冬の公園は散歩していてもさほど目を引く植物には出くわさない。
それでもキョロキョロと上下左右を眺めていると、去年は気にならなかった地味なものに目が止まることがある。
今回は、葉を落とした樹木に残る「異物」が少し気になった。
「ハンノキ」と「アキニレ」である。
「ハンノキ(榛の木)」

井の頭公園駅近くの児童公園で、私の目に止まった「異物」。
すっかり葉を落とした木の枝に、細長いものと丸いものがたくさんぶら下がっている。
見所の乏しい冬の公園ではかなり目立つ存在である。

その正体は、立派な「ハンノキ」だった。
「ハンノキ」は日本列島に広く自生し、湿地で育つその特性から水田の周辺に植えられた。
水に埋もれても育つため、水田の脇に並木状に植えて稲掛け(はざ架け)の梁に使ったことから「ハリノキ(梁の木)」と呼ばれ、それが転化してハンノキとなった。ハンノキの根にはエンジュなどマメ科の樹木同様に「放線菌(根粒菌)」と呼ばれる菌が共生しており、栄養の乏しい場所でも丈夫に育つ。荒地に真っ先に植えて土地を回復するのに使われるほどであり、川原の護岸用や砂防を目的に植えられる。
出典:庭木図鑑 植木ペディア

枝先にぶら下がる茶褐色の異物は、雄花。
「ハンノキ」の花は落葉後の11月ごろから冬にかけて咲くのだという。

そして、別の枝先にできる松ぼっくりのようなものが「ハンノキ」の実だ。
10月ごろに実が熟し、春に新芽が芽吹くまで長く枝先に残る。
とても地味な樹木であるが、材は加工しやすく良質な木炭の材料ともなり、窒素を豊富に含む落ち葉は肥料に使われるなど日本人の暮らしを支える重宝な植物だったという。
井の頭公園では今、井の頭池周辺でハンノキ再生プロジェクトが進行中だ。
花言葉は「不屈の心」。
「ハンノキ」 分類:カバノキ科ハンノキ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:11〜4月 実のなる時期:10月
井の頭公園の「ハンノキ」はここ!

「アキニレ(秋楡)」

「ゆうやけばし」を渡る時、木の枝にたくさんの白い花のようなものがついた樹木が目に止まった。
神田用水に植えられたこの樹木は何だろう?
植物識別アプリ「Picture This」で調べても、ちょっと距離が離れすぎていてうまく判別できない。

諦めかけてさらに歩いていると、見知った樹木に同じような白いヒラヒラがたくさんついているのを見つけた。
これは「アキニレ」だ。
秋に花が咲くことから通常のニレ(ハルニレ)と区別して「アキニレ」と呼ばれるが、この花が終わると乾いた楕円形の果実ができる。
この白いヒラヒラは、「アキニレ」の実なのだ。

「アキニレ」の実は、種子の周りに直径1cmほどの薄い膜質の翼があり、風に飛ばされる。
ただし、かなりの強風が吹かないと飛ばないため2月ごろまで枝に止まっているという。

紅葉が美しい「アキニレ」だが、葉が散った後の冬の白いヒラヒラも個人的には好きだ。
花言葉は「威厳」。
「アキニレ」 分類:ニレ科ニレ属 特徴:落葉広葉樹・高木 花が咲く時期:8〜9月 実のなる時期:10〜11月
井の頭公園の「アキニレ」はここ!
