今月4日、岡山に帰省してすぐに畑に行くと、伸びた雑草の中に咲く白い花が目に止まった。

スラリと伸びた茎の上に遠慮がちに咲いた白い花。
一つ一つは目立たないのだが、数十本が群生している姿はとても私の心に響いた。
この花、何だろう?
とても私好みだ、と感じた。

久しぶりに植物識別アプリ「Picture This」を開いて、花の名をチェックすると「ニラ」と表示された。
なるほど確かに細い葉はニラである。
ニラといえばレバニラ炒めなどでお馴染みのちょっとマイナーな野菜だが、ニラがこんな美しい花を咲かせるとは全く知らなかった。

歩くのに邪魔な場所に生えていた花を10本ほど切って家に持ち帰り、仏壇に供えた。
妻に見せると「きれいね」と言ったが、これがニラだとはわからなかった。
春に咲く観賞用の「ハナニラ」とは全く違う花だ。

ニラの花は枯れることなく、白い花も次第に開いていった。
私が最初に見たニラの花はまだ蕾だったらしく、実は白い小さな花がたくさん集まった集合体だったのだ。
1週間以上経ってもまだ元気だったが、葉が萎れてきたので、妻が短く切り戻して背の低い花瓶に活け直すと、今も仏壇の中でしっかり咲き続けている。

こうして今月のマイブームとなったニラの花。
集落を歩いていると至る所にこのニラの白い花が咲いていることに気づくようになった。
畑に整然と植えられたものもあれば、道端の割れ目に自生しているものもある。
かなり生命力の強い植物らしく、人間様が育てていたニラが勝手に子孫を増やし自生し始めているようだ。

伯母のブドウ畑の中にもニラの花が咲いていた。
果たして伯母が植えたものか、それともどこからか種が飛んできて勝手に育ったのかはわからない。

こんな場所で咲いていても仕方がない。
そう思って、ブドウ棚の下にひっそりと咲いているニラを根こそぎ掘り起こして家の庭に移植することになった。
シャベルを根元に打ち込み、梃子の原理を使ってニラを土ごと持ち上げる。

移植先は、ドクダミに占領されてしまっていた庭の入り口あたり。
妻が指定する場所にブドウ畑から掘り起こしてきたニラを植えていく。
うまく根づいてくれれば、毎年花とともにニラの収穫も楽しめるだろう。

世間の人たちはニラの花などに見向きもしないのかもしれないが、私にとってはニラは9月を代表する大好きな花となってしまった。
蓼食う虫も好き好きである。
真っ赤なバラより白いニラの方が好きな私のような人は、世の中にどのくらいいるのだろうか?