今日は朝から快晴、風もなく12月としては超快適な一日となった。
今月の帰省ではいろいろ片付けなければならない宿題があったが、その一つが庭木の剪定である。

以前から妻に何度も急かされていたのが、塀からはみ出した庭木を切る作業だ。
塀際に植えられているのは、冬でも緑の葉を茂らせている常緑樹。
この季節、たくさんのどんぐりが木の周辺に落ちていて、その葉っぱの形や樹皮の様子から判断しておそらく「アラカシ」だと思われる。

樹高は4メートルぐらいあるだろうか。
太い幹が2本伸びていて、そのうちの1本が道路側に倒れるように斜めに傾き、その枝は塀の外のカーブミラーに当たりそうになっている。
私としては、特に交通を妨害しているわけでもないのでそのまま放置しておけばいいと思うのだが、真面目な妻はどうしてもそれが許せず、何度となく「あの木を切って」と私に催促した。
その度に、今は切る時期ではないので、冬になったら切ると約束せざるを得なかったのだ。

そんなこともあって、先月近くのブックオフで剪定の本を買ってきた。
曳地トシ+曳地義治著『鳥・虫・草木と楽しむオーガニック植木屋の剪定術』。
無農薬、無化学肥料、除草剤なしで行う92種の庭木の剪定方法が記されている本である。
早速、「カシ類」のページを見ると、こんなことが書いてあった。
アラカシ、シラカシ、ウバメガシ、スダジイなどのカシ類は基本的に大きくなるので、一度放任して大きくしてしまうと、ほどよい大きさに維持するのが難しくなる。スペースの小さな庭にはあまり勧めない。
どんぐりがかわいいから植えたいという人もいるが、剪定をしないと維持できないようでは、どんぐりもほとんどつかない。カシ類を植える場合はよく考えてからにしたい。
引用:『鳥・虫・草木と楽しむオーガニック植木屋の剪定術』
なるほど、確かにアラカシ、シラカシ、スダジイなどは井の頭公園にそびえている大木の名前だ。
ご先祖様は何故このような樹木を庭に植えたのだろう。

この夏、上へ上へと伸びる何本もの枝を剪定しようと、脚立に登って高枝バサミで必死に格闘したのだが、高すぎて狙った枝まで届かずに断念したことがあった。
ここは妻が言う通り、道路側に伸びた太い幹を根元近くで切って、コンパクトにした方がいいだろうと私も考えた。

問題は、どうやってこの大物を切るかということだ。
まずはさまざまな角度からアラカシの様子を観察する。
まずは、私が地上にしっかり立って、根元近くの太い幹をチェーンソーで一気に切ることを考えた。
問題はすぐに思い浮かんだ。
高さ4メートルの樹木が倒れると、その重みで塀が壊れるだろうということだ。
下手をすれば塀を乗り越えて道路側に落下する可能性もある。
あまりにも無謀なので、その伐採方法は却下する。

切りやすい下の方の枝から切っていき、徐々に上の枝を落としていくことも考えた。
下の枝がなくなれば、脚立が立てやすくなるメリットはあるが、上の枝が落下した際のクッションがなくなるため、落下の衝撃でやはり塀を壊す可能性があると判断した。
いろいろ検討して、上の枝から順番に切っていく方法を選ぶ。

まず最初に、一番上で枝分かれしている枝のうち内側に伸びている枝を切る。
使うのは先月購入した充電式伸縮ポールチェーンソーだ。
私は地面に立ったまま、高枝バサミのように目一杯ポールを伸ばして目標の枝にチェーンソーの刃を当てレバーを引く。
すると、ガーという音と共にあっという間に直径5センチほどの枝が切れた。
その枝は何本もの小枝に分かれていて、それが葉っぱごと落下し、狙い通り下の枝に引っかかって止まった。
よし!上手くいった!
引っかかっている枝を手で掴み地面に落とす。

道路側に張り出した高い枝は、脚立に上って小型の電動チェーンソーで切断する。
完全に切断する手前で止めて、切った枝が道路上に落下しないように小枝を手でつかまえてから残った部分を切り離した。

少しずつ切っているがアラカシはずっしりと重い樹木のようで、危うく落としそうになる。
作業を始める前に想定していた以上に、この木は重いのだ。
こうして枝葉を全て取り除いた後、上から順に幹を丸太切りしていく。
幹の太さは20センチ以上あるため、小型のチェーンソーでは刃の長さがギリギリで、上から切ったり横から切ったり工夫しながら苦労しながら少しずつ切断していった。

こうして30分ほどアラカシと格闘し、道路側にはみ出していた幹を完全に取り除くことができた。
道から見上げると、カーブミラーのまわりがスッキリして見通しが良くなった。

チェーンソーや高枝バサミ、剪定バサミなどの道具を使い分けて、庭木を剪定するのもやってみると案外おもしろい。
ただ適当にハサミを入れるのではなく、ちゃんと勉強して庭木の種類に合った剪定方法を身につけたいと思った。

今日は妻のリクエストで、ホームセンターで売られているジューンベリーとラズベリーの苗も買ってきた。
雑草の巣になっている前庭を来年こそは少し綺麗にしたいということらしい。
ジューンベリーもラズベリーも妻が以前から植えたいと思っていた庭木で、うまく根づいてくれれば、ベリーの実を収穫できるはずだ。

買ってきた苗をすぐに庭に植える。
もともとこの場所にシンボルツリーとして植えたミモザの苗木は、大きくなってもいいようにお墓の近くに植え直すことにした。
妻は昔からガーデニングが趣味だが、小さな鉢植えが中心で、広い庭を自ら作ったことはない。
「やっぱり土いじりは楽しい」、一日の作業を終えて妻はそう言った。
気になっていたアラカシが切られ、前から欲しかったジューンベリーとラズベリーを手に入れたのだ。
妻にとっては最良の一日、どうやら完全に庭づくりにハマった様子である。

私が子供だった頃からほとんど変化がなかった庭の様子が、私たちの手によって徐々に変わり始めた。
ご先祖様がどういう風に見ているかはわからないが、住む人が変われば庭も変わるのは自然の流れだろう。
10年後、自分たちが作り上げた庭を眺めながらお茶を飲み、満足感が得られれば最高の老後の営みと言えるかもしれない。
妻を助けながら、私も畑同様に庭の手入れも頑張ってみようと思えた楽しい一日であった。