岡山に帰省して1週間が過ぎ、耕作放棄地の片付けにもようやくめどがたった。

12月に草刈りを始めた時には、高さ3メートルのセイタカアワダチソウやススキ、しぶといつるバラやチクチク痛いセンダングサなど多種多様な雑草たちに覆われていた広さ2000平米の耕作放棄地。
雑草で視界をさえぎられて、この畑の先がどうなっているのか確認することさえできない。
これを一人でせっせと草刈りをし、今月は刈り倒した雑草たちを野焼きして始末する作業に明け暮れた。
火を扱う作業は正直怖さがあるが、あれだけあった枯れ草の山が嘘のように消えてなくなるのだから、火の威力というのは本当に凄いものだと感心する。
野焼きの初日、2日目についてはこのブログですでに書いているので、今日は野焼き3日目以降の作業を振り返っておこう。

1月13日、野焼き3日目。
ついに畑の一番北の端まで辿り着いた。
この日は午前中伯母の用事があったため、早めに昼メシを済ませて午後一番から野焼きに取り掛かった。

この日最初の着火はお昼の12時半。
この辺りまで来ると草刈りがいい加減で、刈り残したまま立ち枯れた雑草が結構残っている。
民家も近いしこうした刈り残しの草に火が燃え移ったら大変だ。

意図しないところに燃え広がらないように、これまで以上に慎重に草の山を作る。
火をコントロールするのは難しいので、点火する前の準備が野焼きのポイントである。
丁寧に準備した甲斐があり、周辺に燃え広がることもなく、狙い通りに積み上げた枯れ草だけを焼くことができた。
1回目の野焼きはわずか20分ほどで終わった。
我ながら、初日に比べて手際が良くなっている気がする。

そしていよいよ畑の一番北側のエリアに取り掛かる。
この場所は少し開けていて、ほぼ正方形をしている。
草刈りも目立った大きな雑草だけを刈って、それ以外は放置したままだ。
ただし、中心部分に火をつける分には多少燃え広がっても他人様にご迷惑をかける心配は少なそうに見える。
そこで、これまでのように枯れ草を苦労して集めるのではなく、点火地点だけに草の山を作り、後は風にまかせで炎が地面に倒れた枯れ草を焼いていくのに委ねてみようと判断した。

結果は予想通りだった。
枯れ草を人為的に集めて高く積み上げていない分、炎は大きくならず、ダラダラと四方八方に燃え広がっていく。
私は手に金属製のスコップを持ち、行って欲しくない方向に進む炎は叩き消すことで、火をコントロールする。
本来の野焼きって、こういう感じなんだろうと思った。

私が最も心配したのは、民家がある方向に燃えやすいイネ科の雑草が刈らないまま大量に残っていることだった。
こちらの方向にだけは、間違っても炎が向かわないようにしなければならない。
じわじわと炎の波が草むらに近づいてくると、すかさずスコップで叩いて消す。
火に近づくと顔が焼けるような熱を感じるが、そんなことは言ってはいられない。

幸いこの時、風は南西方向から吹いていて、炎は草むらとは反対側の北東方向に燃え広がっていった。
そちらならば、どんどん行ってもいいよ。
西に向かう炎は消して、北東方向は放置する。
こうして畑の東端まで炎は到達した。

ちょうどこのタイミングで、冷たいものが顔に当たった。
予報通り雨がポツリポツリと降り始めたのだ。
まさに狙い通り、今日の作業はここで終了だ。
残っていた小さな炎を片っ端から消してまわり、後の始末は雨におまかせしよう。
まだ燃やしたい枯れ草はたくさん残っているが、特に急いでやらなくてもいい。

帰り際に振り返ってみると、3日にわたって炎と格闘した野焼きの跡が黒々と連なっていた。
初日に焼いた大きな1箇所、2日目は小刻みに5箇所、そして3日目は2箇所。
一人の人間が1日にできる作業は限られているが、それでも毎日コツコツと続けていると、その後にはしっかりと結果が残るのだ。

1月16日。
雨のために畑仕事ができなかったり、ブドウの剪定作業を優先したりで、耕作放棄地の片付けはこの日が4日目だ。
野焼きを続行することも考えたが、2000平米の畑に隣接する200平米ほどのブドウ畑も耕作放棄地となっていて、これをまず片付けることにした。
この畑に植えられたブドウの木がまだ使えるものなのかもわからないが、少なくとも、先月刈った雑草の処理と最低限の剪定ぐらいはしておこうと思った。

伸びたツルを切り、はがれたビニールを引っ張って直す。
この畑のブドウは本気で収穫しようと思っていないので、剪定の仕方も大雑把で、その代わり作業はあっという間に終わった。

そして、地面に倒れている枯れ草を熊手で集めては隣の畑に運ぶ。
低いブドウ棚の下で枯れ草を集める作業はことのほか大変で、1回草を運ぶたびに、トンネルの間から顔を出して呼吸を整える。
正直、この作業はしんどい。
それでも1時間40分ほど働いて、午前中になんとかブドウ畑の片付けを終わらせた。
そして午後は、再び畑の草刈り。
刈り残していたところを、もう一度きれいに刈っていく。

そして今日、耕作放棄地の片付け5日目。
午前中はまた草刈り。
先月、概ね刈ったつもりでいたが、まだ刈り残したエリアがこんなにあったとは・・・。
草刈機の天敵、イネ科の雑草と格闘する。

草刈機のバッテリーがなくなったところで草刈りを中断。
再び野焼きを始める。
今日焼くのは、主に前日に隣のブドウ畑から運んだ枯れ草。
これが結構な量なので、焼いて処理しないと邪魔になって仕方がない。

なるべく1か所にたくさんの枯れ草が集まり過ぎないように注意して枯れ草を並べ、西側の端から焼いていった。
今日は東風が吹いていたので、一気に燃え広がらず、炎は緩やかに草の山を飲み込んでいく。
今日午前中に焼いた場所には、燃えやすいイネ科やササの切り株があったので積んだ草の山を焼き尽くした炎はこうした切り株を伝って静かに燃え広がっていった。
でもそれは想定内。
私としても余計な切り株が灰になってくれた方がありがたいぐらいだ。
とりあえず炎が燃え広がるのを眺めながら、ヤバいと思った時だけスコップを持って消しにいく。

こうした11時半、炎は全部消えて、午前中の作業は無事に終わった。
灰で黒くなった畑を眺めながら、あの耕作放棄地がずいぶん変わったものだと、我ながら感心する。

ところがこの作業中、雑草から思わぬ反撃を喰ってしまった。
硬い草の切り株が長靴の底を突き抜け、私の足の裏に刺さったのだ。
「痛い!」と感じた後、靴下が濡れてくる感覚があり、ある程度の出血があったことがわかった。
家に戻って靴下を脱いでみると、ちょうど土踏まずのあたりに傷があり、血はすでに止まっていたが、傷を中心にして丸くて赤い血の跡が残っていた。

風呂場に行って傷口を洗い、持参していた軟膏を塗る。
傷口を改めて確認すると、半円形にえぐれていて、ちょうど竹槍で刺されたような傷跡である。
足の裏なので筋が通っているようで、傷の周辺が内出血している。
歩くと多少痛みはあるが、腫れなければ午後も作業はできるだろう。

それにしても、たくましく成長した雑草の茎というものは凄まじいものである。
この耕作放棄地の片付け作業を始めてから、私の長靴には何か所も穴が開いた。
いずれも草に貫かれたものだ。
幸いこれまでは長靴だけのダメージで済んでいたが、ついに私の体にも直接雑草の攻撃が及んだ。
今度ホームセンターに行ったら、丈夫なインソールでも探してみよう。

午後。
草刈機のバッテリーのチャージがまだ終わらないので、予定を変更して耕耘機を畑に持っていくことにした。
愛用のホンダのミニ耕耘機「ピアンタ」。
今日は手押しではなく、車に積んで畑まで持っていくことに。
近所の農家さんたちはみんな畑に行く時は軽トラが当たり前で、私もそれを真似て愛車「ハスラー」に耕耘機を積み込んで直接畑に乗り入れた。
狭い田舎道はまだ慣れないので、時速10キロほどでゆっくりと慎重に運転する。

気持ちのいい晴天の下、黒々と野焼きした耕作放棄地を耕耘機が耕すと、黒が茶色に変わる。
「ピアンタ」は卓上コンロ用のガスボンベで動くので、新しいカセットを1本入れ、そのガスがなくなるまで耕すことにした。
とりあえずは、3月にジャガイモを植える場所だけ耕せばいいのだが、どうせなら行けるところまで「ピアンタ」には働いてもらおう。
去年耕していたお墓の近くの小さな畑は狭いので、ちょっと耕すともう終わりだったが、ここは広いので、1本のカセットでどのくらい耕せるのかを試すにはちょうどいい。

ただし、耕作放棄地を耕すのは通常の畑を耕すのとはわけが違う。
頑丈な草の根がびっしりと残っていて、「ピアンタ」は強い抵抗に遭うたびに飛び跳ねてしまう。
所詮は軽量のミニ耕耘機、本格的なトラクターのようにスイスイと作業は捗らない。
「ピアンタ」が通った後には無数の草の根が散乱していた。

1時間余り耕していただろうか。
ガスボンベが空になり、耕耘機は止まった。
幅4メートル、長さ10メートルほどの畑ができていた。
硬い草の根に苦しみながらも、しっかりと耕し、先ほどまで残っていたたくさんの切り株が完全に消えている。
広い畑を耕すにはもっと大きな耕耘機が必要かなとも思っていたが、とりあえずはこの「ピアンタ」で間に合いそうだ。

作業を終えて、「ピアンタ」のローターを掃除していると、太い針金が絡まっていた。
おそらくはブドウ棚に使っていた針金が地中に埋まっていたのだろう。
よく壊れなかったものだ。
危ない、危ない。

この後、再び草刈りと野焼きをして、今日の作業は終了。
まだ全部きれいになった訳ではないが、目標だった畑づくりまで進んだことで、今月の帰省の目的はほぼ達せられたと言っていいだろう。
明後日には東京に戻る予定なので、残る作業日は実質1日。
明日は野焼きの続きをするか、それともこれまた耕作放棄地となっているもう一つのブドウの片付けに手をつけるか、ちょっと悩みどころだ。
また明日の朝の気分次第で決めればいい。
ここまでくれば、後の作業は3月に回してもなんとかなるだろう。