緊急事態宣言で酒類を提供する店に休業が要請され、苦境に立つ酒屋さんを少しでも応援しようと、これまで利用したことのなかったお店に行ってみた。

ジブリ美術館の近くにある三鷹の酒屋「マサキ屋商店」。
昭和15年創業で、地元密着で80年以上、この場所で営業を続けてきた。
公式サイトをみると、こんなことが書いてある。
価格面では大手量販店、スーパーに到底勝てませんので、配達をはじめ違った面でのサービスで皆様のお役に立ちたいと思っております。
シニアの皆様、重たい商品は私共が運びますので遠慮なくご注文下さい!!2坪の大型冷蔵室 2か所完備しておりますので、大量の冷やしたお飲み物のご注文もお受けできます。ご希望があれば、発泡スチロールを大量に在庫しておりますので、保冷氷を加えて万全な状態でお届けすることも可能です。
引用:マサキ屋商店

店の正面ガラスには、地元のJ1チーム「FC東京」のポスターが貼られ、三鷹市特産の「キウイフルーツワイン」を告知する紙も・・・。
さらには、「江戸・東京の酒」としていくつかの推奨銘柄も紹介してあった。
私のような日本酒初心者には、こうして推しをはっきり示してもらうと無駄に迷わなくていい。

その中で特に私の注意を引いたのが、『多摩自慢 ふわる白』という純米吟醸にごり生酒である。
「テレビ朝日 徳光和夫さんの路線バスで寄り道の旅で紹介」と書かれている。
さらに・・・
『りんご酸高生成酵母で仕込んだ新しい味わい。さわやかな飲み心地。徳光さんが「のどを通る時、3色4色に味が変化するような感じで美味しい」との事』
よくわからないが、「これにしよう」と決めて店に入った。

店内はさほど広くなく、客もいなかった。
お酒以外にも、置目やお菓子なども置いていて、かつてはコンビニ的な役割も担っていたことを伺わせる。

お目当ての「ふわる白」は、奥の冷蔵ケースに入っていた。
漢字のラベルが並ぶ中で、白い仔象のイラストはとても場違いな印象を与える。
私が入ってきたことを察知して、奥から店主らしき若い男性が出てきた。
「緊急事態宣言の影響はどうですか?」と聞くと、「お酒を納めていた宴会が全部なくなっちゃって大変」だと嘆いていた。
コロナのせいで突然「悪者」にされてしまった酒。
家飲み客はどうしても量販店に流れるため、地元の酒屋さんは特にダメージが大きいようだ。

ということで、この日買ったのは東京の日本酒「多摩自慢 ふわる白」(720ml / 1595円)。
「絵本のようなラベル」も特徴で、「楽しい幼稚園」なども担当しているとみたさなえさんが象のイラストを描いたそうだ。
決してセンスがいいとは思えないが、「日本酒を好きな方が少しでも増えたら!という想い」が込められている。

この風変わりな日本酒を作ったのは、東京・福生市の石川酒造。
江戸時代の文久3年(1863)創業の老舗の酒蔵である。
東京を代表する「多摩自慢」のブランドで日本酒を作り一方、明治時代からビールの醸造も行い、進取の精神に富んだ会社のようだ。
裏ラベルには、こう書いてある。
『もっと酸味があって、もっと爽やかな日本酒があってもいいじゃん!と杜氏が考え醸造しました。そのままでも、炭酸と氷を入れてより爽やかで軽いカクテルにしても、日本酒の楽しみ方は、無限大に広がります。』
一体、どんな日本酒なのだろう?

グラスに注ぐと、ほんのりとした濁りがある。
お米は全量山田錦を使用。
精米歩合は50%で、アルコール度は14〜15度の間だという。

油揚げとおひたしをつまみに、一口飲んでみる。
グラスの中には、細かな水泡ができている。
炭酸のような爽快感とフルーツの甘さ。
まるでシャンパンのような日本酒だ。

ボトルの底にオリが溜まっているのに気づき、少し混ぜてから注ぐと、本格的なにごり酒になった。
日本酒度は−12、酸度は4.4とかなり振り切った濃厚甘口となっている。
甘いのでガブガブ飲むという感じではないが、シャンパンのように食前酒的にちょこっと飲むのにはちょうどいい。

どんな料理にも合わせやすく、鮭の煮浸しとも美味しくいただけた。

鰹の佃煮にも違和感なく合わせられる。
ワイン好きな人にはとても飲みやすい日本酒ではないだろうか。
試行錯誤を続け新たな魅力をどんどん開発中の日本酒だが、狙い通り若い女性客を掴むことができるだろうか?
「マサキ屋商店」 電話:070-6663-8664 https://masaki-ya.com/ 「石川酒造」 住所:東京都福生市熊川1番地 電話:042-553-0100 https://www.tamajiman.co.jp/
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