岡山帰省2日目、この日の大仕事はエアコンの取り付け工事だ。
世界的な半導体不足が原因でエアコンが品薄の状態が続いているらしいが、私は先月最寄りのヤマダ電機でエアコンを購入、今回の帰省に合わせて設置工事の予約をしていたのだ。

設置業者さんはちょうど正午ごろ3人でやってきた。
大型のワゴン車が2台、なんとかギリギリで敷地内に駐車することができた。
この日、岡山市の気温は今年最高となる31度まで上がり、日向に立っているとクラクラしてくるほどの暑さだ。

そんな中、年長の親方の指揮のもと手際よく作業が進められていく。
今回エアコンを取り付けるのは私たちが寝泊まりする和室。
エアコン嫌いの伯母は、私たちがプレゼントすると言ってもかなかなエアコンをつけさせてくれず、認知症が進み私がこの家に泊まり込むようになって初めて台所に1台つけることを認めてくれた。
昔の古民家は、夏場は比較的涼しく確かにエアコンがなくてもなんとか我慢ができるのだが、問題は冬、とにかく無茶苦茶寒いのだ。
薪ストーブの設置も検討しているが、まずは1台和室にエアコンをつけて様子を見ることになった。

今時の家ならば最初からエアコン用のコンセントや壁の穴が用意されているが、築100年の古民家ではそんなものはあるはずもない。
最大の問題は、エアコンのパイプを通すための穴を土壁に開けなければならないということだ。
下見の際にいろいろ相談し、和室上部の土壁に穴を開け一旦パイプを縁側に出し、縁側の壁に2番目の穴を開けて玄関脇の屋外にパイプを出す。
そこから玄関上の壁にパイプを這わせ、玄関の反対側にある壁に3番目の穴を開けてその裏側に設置する室外機につなぐというルートがベストだろうと判断した。
玄関脇に室外機を置けば開ける穴は2つですみ最短ルートなのだが、それだとお客さんに向かった温風を吹きかける形になるし邪魔で見栄えも悪い。
そこで室外機を隠すためにちょっと工事代を上乗せしてこのルートを選んだのだ。

ドリルで土壁に穴を開けていくのだが、壁がもろければ丸い穴が開かず周囲の壁が崩れる危険性もある。
今の若いスタッフだとこういう古民家での工事経験が少なく難しい作業なのだが、昨日来てくれた親方はベテランで昔こういう工事をたくさん経験しているという。
土壁に穴を開ける際にはとにかく慎重にドリルを操作しているのが素人目にもわかる。

そして親方がエアコンの設置をやっている間に、一緒にきた電気技師が配電盤の増設工事をおこなってくれる。
今の家は建てる時に壁の内側に電気ケーブルが設置され、各部屋にコンセントが取り付けられているものだが、古民家の場合、全て後付けなので伯母の家では部屋の電灯もコンセントも全部の配電盤から直接コードを引いて電気を引っ張っている。
そのため、通常の家庭用の配電盤はすでに一杯で、新たにエアコンの電気を引くには配電盤を増設する必要があったのだ。

こうして3人がかりで2時間半かけて、ようやく和室にエアコンが取り付けられた。
機種はパナソニックの「エオリア CS-J562D2」、18畳タイプのものだ。
職人さんたちの腕が良かったのだろう、予想したよりもはるかに自然に、以前からそこにあったようにエアコンが和室の壁についている。
試運転すると涼しい風が和室中に広がった。
これで真夏もなんとかなりそうだ。

縁側のパイプは少しグレーのカバーで隠して・・・

玄関前の壁は茶色のカバーでカムフラージュ。
少し斜めになっているのは、エアコンからの排水を室外機の方に流すためだ。

この場所はツバメたちが巣を作りたがっていた場所だ。
ツバメはまだこの場所を諦めていなかったらしく、玄関や縁側の扉を開けっぱなしにして工事をしていると、ツバメたちが我々を威嚇するように2度ほど家に入ってきて部屋の中を飛び回った挙句、「邪魔をするな」とでも言っているように飛び去っていった。
ひょっとすると、エアコンのパイプが設置されたことでツバメたちにとっては一段と巣作りがしやすい場所になったかもしれない。

そして、室外機は人目につかないデッドスペースにピッタリと収まった。
ここからなら排水もそのまま庭に流しておけばいい。
我ながらベストな設置場所を思いついたものだ。
そして何より最高の工事がそのプランを実現してくれた。

今年の夏は三男夫婦が7月に、中学生の孫が8月に遊びに来ることになっている。
今の若者たちはエアコンが当たり前なので、これで少しは快適に古民家暮らしを体験できるだろう。
エアコン嫌いな伯母もこうして多くの親族がこの家を利用してくれるのをきっと喜んでくれるはずだ。
こうして少しずつ、わたしたちの二拠点生活も環境が整いつつある。
これで薪ストーブの購入は当面お預けになってしまいそうだ。