季節のめぐりよりも暦は少し早いようで、今日は二十四節気の「立冬」。
冬が始まる日だという。

とはいえ、東京では紅葉もまだ始まったばかり、このところ気温も高くて過ごしやすい日が続いている。
少し体を動かしたくなったので、井の頭公園で軽くジョギングとストレッチ、そして400mトラックを走ってみた。
最初は快調にスタートしたものの、150mほどで息があがり、最後はもうぜいぜいと息も絶え絶えで、1周のタイムは1分47秒もかかった。
目標の1分半にはほど遠い。
それでも時々はこうして肺をいじめてみるのもいいんじゃないかと勝手に思う。

立冬の初候は「山茶始開(つばきはじめてひらく)」というらしい。
「ツバキ(サザンカの説もあり)の花が咲き始める頃」という意味だが、「山茶花」というのは「サザンカ」と読むのが一般的ではないのか。
そもそも、ツバキとサザンカは見分けが難しく、井の頭公園で咲いている花を見てもいまだに判別できないでいる。

井の頭池の周囲には「グリーンアドベンチャー」というクイズ形式で植物の名前を覚える案内板が設置されているのだが、この中に「ツバキ」も「サザンカ」もある。
「ツバキ」の方は「お茶の水橋」の近くにあって、花の色は赤色で2〜4月に咲くと書いてある。

しかしこの札の脇にはもうすでにたくさんの赤い花が咲いているではないか。
ネットで調べてみても、ツバキとサザンカを見分けるポイントの一つに花が咲く時期というのがあって、サザンカが10〜12月に咲くのに対して、ツバキは12〜4月と遅いのだと書いてあることが多い。
それなのに、井の頭公園ではあちらこちらでツバキの花が咲いているのだ。

一方の「サザンカ」は札は、井の頭池の南側、「ひょうたん橋」寄りの茂みの中にあるのだが、こちらは10〜12月に白色の花が咲くと書いてあった。

ところがこちらも白ではなく赤い花が咲いていて、案内板の内容とはいささか異っているためますますややこしい。
花の形がツバキの方が厚みがあって、サザンカは平べったいという見分け方もあるようだが、ツバキの種類は実に多く、平べったいツバキもあるようだ。

別の場所には白いツバキのような花が咲いていて、植物識別アプリ「Picture This」で調べると、こちらは「ユチャ(油茶)と表示された。
「ユチャ」は中国原産のツバキ科の常緑低木で、別名を「アブラツバキ」というそうだ。

葉で見分ける方法もあるようで、かつては葉が大きいのがツバキで小さいのはサザンカと言われていたが、どうもこれも確かではないようで、葉を見て区別できるようになればもはや達人の域と書いてあるサイトも見た。
葉脈を透かして見たときの色で識別する方法もあるらしいが、私も何度も葉っぱをひっくり返しながら両者の葉を観察してみたが、やっぱり見分けがつかない。

唯一、私のような素人でもはっきり違いが分かったのは、花の散り方である。
サザンカは花びらが一枚ずつ落ちるのに対し、ツバキは花が一輪単位でポトリと落ちる。
今の時期、花びらが散っているのは間違いなくサザンカだということができるのだ。
しかし、花が散るまでは見分けがつかないことに変わりはなく、やっぱりツバキとサザンカの識別は上級者コースだと言えるだろう。

さて、この白い花はどちら?

こちらの赤い花は?
全体としては井の頭公園にはツバキの方が多く植えられているようなので、ツバキと言った方が正解の可能性は高そうだ。
誰か専門家と一緒に、一度すべての紛らわしい木を判定してみたいものである。

このところ、井の頭公園ではチェーンソーを手にした作業員たちの姿をたくさん目にする。
下草を片っ端から刈っていて、冬支度を始めたようだ。

おかげでずいぶんスッキリしてしまい、雑草を見て回る楽しみがなくなってしまった。
雑草というのも観察してみると次第に愛着が湧いてくるもので、激しい生存競争を勝ち抜いてなんとか子孫を残そうとするその姿にはたくましさを感じる。

コナラやアラカシの木の下にはたくさんのドングリが落ちていて、その多くが人に踏まれて割れていた。
こうやって大量のドングリを落としても、生えてきた苗はすべて始末されてしまうのだろう。

伐採されたばかりの切り株も目立つ。
今年は「ナラ枯れ」の被害が井の頭公園でも目立ったため、切られる樹木も多かったに違いない。

「ナラ枯れ」した樹木の周囲には危険な「カエンダケ」が生えてくるとして早くから注意書きを公園内で見かけたので、私もぜひ「カエンダケ」を見つけてやろうとそれらしい場所を通る度に必死で探したのだが、とうとう見つけることができないまま秋が終わろうとしている。
今日は立冬、でもあと1ヶ月ぐらいは紅葉を楽しめるかもしれない。
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