<吉祥寺残日録>「芙蓉亭」閉店へ #200420

遅ればせながら、日本のコロナ対策がようやく動き始めた。

私がこのブログで指摘してきた課題、例えばPCR検査の拡充、発熱外来の設置、軽症者を収容するホテルの確保、マスクなど医療器具生産に日本企業が名乗りをあげることなど、まだ不十分ながら正しい方向に進み出していると感じる。

そのため、ニュースを見ながら頭に来ることも減ってきた。

どうしても書いておきたいことも今日はないので、最近吉祥寺の街でショックを受けたことを書き残しておこうと思う。

それは、吉祥寺を代表する有名フランス料理店「芙蓉亭」が閉店を発表したことだ。

新型コロナウィルスの感染拡大のため、一時的に店を休業するのではない。

33年間愛されてきたお店を、5月6日に完全に閉じることを決断したのだ。

3月末から、芙蓉亭の入り口にテーブルが置かれ、テイクアウトのお弁当の販売が始まった。

たまたま通りがかった私と妻は、芙蓉亭を応援するつもりでサンドイッチを買った。

次に店の前を通った時、さりげなく置かれた「閉店のお知らせ」を見つけた。先週15日のことだった。

「閉店のお知らせ」の全文を書き残しておきたい。

地元吉祥寺に先代、母が自宅をレストランに改装して33年目、来月5月6日にて店を閉店させていただきます。

当店にて華燭の宴をあげられた方、お誕生日、入学・卒業祝い、同窓会等々、多くの方々の人生の節目節目に立ち会わせていただけた事、沢山の良き思い出を頂いた事、厚く厚く御礼申し上げます。

お孫さんのお食い初めで来店された長年のお客様が、娘さんの七五三、成人式、お顔合わせ、全部この店でお祝いしたとセピア色の写真をお持ちくださいました。その娘さんが、お母様になられての三代揃ってのお祝い。 また、サプライズプロポーズのお手伝いで、指輪を無事渡すところを、こちらも一緒になって緊張したことなど、数々の幸せなシーンが思い出されます。

長きにわたり、芙蓉亭に足を運んでくださった皆様、改めて御礼申し上げます。

コロナに負けぬよう、皆様も命を大切になさって下さい。

重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。

令和2年4月11日       店主

このお店で日々繰り広げられてきた小さな物語が目に浮かぶようだ。

フランス料理店にしては、どこか家庭的な印象を漂わせるお店だった。

井の頭公園の緑を借景にした吉祥寺らしいフランス料理店。家族の大切な日に訪れたいお店だった。

この芙蓉亭の閉店を、朝日新聞が記事にしていた。

見出しは、『予約の取れない老舗仏料理店に急な幕切れ「恐怖感じた」』。

記事によると、オーナーの中山葉子さんは12年前に母親から店を引き継いだという。花見シーズンや異動時期の3月、4月は予約帳は真っ黒になるほど経営は順調だった。

しかし・・・

新型コロナウイルスの影響で、今春は歓送迎会のキャンセルが相次いだ。予約の取り消しの電話が続き、「恐怖を感じた」と中山さん。7人のスタッフを抱え、人件費や食材費、電気代などで毎月800万円かかる。東日本大震災の時は徐々に客足は戻ってきたが、今回は先が見えなかった。

出典:朝日新聞

まさに、新型コロナウィルスが「芙蓉亭」を吉祥寺の街から奪ったのだ。

このところ私は、吉祥寺の飲食店がコロナ危機をどのように乗り切ろうとしているのかを確かめるため、ランチタイムに合わせて時々街を歩いている。

中華料理の「竹爐山房」、そば処の「よしむら」、喫茶店「近江屋」。

コロナの前に店を閉めた名店は、もう跡形もなくなっていた。

また井の頭通りのはずれにあった定食屋さん「PUBLIC KITCHEN cafe」など、知らないうちに閉店していたお店もあった。

吉祥寺に奥深さを与えていたお店が次々に消えていく。

コロナがなくても、飲食店の経営は簡単ではないのだ。

そして今、政府の緊急事態宣言を受けて、多くの店が臨時休業を決断し、休まない店は急遽テイクアウトを始めたり、営業時間を短縮したり、試行錯誤を続けている。

かつて経験したことがない試練が、すべての飲食店を襲っている。

しかも、コロナ危機はまだ始まったばかりだ。

政府が全面的に支援してくれることは期待できない以上、店のオーナーたちは自らの才覚でこの危機を乗り切るしかないのだ。

ぜひ、頑張っていただきたい。

日本がコロナ不況から抜け出した時、吉祥寺から個性的な個人経営の飲食店がすべて消え、チェーン店ばかりになるのは絶対に見たくない。

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