今月の岡山帰省では、義父の葬儀やら伯母の相続やらでバタバタして、農作業について書く暇がなかった。
吉祥寺に戻り落ち着いたところで、今年の夏野菜の栽培について書き残しておきたい。

今年最も力を入れた夏野菜といえば、裏庭に植えたトマトとキュウリであろう。
去年はお墓近くの畑で育てたため、トマトが赤く色づく頃には虫たちに先に食われてしまいあまりうまくいかなかった。
今年はというと、7月13日までトマトやキュウリの脇芽を摘んだり株元の葉を取り除いたり世話をした後、3週間ほど岡山を離れ戻ってきたのは8月2日のことだった。
この間、岡山ではほとんど雨が降らず、猛暑日が続いていた。
恐る恐る裏庭を覗きに行くと、雑草が生い茂っているものの、真っ赤なトマトが鈴なりになっているのが見えた。

間近から観察すると、ミニトマトはまさに完熟、葉の様子もまだ元気そうだ。
トマトは水をやらない方が美味しくなると聞くが、やはり乾燥には強いらしい。

嬉しかったのは、去年は全滅だった大玉トマトが赤く熟していたことだ。
去年は虫だけでなく鳥や動物にもやられ1個も収穫できなかった。
やはり人間が暮らす集落の中がトマト栽培には向いているようだ。

こうして赤く色づいたトマトを収穫していくと、ボールがあっという間にいっぱいになった。
予想もしない大豊作。
あのまま岡山にずっといたら、少し赤くなった段階で収穫してしまい、ここまで赤く完熟することはなかっただろう。
トマト栽培では放置することも悪くないのかもしれない。

一方、キュウリの方はダメだった。
1週間以上放置していると収穫の時期を逃して「お化けキュウリ」になってしまう。
これは去年も経験済みなので予想した結果であった。

問題なのはキュウリの葉がボロボロになって、新しい花がひとつも無くなっていることだ。
枯れた葉も目立つが、まだ緑が残る葉にも丸く食べられた跡がある。
これはおそらくキュウリの天敵「ウリハムシ」の仕業だ。

キュウリの苗を植えた時から、ウリハムシがキュウリに集まっているのを確認していた。
水切れでキュウリが弱るに従って、ウリハムシの被害が広がってしまったのだろう。
弱ったキュウリを復活させる「つるおろし」という方法もあるようだが、今年のキュウリはこれにて終了ということになりそうだ。

同じく裏庭に植えていたナスもダメそうだ。
いくつかなっているナスの実はカサカサに乾燥してとても食べる気にならない。
キュウリ同様、ナスの葉もボロボロに食い荒らされていた。

そもそもキュウリやナスは実を大きくするために大量の水を必要とする作物。
雨も降らないのに水やりをしなければうまく育たないのも必然なんだろう。
来年からはもう少し早めに植え付けて、真夏になる前に収穫するのがいいのかもしれない。

ナスの隣に植えておいたピーマンは、小さな実をいくつかつけてはいるものの葉は垂れ下がり元気がない。
雑草に埋もれてしまう程度にしか育っていないのも気になるところだ。

ピーマンをしっかり観察すると、茎や葉にたくさんの虫が蠢いているのが確認できた。
害虫の正体を目撃できたのでネットで調べてみると、この虫の名は「ホオズキカメムシ」だとわかった。
主にピーマンなどナス科の害虫として知られ、集団で現れて茎や葉を吸汁するのだという。
私がいなかった3週間、心置きなくピーマンの汁を吸っていたのだろう。

一方、ピーマンとは対照的に元気だったのはシシトウである。
すでに収穫適期を過ぎて赤くなった実も目につくが、葉も害虫被害に遭っておらずたくさんの実を実らせている。
この調子なら、秋まで収穫することができるだろう。

こうして裏庭をひと回りしただけで、大量の収穫があった。
トマトはとても新鮮で店頭に並ぶトマトよりもずっと味が濃い。
一方のお化けキュウリも、見た目は悪いが食べると中はとても瑞々しくて、薄く刻んで塩揉みにすれば夏にさっぱりの浅漬けに変身する。

これらの食材を使って、妻が野菜炒めを作った。
少し硬くなったキュウリをミニトマトとシシトウと一緒に炒める。
シシトウは唐辛子のような辛さがあった。
調べてみると、シシトウも青唐辛子の一種であり、水不足だと辛くなるのだという。
でもこの辛いシシトウ、ピリッとした辛さが夏には食欲をそそり悪くない。

妻は料理以外に、お化けキュウリとしなびたナスを使ってお盆の飾りを作った。
正式には「精霊馬(しょうりょううま)」と呼ぶそうで、お盆に先祖の霊を迎えるためのお供え物だ。
迎える時にはキュウリを足の速い馬に例え、送る時にはゆっくり行ってもらうように足の遅い牛をナスで表すのだという。
子供の頃、たしかにこんなものを作っていたような気がするが、すっかり忘れてしまっていた。
食べられそうもない野菜にはこういう使い方もある。
妻のひらめきにちょっと感心した今年のお盆であった。