいた。
肉厚でふわふわ、こんがりと焼き目もついて美味しそうだ。
肝吸いと漬物が付いてくる。
今年初めてのうなぎ。特別に美味いということもないが、普通に美味しかった。
店内の張り紙も3ヶ国語で書かれている。中国語はよくわからないが、赤く塗られた部分を見比べていて、赤ん坊のことを中国語で「宝宝」ということを知った。
何とも外国人にも気遣いをするお店である。
鰻は持ち帰りもできる。何から何まで商売熱心なお店でもある。
そんなことを感じた「登亭」だが、帰宅後ネットで調べて驚いた。このお店、江戸時代にルーツを持つものすごく歴史もあり、志もあり、アイデアもあるお店だったのだ。
「登亭」の公式ホームページをぜひご覧いただきたい。
そこには「うなぎの世界」と題されたページが設けられている。そこにはうなぎの生態から調理法、うなぎ料理の歴史や「登亭」の歴史までとても詳しく説明されている。とてもお店のホームページとは思えないほどの研究心が垣間見える。
それによると「登亭」の歴史は江戸時代の天保8年(1837年)に遡る。初代中野屋市太郎が千住にて川魚問屋「中市」を創業した。
そして6代目の田中隆光が、『うまくて安い鰻料理を、広く一般大衆に提供する』という基本方針を打ち立てて、昭和27年日本橋室町に「登亭」を創業。高級店でしか食べられなかったうなぎに革命を起こす。
「100円うなどん」で勝負をかけたのだ。高級店で1000円する鰻が100円で食べられる。口コミで評判は瞬く間に広がり、店は大繁盛した。
つまり「登亭」はうなぎを庶民の味にした革新的な店だったのだ。そんなことは知らずに安っぽい店構えだと考えてはバチが当たるだろう。
それでも、「100円うな丼」の時代は遠くなりにけりだ。
その時代、東京でも天然うなぎが獲れた。「100円うな丼」私も食べたかったなあ・・・。
食べログ評価3.54、私の評価は3.30。