シェーバー

今朝いつものようにヒゲを剃ろうとした時、突然シェーバーが異音を放ち始めた。

きのうまではごく普通に使えていたのだ。この何年もシェーバーのことなど、ちゃんと考えたこともなかった。私は無精なので、シェービングクリームを使うこともなく、朝歯を磨いた後に、電動のひげ剃り機を顔に当て適当に撫で回す。ローションを使うこともない。

壊れたシェーバーは、年末のビンゴ大会か何かでもらったものだ。パナソニック製の4枚歯。顔に当たる面がそれまでのものに比べて広い。肌に優しいのだと説明された。

その前は、ずっとブラウン製を使っていた。私が会社に入った頃にはまだ日本製のシェーバーは性能が悪く、「ブラウンの深剃り」を迷わず買っていた。ブラウンがどこのメーカーなのかも考えたこともなかった。

初めて使うパナソニックは、剃り面が広いので、横着者には便利だ。顔の上を動かす回数が少なくて済む。それでなくても短時間だった私の髭剃りタイムは一段と短縮された。

さて、どうするか。

変な音がするとはいえ、動いてはいる。

ただ変な音のする機会を顔に当てるのは、なんとなく気が進まない。根拠はないが、ヒゲが挟まったまま止まったり、顔が切れたりするのではないかと余計な想像力が働く。

そういえばこのシェーバーをもらってから5年ほど、刃を一度も替えていない。刃を交換すればそのまま使えるかもしれない。

でも、外は雨。外出するのが面倒臭い。

まあ、またでいいかと思いながら、シェーバーのことは後回しにして本を読んでいた。

夕方、図書館から予約した本か届いたとメールが入った。その時、突然妻が「髪を切ってくる」と言った。「あっ、そう。いってらっしゃい。」といつもながら素っ気なく返事をしたが、ふと、「待てよ」と思った。

窓の外を見ると、いつのまにか雨がやんでいる。時計を見ると4時だ。まだ図書館は開いている。

私が利用している吉祥寺図書館はヨドバシカメラの裏にある。5時までに図書館で本を受け取り、その足でヨドバシカメラにシェーバーを持ち込んで相談する。これは完璧だ。そもそも今日は一歩も外出していない。少し外の空気も吸いたくなっていた。

「俺も行く」と妻に告げ、変な音がするシェーバーをリュックに放り込んで家を出た。

昨日は暑いぐらいだったのに、外はかなりひんやりしていた。美容院に行く妻と別れ、図書館で無事本を受け取り、ヨドバシカメラに行った。シェーバーは何階だろう。もう10年以上、シェーバーなんて買っていないから、わからない。

売り場は2階だった。そして、店員さんはとても親切だった。

まずはシェーバーから出る変な音を聞いてもらった。誰が聞いても、やはり異常な音だった。

問われるままに、もう5年ほど使っていて、一度も刃を替えたことがないと伝えた。

内刃は2年、外刃は1年で交換するのが普通だと教えてくれながら、シェーバーを分解して、汚い刃を清掃してくれた。5年使っているわりには刃がきれいだと褒めてくれた。私のヒゲが濃くないせいだろう。

清掃を終え、そして動かす。やはり異音は消えない。

店に用意してある別の内刃に取り替えて動かす。やはり異音は消えない。

「刃を替えても音が消えないかもしれないですね」

仕方がない。新しいシェーバーに買い換えることにする。どうせ今までのはもらい物だ。

そこでシェーバーについて聞いてみた。

ブラウンは一番刃が薄く、やはり深ぞり性能が高いという。一方、パナソニックは首振りが優れていて肌に密着、剃り残しが少ないという。

私の選択はパナソニックだった。適当にチャッチャとヒゲを剃る。それが私には向いていると感じた。

このシェーバーで退職までヒゲを剃ることになるのだろう。

きっと、替え刃を使うこともないだろう。死ぬまで治らない無精者である。

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